『科学的に正しいホメ方』出版記念セミナー:著者と学ぶポジティブ・フィードバックの技術(全4記事)
職場で効く“褒める×指摘”の最適バランスと実践ポイント “5対1の黄金比”とは? [2/2]
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質の高いホメ方とは?
黒住:では、ここからは質疑応答に移りたいと思います。伊達さん、よろしくお願いします。
たくさんご質問をいただいていますので、できる限りお答えしていければと思います。最初の質問は「相手からのホメるという強化子がなくなる、つまり無視されるようになると、行動は促進されなくなるのでしょうか。また、ホメることが外発的動機付けになってしまうことはないでしょうか」という内容です。専門的な表現も使われていますね。
伊達さん、いかがでしょうか。
伊達洋駆氏(以下、伊達):はい、まさに専門的なご質問だと思います。確かに、ホメられることが目的化してしまったり、「ホメられるために行動する」ような状態になると、行動が続かなくなったり、もともと持っていた「やりたい」という内発的な動機が弱まってしまうことがあります。これは心理学では「アンダーマイニング効果」として知られている現象です。
ただし、この効果が起きるかどうかは、ホメ方の“質”によって大きく左右されます。例えば能力そのものや結果だけを評価するようなホメ方、あるいは相手をコントロールする意図を感じさせるようなホメ方は、アンダーマイニング効果を引き起こしやすいとされています。
一方で、人間の基本的な心理的欲求を満たすようなホメ方をすれば、逆に内発的な動機を高めることができます。
例えば、「自分はできる」「成長している」といった有能感を高めるホメ方、自分の意志で行動しているという自律性を支えるホメ方、あるいは関係性を良くするようなホメ方です。
こうした“有能感・自律性・関係性”を満たすフィードバックを意識することで、ホメることが単なる外発的動機づけではなく、持続的に行動を促す力になると考えられます。
部下からの“改善点を指摘して”は信頼関係が築けたサイン
黒住:もう1つのご質問も併せて、私からも少し補足できればと思います。
「フィードバックで良いことしか言われないと物足りない。改善点もきちんと指摘してほしい」というご質問をいただきました。こちらも非常に重要な観点だと思います。
この点については、先ほどお話しした「ホメること自体が目的化してはいけない」という話にもつながります。私のパートでご紹介した「5対1の黄金比」の“1”の部分、つまり改善点を指摘することが実はとても大事なんですね。ホメることが多いほうが関係性は良くなりますが、ホメるだけではパフォーマンスが高まらないということも研究で指摘されています。
ですから、ポジティブ・フィードバック(ホメる)を増やしつつも、ネガティブ・フィードバック(改善点の指摘)をきちんと行うこと。この両方があるからこそ、相手が現状を理解し、次の行動につなげられるようになります。
つまり、ホメる割合を増やしながらも、指摘する“1”を欠かさないことが重要です。ホメることばかりが目的になってしまうと、相手も「結局、何を直せばいいのか」がわからなくなってしまいます。
伊達:そのとおりですね。そして、「改善点をしっかり指摘してほしい」という要望が相手から出てくる時点で、もう信頼関係が築けている証拠だと思います。
ネガティブ・フィードバックというのは、相手との関係性がないとうまく機能しません。ですから、相手のほうから「もっと指摘してほしい」と言ってもらえる状態であれば、安心して具体的な改善点を伝えると良いと思います。
むしろその段階では、すでに良好なコミュニケーションの土台ができていると考えていいでしょう。
部下への関心を“仕組み化”するための人事支援
黒住:もう1つ、「部下に関心を持てない管理職に対して、人事部門としてどのような働きかけが効果的でしょうか」というご質問もいただきました。かなり難しい視点かなと思いますが、こちらはいかがでしょうか。
伊達:そうですね。まず大前提として、誰にでも関心や好意を持てるわけではない、という人間の性質を理解することが重要だと思います。
例えば、部下が10人いたとして、全員に同じ熱量で関心を持ち続けることは難しい。上司も人間ですから、感情や相性の影響を受けるのは自然なことです。ただし、「部下一人ひとりの行動や成果を理解し、観察することはマネージャーの仕事の一部である」という認識を持つことは必要です。
人事としては、その意識を高めるための働きかけが重要になります。具体的には、部下の行動を観察し、記録する習慣を支援すること。観察のポイントや記録の仕方を学べる研修、あるいはそれをサポートするツールを提供するのも有効です。
このあたりは今回の書籍の中でも詳しく紹介していますが、「関心を持てない人にどう関心を持たせるか」ではなく、「関心を持つ行動を仕組み化する」という考え方が大事だと思います。ご質問ありがとうございました。 続きを読むには会員登録
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