【3行要約】 ・優秀なプレイヤーが管理職になっても成功するとは限らず、専門性とマネジメントは「使う筋肉がまったく違う」という課題があります。
・キャリア支援のプロである森本千賀子氏は自身の経験から、部下の成長を支えるマネジメントには数字以上の喜びがあると語ります。
・同氏は自分の弱さもさらけ出し「おかげさま」の姿勢でチームを支えるリーダーシップのあり方を提言しています。
前回の記事はこちら 管理職経験よりも、専門性を高めるべきなのか?
司会者:またチャットが入っているので、ここでちょっと話をさせていただきます。「会社が管理職に抜擢するのが、優秀なプレイヤーです。管理職として優秀なわけではなく、ご本人たちも求められていることとのギャップを感じて混乱しています」。
補足として、「結果、優秀な人が管理職として評価されないため、管理職になるよりも専門性を高めたほうが評価されるんじゃないか、となっていそうです」というチャットが入っております。
森本千賀子氏(以下、森本):定義をどうするか、みたいなことかなと思っていて。個人的には、プレイヤーとして優秀な人と、リーダーとしてバリューが高い人は、使う筋肉がぜんぜん違うと思っています。
もちろんプレイヤーでありながらリーダーシップの力も発揮できるみたいな方もいらっしゃると思います。テニスもできるし水泳もできるみたいなことですね(笑)。
キャリアパスとして、専門職のバリューを上げていくようなコースを設けていらっしゃる方もいると思うんですけども、一方でマネジメントとしてしっかりバリューを上げていくコースも、両方あるんです。
個人的には「専門性を高めたほうがマーケットバリューを上げやすい」と思う方もいるかもしれませんけども、「そこにやりがいを感じているかどうか」みたいなことかもしれないです。
管理職のやりがいを見せることが大切
森本:やりがいを感じていらっしゃるのであればいいと思うんですけども、やはりチームビルディングをして、チームとして価値を発揮する。1人でやれることに限界がある時に、やはりチーム、組織で成果を最大化していく。事業や企業を成長させていくことにやりがいを見出す方っていると思っていて。
逆に言うと、今、マネジメントをやっている方がそういう景色を見せてあげなきゃいけないと思います。マネジメントをやるとか、リーダーになったらどんなすばらしい世界があるのか、どんなメリットや、やりがいがあるのかを後進の人たちに語っていかなきゃいけないと思います。
私はもともと、リクルートでマネージャーをやれって言われた時に「やりたくない」って言ったんです。「自分のセルフマネジメントをしていたほうが楽だ」「人の気持ちに寄り添うって、すごく大変そうで面倒くさいな」って思っていたんですよ。
「やりたくない」って言ったんですけども、リクルートの場合は「はい」か「イエス」しかないので(笑)。
司会者:(笑)。
仕事でこんなに泣けることってあるんだ
森本:なので、やるしかなかったんですよね。やってみたら、確かに大変なこともあるんですよ。(部下は)他人なので、さっき言ったみたいにモチベーションソースが違うわけです。価値観も育ってきた環境も違うので、自分だったらこう言ってもらったらうれしいとか、ありがたいとか、がんばれるってあると思うんですけど、そうじゃないので。
だから本当に徹底的に寄り添わなきゃいけないんですけど、その結果、部下がモチベーションソースを見つけてくれて、自走してくれて、最終的にMVPとして選出されて(会社の表彰式の)壇上に上がったんですよ。そこで「もりちさんのおかげです」みたいなことを言ってくれたんです。
自分がトッププレイヤーとして壇上に上がって賞状やトロフィーをもらったとしてもうれしいんですけど、もうね、それ以上にうれしかったんですよ。
何でしょうね、我が子がピアノの発表会で演奏しているようなもので、「こんなに成長してくれた」っていうことと、私が寄り添ったことに対して感謝をしてくれたのがこんなにうれしいんだと思って、涙をボロボロ流してしまって。
自分が仕事で成果を上げて壇上に上がった時は、そんなに涙は出なかったんですけど、それ以上に泣けてきて、「あっ、仕事でこんなに泣けることってあるんだ」「私、この仕事めっちゃ向いているわ」って本当に思ったんですよ。