管理職のピンチこそ部下の成長チャンス　森本千賀子氏が語る「メンバーの心に火を灯す」マネジメント論 [1/2]

管理職にまつわるリアルな悩みの声

山田聖子氏（以下、山田）：ありがとうございます。（平岡）いづみさん、この間にチャットがめちゃくちゃ溜まりましたね（笑）。

司会者：めちゃくちゃ来てます（笑）。入っているチャットのお話をすると、2つ目と3つ目のテーマも入っている感じのお話かなと思うんですけど。「人に興味があるということが大事なんだな」とか「楽しそうな姿を見せるというところが、いいですよね」みたいな話もありました。

一方でちょっと「板挟み的になられているのかな？」っていうところ。「周りの管理職はメンバーを見ながら自分も成果を出さないといけないところがあって、非常につらい気がします」。あとは「多様性が進んだことで、組織をまとめることが難しくなっているように感じています」というところ。

森本千賀子氏（以下、森本）：雇用形態で言えば、正社員の方も派遣社員の方も、アルバイトの方も業務委託の方もいる。それぞれ、その雇用形態の選択をしている理由があって、そうなると働き方も違うし、評価の軸も違う。やはり、そういう人たちを1つの目標に向かわせなきゃいけないので、そういう意味では難易度はかなり上がってきていると思います。

いかに仕事を通じて成長実感を得るか

森本：ただ、そういう雇用形態を選択している背景だったりとか、その中で自分のやりがいをどうやって見つけていくかとか。もしかしたらご家庭の事情とかで、望んでそうしていないという方がいるということで言うと、その中でもやりがいだったりとか、成長感だったりとか（を探すことが大切です）。

その成長感がやりがいにもなって、モチベーションにもなると信じているし、現にそうだった。やはり成長感をどうやって感じさせてあげるかが、私はマネジメントをやる中で、とても大事にしていたことですね。

司会者：今のお話をお聞きしていると、メンバーを「育てなきゃ！」と思って動いていらっしゃっていないですよね。もりちさん的には、メンバーに興味を持って、やる気のスイッチを押して自ら走ってくれたら、もりちさん自身も楽しい・幸せみたいな感じに聞こえたんですけど。

森本：そうですね。（本人にとっての）やる気のスイッチが何なのか、みたいなものは、それぞれ違うじゃないですか。それをちゃんと理解した上で、やはり最終的には仕事なんですよ。仕事の成果で、成長感とか、やりがいとかって感じるので。その成果ややりがいのポイントが、それぞれ違うわけです。

それが何なのかというのを、ちゃんと理解してアサインメントする。その采配ですよね。チームの中ではいろいろな役割が必要なわけです。私は「A君にはコレ、Bさんにはコレ」っていう、ここの（役割分担の）部分を、意思を持ってやっていたかなと思います。

司会者：そこが今、テーマで出ているリーダーシップスキルというところになってくるんですかね？　その方の特性だとか、強みを見つけて、そこを活かすという。

森本：活かして、仕事のアサインメントをしていく。例えば私も営業部署のマネジメントをやったことがあったんですけど、お客さまにもいろいろな属性とかタイプがあるわけです。「A社は誰に担当させると、そのメンバーの成長や、やりがいにつながるのか」みたいなことも考えました。そこは適当にせず、本当にめちゃくちゃ考えましたね。

メンバーの心に火を灯す

山田：ありがとうございます。しれっと次のテーマにスライド、変えちゃったんですけど（笑）。本当に今お話いただいていた、人を育てるための成長実感みたいなお話が出たかなと思うんですけども。

あらためて「現代の労働市場におけるリーダーシップスキルの重要性」というテーマで、ここから少しおうかがいできたらなと。

今の人手不足とか、多様性とか、DXとか、時代の移り変わりが激しい中で、求められるリーダー像についておうかがいできたらうれしいなと思います。

森本：例えばAIとかデータリテラシーとか、戦略的思考とか、そういうものもとても重要だと思います。（ですが、）チームビルディングというか、チームには人がいるわけなので。チームにいる人の感情をいかに動かせるかのスキルがとても大事だなと思っているんですよね。メンバーの心に火を灯すという。

例えば弊社は15名ぐらいの組織なんですけど、ご多分に漏れずAIをガンガン使っているんです。使わない日はないぐらい、もうとにかく人じゃなくてもできることは徹底して（AIを使って）やろうと。

なんでそうしているかというと、実は弊社はワーキングマザーがほぼ8割なんです。みんなめちゃくちゃ忙しいんですよ。昼間には「（子どもが）今日も熱出したので、保育園に迎えに行きます」みたいなメンバーがいたりとか。夕方になると保育園に迎えに行かなきゃいけないとか、「今日、小学校が休みなので、夜は早く帰ります」とか。みんな本当に働ける時間がすごく制約されていて、短いんですよね。

なので、そういう意味でもAIをガンガン使うんです。もちろんそこの仕組み作りはとても大事なことなんですけども、さらに言えば、人を動かすのが大きいかなと思っています。

ケアする言葉を最初にかけられるか

森本：例えば、今日の午前中にも「保育園から呼び出されました！」って、早退したメンバーがいるんですよ。たぶん彼女は明日、ものすごく申し訳ない気持ちで仕事を始めると思うんですね。「昨日は突然帰っちゃってすみません！」みたいな。

朝にみんなで集まってミーティングをするんですけども。その時に、私から話を切り出して、「昨日どうだった？　大丈夫？」っていう一言が言えるかどうか、みたいなことだと思います。

山田：ありがとうございます。変化が激しくてデジタルな時代だからこそ「人の感情を動かす力が必要なんじゃないか」と、おっしゃっていただきました。人の心に訴えかけることを意図的にするわけじゃなくて、もりちさんの人間としての温かさが出ているなと感じています。ちょっと言い方が上からで失礼だなと思いながらも……。

森本：いえいえ！　でも、私自身もそうだったんですよね。2人の子育てをしながら仕事をしていく中で、保育園から呼び出されましたとか。そうすると、計画的に休むとかじゃなくて、その瞬間に仕事を放り投げなきゃいけないんです。これ以上、迷惑をかけることってないんですよ。

そうすると、翌日は超後ろめたい気持ちで出社するんですよね。その時に、「大丈夫？」って一言言ってくれたマネージャーがいました。それで本当に救われたんですよ。そういう意味では、「ここぞ！」という声掛けや対話みたいなことも含めて、その人に関心を持つということだと思います。