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リーダーシップのキャリア市場価値〜マネジメント経験をキャリア形成に活かす(全4記事)

管理職のピンチこそ部下の成長チャンス 森本千賀子氏が語る「メンバーの心に火を灯す」マネジメント論 [2/2]

ミスをしたメンバーにメモ書きを贈る

山田:ありがとうございます。人に関心を持つ、目の前の人をどれだけ大事にして向き合っていけるかって、やはり大事だなってあらためて感じます。

森本:例えばリクルートでは何百人という社員がいる中で、いろいろな巡り合わせでチームになったわけじゃないですか。もしかしたら半年かもしれないし1年かもしれないけど、「一緒のチームになって良かったな」って思ってもらいたいじゃないですか。

私はやはりそう思っていて、一緒にいたことが、その人の人生にとって「良かったな」「有意義だったな」って一瞬でも思ってもらいたいんですよね。

山田:めちゃくちゃすてきだなぁ。

森本:これはね、偶然なようで必然だと思っているんですよ。私はよく、「メンバーのマネジメントでどんなことをやってましたか?」って(聞かれます)。いろいろなことをやったことの中の1つに、例えば「メンバーが仕事を失注しました」とか、「ミスをしました」とか、「お客さんからクレームを受けました」とか。

そういうことってあるわけですよ。もちろん、サボってたとか、人為的なミスはちゃんと注意して「次はやめよう」って言うんですが、わざとやる人はいないんですよね。一生懸命にやっていく中でも、不可抗力で起こるわけです。

だからこそ悔しかったり、落ち込んだりするんですよね。そういう時には必ず、その時のシチュエーションとか、ミスが起こった背景とかを思いながら、「どういう言葉をかけてあげると次につながるかな」と考えて、一筆箋に書いて机の上に置いておくんですよ。

山田:おぉ!

Doing(やり方)ではなくBeing(あり方)

森本:そのことを、もう10年とか20年経って、ご飯を食べに行ったりすると「森本さんからもらった一筆箋です!」って見せてくれるわけですよ。私からすると、「そんなものを持ってたの!?」みたいな、もう本当にいろいろな人たちにやっているから、誰に何を渡したかというのは忘れちゃっていますよ。

でも彼らにとっては、私は1人の上司なんですよね。その時に言われた言葉が自分の中で、意味とか背景を考えさせられて、「失敗は自分にとっての学びや成長の機会だなと捉えられました」みたいに言ってくれるんですよね。

山田:ありがとうございます。いやぁ、もりちさんのお話をおうかがいしていて、性善説・性悪説じゃないですけど、もりちさんのリーダーとしてのあり方をベースに、人を信じる力というのもすごくあるんだなと感じていて。

森本:そうですね。

山田:弊社がメンタリングサービスを提供したり、管理職として必要な型をご提供させていただいたりするんですけども。基本的には人と人とのつながりとか、関わり方って、(テクニックとしての)やり方というよりは、やはりスタンスがどれだけ整っているかによるのかなと。

森本:そうですよね。私はよく「DoingじゃなくてBeing」と言っています。だから、マネジメントとしてメンバーに伝えるのは、やり方じゃなくてあり方ですかね。

部下のモチベーション低下には企業にも責任がある

山田:Beingがどれだけ整うかによって、管理職という会社の仕事だけじゃなくて、あり方、スタンスを持てると、やはりメンバーだけではなく家族や地域の人たちもそうだし、自分が生きていくフィールドで関わっていくすべての人たちと、より良く生きやすくなるよなって思いながら、メンタリングサービスをさせていただいているんです。

だから「もりちさんがそれをすごく体現して、リーダーシップを発揮されながら、今までやってこられているんだな」と思って。「いやぁ、うちでメンターをやっていただけないだろうか?」ぐらいに思いました(笑)。

森本:(笑)。でも、仮に「Aくんがまったく、やる気がないんだよ」とか「モチベーションがぜんぜん高くないんだよ」という方がいたとしたら、それは企業の責任だと思っているんですよ。もともと「まったくやる気がない」なんて人はいないと思っていて。やる気をなくしてしまっている企業の責任だと思っているんですね。

私は何かのきっかけとか働きかけとかによって、自信ややりがい、やる気を絶対に取り戻せるって信じているんです。私が再生部署のマネジメントを任されたのは、そういうことなんだろうなと思います。みんな本当に表情が変わっていくんですよ。「もう、仕事が楽しくてしょうがない!」って。私は「早く帰ったほうがいいよ」と、いつも言ってたんですけど。

だから、本当に「人って変われるな」と身をもって体感しているので、変わるきっかけを与えてあげるのがリーダーだと思っています。

管理職自身のモチベーションはどうする?

