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「管理職の罰ゲーム化」からの脱却 ~マネジメントを“分かち合う”新常識~(全5記事)

管理職を疲弊させる“マネージャーはスーパーマン”幻想 マネージャーが助け合える組織に必要な要素 [2/2]

共通の目標を持つことが重要

話者6:日本企業のインタビューが多かったので、この研究会でご紹介いただいたドイツの事例をおうかがいして、あらためてこういった観点での評価を比較してみました。

社会文化的な観点や教育制度を含めて成り立ちが違うので、ドイツでのマネジメントシェアリングやタイムシェアリングというやり方が、イコール、日本ですぐにうまく受け入れられて機能するとは思いません。けれども、企業文化や生い立ちの違いがある中で、「日本で浸透するにはどうしたらいいか?」という観点で検討しました。それが次です。

再びリクルートさんからの参照です。あらためて現状の業務負荷や先ほどのインタビュー内容を鑑みて、(スライドの)右側の事業を推進していく役割と、人に関わる中長期も含めた人材育成のマネジメントを両方うまく機能させることに長けた人はなかなか少ないなという印象を持ちました。

それらを役割としてうまく分けながら、業績という共通の目標を達成していくかたちで業務負荷の軽減と同時に内容のレベルアップを図っていく。そんな仕組みをマネジメントシェアリングとして取り入れていくことが、日本式という観点では一番近道なんじゃないかと考えています。

マネジメントを「ヒトとコト」にわけて考える

話者6:それを先ほどの4象限に当てはめて考えてみました。まず(スライドの)左側を見ていただきたいです。現状は下段のPDCAのマネジメントができる方が、いわゆるマネージャーとして抜擢されて、メンバーマネジメントという要素にも取り組んでいくかたちになっていきます。ただ、もうそこで高負荷になっていくので、上段の経営視点にはなかなか意識が向いていかないと。

もちろん時間をかけていけばすべてがバランス良くできる方や、すぐにできちゃう方もいらっしゃるかもしれませんが、そのような方ばかりではありません。

なので、右側の観点で、先ほどのように「ヒトマネ」「コトマネ」の2種類をあえてわけます。そうすることで、もう少し人のマネジメントに関してもビジョンというレベルまで経営視点に目を向けたり、事業運営という観点でも戦略マネジメントに目を向けたり(することができます)。

自分は「ヒトマネ」が若干不得意だなという方は、「ヒトマネ」に助けてもらって、戦略マネジメントを伸ばしていきます。逆も同じですね。

そういうかたちで、すべて自分でできなくても助けを求められたり、補完関係を作ったりすることで、経営視点に早めに到達するという成長を描けないかと考えています。

マネージャーへの「スーパーマン幻想」がある

話者6:実際にこの仮説の概念を、社内なりいろんなところでぶつけてみました。それが、(スライドの)コメントです。実際、反対意見を含めていろいろありました。

一番上の方は、かなり上位のマネージャーなんですけども、これはもうスーパーマン前提ですね。「『ヒトマネ』もできて当然。事業マネジメントもできて当然。何を言っているのか。できないなら管理職を辞めればいいじゃないか」という感じで、取り付く島もない反応をいただきました。

これを「スーパーマン幻想」と我々のチームの中で呼んでいるんですけど、そういった期待値を持っていらっしゃる方も強くいらっしゃるなというところです。

一方、2段目は、まさに「マネージャーがスーパーマンであれば」という期待と、実際の現場が乖離してきている(ことを示すコメントです)。もちろん育児や看護、ご本人以外も含めたお休みに入ることもケースとしてはどんどん増えています。

昔は、「管理職は休まないものだ」みたいな発想もあったと思いますが、それは違うだろうということで、どんどん変わってきている。(ある管理職が休職する時は、)その管理職のさらに上位の方が兼務でカバーしていくというのが、今やられていることかなと。

そもそもマネジメントシェアリングという考えの中で、先ほどの「ヒトマネ」「コトマネ」という(役割を)シェアする概念があれば、「ヒトマネ」が(業務管理などが)不得意であっても(「コトマネ」が)カバーすることができます。

逆に「ヒトマネ」が「コトマネ」をカバーすることもできます。そういったことも含めて、こういった休職という事態発生にも十分準備ができるんです。

マネジメントシェアリングによってメンバーを活かす事例

話者6:けれども、今はそれが「完全無欠の管理職」という前提で回っているので、さらに完全無欠なその上司が兼務するという解決しか取れません。こういうのは非常に事業として問題じゃないかという事例です。

3つ目は(先ほどまでの2つと)まったく違います。権限委譲が進んでいて、特定の人がマネージャーというよりも、各メンバーでマネジメントシェアしているという、さらに進んだ“マネジメントフル”な組織に異動された方のご意見でした。

これはこれで、「決裁や最終決断をどうしていくんだ?」みたいなところが非常に難しい組織ではあると思います。けれどもそれをしっかりして、各メンバーの権限委譲とともに能力を発揮してパフォーマンスが上がっている例としてご紹介させていただきました。

最後は、今までの話を総括するような話になります。「マネージャー自身が完璧であらねばならぬ。いろんな(業務が)増えてくるという“マネージャーの罰ゲーム化”もすべて克服していけるものだ」という幻想から抜け出していくべきであるというコメントです。オーセンティックという言い方もできますが、できないことや不得意なことを自己開示して弱みを見せられる(組織であることが大切です)。

先ほどの管理職の休職という問題事例などからスタートして、「弱みを認めて、強みを掛け合わせられること自体が組織のパフォーマンスをより高める方策なんだ。このスタートラインに立つことが重要じゃないか」。そういった問題提起や実践事例もありました。

完璧な管理職に頼るより、メンバーの能力を掛け合わせる

話者6:最後にちょっと4つ書いています。(スライドの)一番上のところを最後に言いたいです。そもそもマネジメントシェアリングを制度化するとなると、ある程度上位マネジメントの方々に「いいね」と共感していただく必要があるなと思っています。

けれども上位マネジメントは、先ほどのように「スーパーマンのような完全無欠の管理職であるべし。またはそうなりたい。自分もできていなきゃいけない」と思っている方がやはり多いんじゃないかなと思っています。

マネージャーの方々は非常にがんばっていらっしゃっており、しかもそれを当然と思っている方々です。なので、(膨大で広範なマネージャー業務をこなすことを)「できるよ。できなければマネージャーじゃない」と、ある意味で簡単におっしゃいます。なので、自分の弱みを誰かに補完してもらったり権限委譲したりするという施策に共感が得られにくいです。

人にはよると思いますが、マネジメントシェアリングに関する共感性自体は、上位に行けば行くほど低くなっていくようにも感じられています。

これはややもするとマネージャー自身の能力不足や否定、つまり「今、マネージャーがマネージャーの役割を本当は満たせていないよ」と言うようなものです。なので、マネジメントシェアリングという考えを認めることに対しては非常にハードルがあるんじゃないかなと感じています。

それで、いろいろ制度や観点をそろえる前に、ここの部分のスタートラインとして、(マネジメントシェアリングという考えに対する)共感性をボトムアップでどうやって高めていくかは、こういった研究会の(研究結果を)世の中へどう出すかも含めて非常に重要かなと思っています。

マネジメントに対して、完全無欠ではなく掛け合わせで強みを作っていくという研究活動をこれからも継続したいと思っています。なので「どのように広めていこう?」という(問題意識を持って)チームAの活動をまとめました。以上となります。

北村:チームAのみなさん、ありがとうございました。4象限に切り分けて、おもしろい提言でしたね。

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