【3行要約】 ・「管理職の罰ゲーム化」の風潮がある中、複数人でマネジメントを分担する「マネジメントシェアリング」が注目されています。
・ドイツのボッシュ社など欧州企業では約10年前から導入が進み、「結果ベースの評価」や「在宅勤務の推進」などの取り組みで成功を収めています。
・研究チームは、日本企業が導入する際は雇用形態の違いを理解した上で段階的に進めることが必要だと提言します。
前回の記事はこちら マネジメントシェアリングを行う時のポイントとは?
北村祐三氏:それでは最後になりますけども、チームCからの提言です。「マネジメントシェアリング導入ポイントの探求」ということで、チーム名は「I Show You」ですね。秋山さん、網さん、飯田さん、渡邊さんの4名の方からの発表になります。では、よろしくお願いします。
話者7:そうしましたら、チームC代表で秋山から発表させていただきます。「マネジメントシェアリングを行う時のポイントって何なんだろう?」ということで、(自分の会社でマネジメントシェアリングを)実装したいなという私の思いがあったので(笑)、このテーマで取り組みました。
中身ですが、研究の方向性、それと今現在やっていることというか、みんなで調べたこと。そして今後の方向性をお話しさせていただきます。
まず、研究の方向性です。先ほど話が出ていますが、(スライドの)上にも書いてあるとおり、ドイツやヨーロッパでは、もう先進的にマネジメントシェアリングが行われています。重光さんからも話がありましたけど、「校長先生が2人いる」といったことがヨーロッパでは当たり前になっています。
「やはり今、もうすでに日本は人手不足の時代になっているから、マネジメントシェアリングをやっていかなきゃならないよね。でもそれを入れるには、理想的なマネジメントシェアリングのモデルを作っていかなきゃならないよね」ということを話し合いました。
自社を対象に検証
話者7:そこで(スライドの)真ん中の太字にありますが、「会社側はどういうことに気をつけたらいいんだろう?」とか「従業員側はどういうポイントがあるんだろう?」みたいなことをメンバーで話し合いました。私の会社にマネジメントシェアリングを入れたいという思いがありましたので、チェック項目を出して、それを使って私の会社でチェックしたという流れになっています。
一番下の青字にありますけれども、「マネジメントシェアリングって、相性がいい組織、あるいはパートナーがあるよね」みたいな話になりました。
では次に、途中経過の報告をさせていただきます。私が所属する会社は物流系で、人材開発や組織開発の部門に私は属しておりまして、全部で総勢12名いるんですね。左下の表にありますけども、私が総括ということで部長をしております。
(スライドの)黄色いところをご覧いただくと、実は課長がいないんです。私はもう、あと片手で数えるぐらいで会社を離れなければいけない年齢になっています。
この後どうしようかと考えた時に、実は右下に赤い字で2人の部下を記載しました。この2人のうち1人は、短時間勤務でお子さんが1人いらっしゃる女性。そしてもう1人は一般職。2人とも今は係長という立場にあります。「この2人にマネジメントをシェアしてもらったら、この後も組織がしっかり回るよね。ここでトライしたいな」と考えました。
ドイツ・ボッシュ社の事例に学ぶ導入の準備
話者7:冒頭でも話がありましたけれども、ドイツは(マネジメントシェアリングの導入が)すごく進んでいます。ジェイフィールさんの講演の中で、田中洋子先生にもお話しいただきましたけども、ドイツは国自体がそういうことを非常に進めている。
実は今から10年ほど前に、ボッシュというドイツの会社が、タンデム方式を入れていると。いわゆるツイン型ですよね。
タンデム方式を入れるに当たってどんなことをやってきたかが田中先生の論文にありまして、「そもそも会社にいることで評価するんじゃなくて、結果で評価するよ」みたいなことが真ん中の①に書かれています。
そのために、管理職に「できるだけ在宅しなさい」とか「出勤することに価値はないんだよ」と伝えることをずっとやられて、3年かけてマネジメントシェアリングを入れている。これは非常に参考になるなと、その情報を得て思いました。