森本:私は「何のためにやるか」とかは実質的に伝えていましたけども、そのやり方は、「自分で考えて」ってよく言ってました。「山の登り方はいろいろあるから、それは自分が考えて」「多少失敗しても大丈夫。それは挽回してあげるから」みたいなかたちです。みんな最初は怖々とチャレンジするんですけど、どんどんチャレンジすることが当たり前になっていっていきましたね。

山田:ありがとうございます。もりちさんに最後、1つおうかがいしたいんですけど。

森本:はい。

山田:残念ながら今日は参加できなかった方もなんですけども。けっこう多くあった質問の1つが「管理職という仕事に魅力を感じているところもある」。だけれども、「やはり管理職自身も人間だから、モチベーションが低下するんだ」と。

森本:(笑)。

山田:「続かない」という(笑)。「モチベーションの低下に、どう向き合えばいいんだ!?」という、熱いコメントもありました。そのあたりを、もりち流モチベーション(維持のヒント)をお願いいたします(笑)。

森本:ありがとうございます。人間ですからね。仕事だけじゃなくて、プライベートも含めて試練とか逆境とか、いろいろなものを迎えながら、モチベーションの曲線が上がったり、下がったりすると思います。

先ほどの話じゃないですけど、私はやはり、本当にさらけ出すこと。全部さらけ出すと、周りがけっこう察知してくれて。「今、もりちさんが大変そうだ」ということで、より燃えてくれるんですよ。私、今も覚えているんですけど、育児で本当に大変だった時がありまして。

ピンチの中で、部下が成長してくれた

森本:長男が喘息になって入院しちゃって、私は病院に通いながら15人ぐらいのマネジメントをしていたんですね。もう本当に寝不足で大変だ、みたいなことを全部さらけ出したんですよ。

「ごめんね、実は私、今こんな環境で、こんなことを抱えてて……」みたいなことを言ったら、翌日、その15人のメンバーの中でもリーダー格タイプの2人が病院にやってきたんです。「もりちさんの仕事の、この部分と、この部分と、この部分を僕たちが代行します!」と言ってくれて。

マネージャー代行みたいなかたちで、その2人が15人を2つのチームに分けてくれて、彼らがリーダーとして立ってくれたんですよ。それまでは15人から、いろいろなものがズラーッと私のほうに寄せられてきたんですけども、(代行することによって)彼らからエスカレーションされたものを対応するかたちになりました。

それを彼らが自分たちで決めて、私のところに言ってきてくれたんですよね。「私がこういうシチュエーションになければ、そんなことにならなかった」と思ったら、逆に良かったなと思いました。結果的に、その2人はめちゃくちゃいいリーダーになりました。本当に愛されるリーダーになってくれたんです。だから、無理に自分を鼓舞するのではなくて、さらけ出せばいいかなと思います。

山田:ありがとうございます。

リーダーは大変だけれども、価値のある経験になる

森本:ただ、やはりふだんの信頼関係ができていないと(笑)。ベースがないと、なかなか今みたいなことは起こらないと思います。信頼関係作りというのは、その人をとことん知ることですね。部下から「もりちさん、僕、こんなことを友だちにも母親にも話したことがない」って、よく言われました。

山田:うーん! すごいです。

森本:本当に知りたいから、いろいろなことを根掘り葉掘り聞くんですけど。その代わり、順番としては自分のこともさらけ出さないと、さらけ出してくれないですね。

山田:ありがとうございます。ここまで、もりち流リーダーシップと、今日のテーマでもあるリーダーシップのキャリア市場価値のところで(お話していただきました)。

森本:最後、みなさんに言いたいのは、今は本当にリーダーが足りないんですよ! 今いるリーダーとか、マネジメントをやっている方の背中が、あまり楽しそうじゃなかったり、大変そうだったり、つらそうだったりして、「やりたくない」とか、「やっても、その価値がわからない」という方が多いみたいです。

逆に言うと、その(管理職の)経験を価値に変えることができるタイミングです。絶好の機会だなと思っていますので、その経験値は、しっかりバネになるということをお伝えできたらと思いました。

山田:もりちさん、ありがとうございます。

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