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職場を上手にモチベートする科学的方法~無理なくやる気を引き出せる26のスキル~(全8記事)

チームの幸福度を底上げする科学的アプローチ 移動ゼロでできる“緑の介入”

【3行要約】
・チームのウェルビーイング向上が重要視される中、従来の「気合い」だけでは長期的な成果に限界があることが指摘されています。
・グロービス経営大学院の教員たちが、26のスキルを通じてチームの幸福度を科学的に高める方法を議論。
・自然との触れ合いや価値観の再確認など、エビデンスに基づいた手法を日常業務に取り入れることが求められます。

前回の記事はこちら

自然×1on1の効用

太田昂志氏(以下、太田):今回、この書籍では26のスキルということで、26個、みなさんのお役立ちできそうなヒントをお伝えしています。26個もある中で、たぶんそれぞれお気に入りの方法があったんじゃないかなと思います。

若杉さんから1つ上げていただいて。そのあと米良さんからも1つ上げていただくかたちで、それぞれ聞いていきたいと思います。では若杉さん、よろしければ。

若杉忠弘氏(以下、若杉):米良さんからでもいいですか(笑)?

太田:事前に予定していたわけではないので、お二人とも焦って「どれかな?」と考えていらっしゃる。

(会場笑)

太田:それぐらい、それぞれ本当にすばらしい方法だと思うのですが、では米良さん、思い浮かぶものはありますか?

米良克美氏(以下、米良):これはイギリスの研究をベースに持ってきた話なんですが。みなさんの中によく自然と触れ合っている方はいますか? 日本は、他の国と比べてかなり森林率が高い国だと言われています。だけど私たちは意外と触れていないじゃないですか。

1週間のうちに2時間以上、森林や自然と触れている方は幸福度が高いという研究が出ています。これをどうにかチームのウェルビーイングを上げることに活かせないかなと、私はずっと考えていたんです。でもいきなり「チームで森林浴に行こう!」と言うのはハードルが高いじゃないですか。

「いきなりリーダーが『森林浴に行こう!』って言いだしたぞ」みたいな。なんかざわつくじゃないですか。そんな中で、私もやってみたことがあるんです。今の時期はすごく暑いのでちょっとおすすめしませんが、春先の時期に「1on1しよう」という方がいたんです。「資料はありますか?」と言ったら「特にないです」と言ってくださったんですね。

そこで私は何をしたか。ここは麴町のグロービスのキャンパスなんですが、千鳥ヶ淵が近いんですよね。なので2人で千鳥ヶ淵まで歩いて行ったんです。そこで歩きながらミーティングをするということを経験しました。ものすごく良かったです。なんていうんですかね。向き合うとやはり対立軸ができちゃう中で、横に立って、同じ方向を向きながらお話をするというのが、ものすごく良かったんです。

「これいいな」と思って、ちょうど千鳥ヶ淵をまわってきて、市ヶ谷をまわってきて。1時間ぐらいでちょうど帰って来られるというのも良かったです。調べてみると、海外のエグゼクティブはウォーキングしながらミーティングをけっこうしているみたいです。

優れた経営者が知ってか知らずか、やっているというのは、すごく私にとっても学びになりましたし。使えるものは私たちも使っていきたいなと思いました。


森が遠くても大丈夫

太田:米良さんにちょっとおうかがいしたいんですけど。聞いている方々の中には、おそらくは森林が近い方もいれば、「いやいや待ってよ。うちはマンションと家しかなくて、木も森も近くにない」という方もいると思います。それって例えば公園の小さな自然とかでも、効果があるんですか? それとも高尾山ぐらいまで行かないと、効果がないものなのか。森とか木の量って、どんな感じに関わるんですか?



米良:これは、小さな緑でも大丈夫だと言われています。あともう1つおもしろかったのが、「2時間も森林に行くの?」って思うじゃないですか。それは、分割してもいいんです。例えば1週間の中で1日20分触れて、その次の日は5分触れて、その次の日は30分触れて、合計で2時間ぐらい自然と接するといいと書いてあったんです。

太田:じゃあ例えば毎朝駅に行く時に、ちょっと遠回りして近くの公園を通って行くというのを毎日15分とか、10分続けるだけでも効果がある?

米良:効果があるんじゃないですかね?

太田:あぁ、これはすごい発見ですね。2時間というと、遠くまで行かなきゃいけないというふうに思いますが。日頃のルーティーンに入れていけば、自然とその人は毎日ウェルビーイングになる、幸せになるというのは、とても新しい発見じゃないかなと感じました。

画面の緑で取り込む“身近な自然”

米良:緑の壁紙でも同じ効果が出るのかというのを、研究してみようかなと思っています。

若杉:効果はあるみたいですよ。

米良:そうなんですか!?