また、先ほどお話がありましたように、BMWでは私と同じ人材開発の担当者である2人の女性が、短時間勤務でマネジメントシェアリングしているんですね。ぜひ、みなさんもBMWのホームページをご覧いただきたいと思います。
日本は雇用形態によって業務内容が大きく異なる
話者7:当然、海外の制度をそのまま入れられるかというと、文化も何もかも違うよねということで、(スライドの)下に3点ほど書いています。赤が日本で青がドイツです。やはり日本だとパートさんと社員ってぜんぜん労働条件が違う。ところがドイツでは一緒だと。
日本では簡単な業務しかさせませんが、海外では外交官がマネジメントシェアリングをしているとか。先ほどの、校長先生を2人で担当することが認められている。ですので、「(マネジメントシェアリングをするとしても)日本ではやはり簡単な仕事しか任せない。ドイツは何でもいける」みたいな大きな違いが前提としてあります。

「じゃあ、実際に私の会社では、私の仕事、部長の仕事、マネジメントの仕事ってどうなんだろう?」っていうことで役割をリストに書き出すと、多岐にわたるわけですね。
冒頭、重光さんからもお話がありましたけども、(マネジメントシェアリングには)タンデム方式、いわゆるツイン型と、アイランド型がありました。今回、私はタンデム方式を入れたいと思ったんです。その理由は、2人いれば何かあっても仕事が止まらないからです。
一方でアイランド型だと、やはりその人がお休みしちゃうと仕事が止まりますので、導入するに当たって経営層になかなか理解を得られないだろうなと思いました。なので「これはタンデム方式を行いたいな」と考えました。
実施前にチェックポイントを作って確認
話者7:みんなでチェックポイントを作って、それを当てはめて、いろいろと調べていきたいと思いました。チェックポイントは、会社側と従業員側の2つを作りました。会社側のほとんどの項目にチェックが入っているのは「意外といけるじゃん」という意味ですね。
今度、部下側は直接その2人にお話を聞きました。そうするとちょっといろんなことが出てくる。
例えば真ん中の①にありますけども、「うまくいかないとシェアリング解消になるけど、その後の人間関係はどうなるの?」とかですね。あと、今は当然、違う担当をしているわけですから、「レベル合わせでマネジメントを学ぶ期間は賞与や評価はやめてほしい」とかですね。
あと、先ほどお話ししたとおり、今は一方が短時間で、一方はフルなんですね。「同じ成果を出すのに、賃金が違うのってどうなの?」とか、あるいは「『他の人がフルで1人でやっている仕事を2人でやるのはずるくない?』と変に思われるんじゃないか?」とか、そんな疑問が挙がりました。

次のシートを見ていただくと、(挙がった疑問点に対して)もうチェックがほとんど入らないんですね。これはもうやってみないとちょっとわからないよねということで、実際に少しずつでもトライをしてみようということになりました。そこでうちの会社で実際にやれることからやっていこうとなりました。
高知県の事例に見る意識の変化
話者7:今後の方向性ということで、(私の会社でも長時間労働を減らすために)少しやっていることがありますが、世の中を見ると、この発表会の本当に直前の9月10日に、(セミナーで映したスライドの)左側の記事ですけども、高知県が残業の超勤単価を5割増しにしている。一番上に書いてあるように、日本は残業の超勤単価は基本的には2割5分増しですよね。
この記事にもあったと思うんですが、現在の均衡割増賃金率は40パーセントちょっとですが、割増賃金率がそれを超えたら、もう人を採用したほうがいいと。要は、「仕事をシェアしながら、しかも人手不足に対応しようね」みたいなことに高知県がトライを始めています。
写真にあるとおり、ワーク・ライフバランス社の小室(淑恵)社長も写っていますが、県を挙げて、企業がやる前にやっていく動きをしているんですね。
(スライドの)右の6月の記事にもありますけども、高知県は現状、男女間の家事に関する時間の幅がすごく短縮している。「男性も女性も同じようにやっているよ」みたいなことで、高知県ってすごく進んでいるんですね。ですので、これはぜひ1回インタビューに行きたいなと思っています。