(会場笑)

若杉:はい。壁紙でも効果はあるみたいです。そういう研究もありますね。

米良:すみません、不勉強でした。

若杉:いやいや(笑)。そういうわけじゃないです。あとは部屋に草木を置いておく。

太田:おぉー。

若杉:今Microsoftもデフォルトで自然な風景が多いですよね。そのままにしておきましょう(笑)。


自分を取り戻す技術

太田:(笑)。そうすると、いわゆるデジタルデバイスに触れていても自然にウェルビーイングが増えると。もちろん効果の大小はあると思うんですが、しっかりと緑が見える環境を作っておくというのが、1つテクニックとしてありそうですね。じゃあそんな感じで、若杉さんもぜひ、26個のうち気に入った方法を教えてください。

若杉:けっこう迷っていたんですけれども。一番、僕自身が使うのは「価値観を思い出す」です。みなさんは大事にしている価値観ってありますか? 何を大事にしていますか? 僕は、コンパッションというのを探究しているので、コンパッションを思い出します。

これって、自分を取り戻すのにすごく有効なんです。この本の中にも「価値観を思い出す」というエクササイズが書いてあります。「価値観、いいよね」というのは当たり前のことですが、どれだけ効果があるかをみなさん知らないんですよね。

例えば、今「女性活躍」と言われていますが、チームを組んだ時、どうしても男性が多くなったりします。職場によっては、女性はマイノリティになりやすい。日本企業の、特にマネージャー職、管理職の方々はマイノリティになりやすいんですよ。

マイノリティって、寂しいんです。不安なんですよね。孤独なんですよね。そうすると、同じ実力なのに、同じようにパフォームが発揮できないんですよ。同じケイパビリティや能力があっても、そのマイノリティという感覚が、自分を萎縮させるんですよ。それでパフォームできないんです。もったいないですよね。単に心理的な問題なんですよ。だから、心理的な介入が必要なんです。

どうするか。自分が大事にしている価値観を思い出す。例えば家族だったらご両親とかを思い出してあげるということです。そうすると、自分を取り戻せるんですよ。

実際にMBAの学生に対して研究したものがあります。MBAも男性中心になりやすいんですね。女性が少ないんです。入学当初の学力が同じでも、1学期、2学期経つと男女で成績差が出るんですよ。でも、この価値観のエクササイズをやった人は、成績差がなくなるんです。(男性と)同じようにパフォームできます。

萎縮したり、不安になったりする機会ってけっこうあるんですよ。例えば今だと、AIです。AIで不安になる人は、けっこういます。というのは、自分の仕事がなくなるからです。萎縮しますよね。そういった時にも使えるわけです。それから多国籍のチームで働く時。いろんな国籍の人がいます。自分は言語もうまくしゃべれません。不安です。萎縮しますよね? 

実力があっても出せない時は価値観を思い出してあげる。5分、10分。そのエクササイズをやってあげることで、その不安が軽減し、いつもの自分がより出せるようになってくる。再現性があるので、ある意味テクノロジーなんですよね。こういう心理的なテクノロジーを、私たちはもっと知っておくべきだろうなと思います。

太田:ありがとうございます。このあたりもすごく科学的に裏打ちされた方法だと感じました。とてもいろんなかたちで効用があると思います。


「気合い」の短期成果と長期リスク

太田:そしたら、次はちょっと米良さんに聞いてみたいと思います。ちょっと生々しい話として、例えば、こんな上司がいますよね。

「気合いで十分だ!」「気合いだけで幸せになれる」とか、ちょっと体育会系的な上司がいる職場では「とは言っても、うまくいかないんじゃないんですか?」という、状況があると思うんです。「モチベーションなんて気合いで十分だ」「仕事なので気合いで十分だ」という上司が仮にいたとして、その方を一言で説得するとしたら、どんな言葉をかけてあげますか?

米良:難しいですね。気合いで乗り切るタイプって、いますからね。前提としてお話ししておくと、気合いを入れて仕事をすると、短期的には成果が出ちゃうんです。

ただ、それは長期的には続かないと言われています。何につながるかというと、バーンアウトにつながっちゃうんですよね。そうすると、やはり人がやはり辞めちゃったり、残念ながら体調を崩されちゃったりする。会社組織として、永続的に発展し続けるということを目指すのであれば、「気合いではなくて、仕組みとか科学的な介入とか、そういったところで対応したほうがいいんじゃないですかね?」という話はするかなと思いました。

その気合いだけの人に、それが伝わるかどうかというのは、もう少しうまく言い続けないといけないし、細かい介入を続けていくしかないんじゃないかなと思います。


否定せず認めて伝える

太田:でもこのあたりは、とても大事ですよね。その方は「気合いでなんとかやってきた」という経験があるからこそ、「気合いこそが幸せになる唯一の方法だ」と、少し刷り込まれているんでしょうね。だからこそ、それはきちんと認めてあげつつ、そこのリスクもちょっと伝えて、永続的にチームでウェルビーイングを高める方法を被せていってあげる。

米良:そうですね。まずはその人の経験を認めてあげることが重要かもしれませんね。「おっしゃるとおり、短期的な成果はやはり気合いで出るんですよね」といったん認めてあげた上で、そのエビデンスを伝えてあげる。その人のがんばりを否定するというよりは、1回迎え入れてあげてお伝えするというコミュニケーション。

これはちょっとテクニカルな話かもしれませんが、そういったところも重要かもしれませんね。

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