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『科学的に正しいホメ方』出版記念セミナー:著者と学ぶポジティブ・フィードバックの技術(全4記事)

職場で使える“部下に響く褒め方” 取引的な関係を「パートナー」に変えるコツ

【3行要約】
・「ホメれば人は育つ」と言われる一方で、不自然なお世辞や逆効果を恐れ、多くのリーダーがホメることを躊躇している現状があります。
・心理学研究では、ポジティブ・フィードバックが内発的動機を高め、個人・人間関係・組織の3レベルで連鎖的な効果を生むことが実証されています。
・リーダーは科学的根拠に基づいたホメ方をマスターし、取引的関係をパートナーシップへと発展させる必要があります。

職場で使える“部下に響くホメ方”

伊達洋駆氏:今回の本と関連付けながら、「『ホメる』を科学する 人と組織の成長を加速させるポジティブ・フィードバックの可能性」という題で、20分ほどお話しします。

あらためてお伝えすると、ポジティブ・フィードバックの技術に関する『組織と人を動かす科学的に正しいホメ方 ポジティブ・フィードバックの技術』という本を9月に刊行しました。

背景として、例えば「部下の成長が伸び悩んでいる」「チームに一体感がなく雰囲気が悪い」といった悩みは、業種や規模を問わず多くの組織に見られます。解決策はいくつもありますが、その1つとして有望なのが、シンプルでありながら奥深いアプローチである「ホメる」というポジティブ・フィードバックだと考えています。

ただし、ホメることは簡単ではありません。「ホメれば人は育つ」と言われる一方で、「甘やかしになるのではないか」「ホメてみたが、ぜんぜん相手に響かない」といったケースも起こります。さらに「不自然にホメるとお世辞だと思われるのではないか」と考えてしまい、結局ホメる行為そのものができないこともあります。

あるいは、ホメ方によっては、相手にプレッシャーを与えてしまう場合もあります。ホメることで失敗への恐れを強めてしまう可能性もあるのです。だからこそ、ホメるという行為は一見誰にでもできそうに見えて、じつは難しいものです。個人の経験や勘だけに頼るのではなく、科学的な知見を活用しながら、より効果的で誠実なホメ方を実践していく必要があります。単純に見えて奥深いのが、このホメるという行為なのです。

そうした問題意識のもと、『科学的に正しいホメ方』では心理学、教育学、組織論などの研究知見をもとに、相手の成長や組織の活性化に有効なホメ方を体系的にまとめました。

職場でホメることの効果

私の講演パートでは、この本の特色や、そもそもホメるという行為の意義、そしてホメる際に押さえるべき2つの原則についてお話しします。

では、まずホメるという行為の科学的な意義、つまり根拠について説明します。ホメるという言葉は日常的に使われるものですが、専門的には「ポジティブ・フィードバック」と呼ばれます。この言葉自体も、職場などで耳にしたことがある方は多いかもしれません。

このポジティブ・フィードバックという言葉を少し掘り下げて考えてみましょう。まず「フィードバック」とは、相手の行動や結果に対して情報を提供することを指しますが、特に、目標達成に向けた軌道修正を支援するようなコミュニケーション全般を意味します。その中でもポジティブ・フィードバックとは、相手の良い点や成果をきちんと認めることで、望ましい行動を促したり強化したりする働きを持つものです。

このポジティブ・フィードバックについては、これまでさまざまな研究が行われ、その効果が繰り返し検証されてきました。

例えば、しっかりとポジティブ・フィードバックを行うことで、製造業では生産性が向上したり、小売業では接客サービスの質が改善したり、建設業では安全性が高まったりすることが報告されています。

このように業種や職種を問わず、ホメる=ポジティブ・フィードバックには多くの効果があることが、これまでの研究で明らかになっているのです。

ポジティブとネガティブのフィードバックの違い

では次に、ポジティブ・フィードバックの効果がなぜ生まれるのかという点についてお話しします。詳しくは本の中で述べていますが、ここでは1つ理由を紹介します。

それは、内発的動機付けが高まるからです。内発的動機付け、あるいは内発的モチベーションという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。金銭や評価といった外発的な動機付けとは異なり、活動そのものが楽しい、興味深い、達成感があると感じて続けたくなるような、自発的な意欲のことを指します。

ポジティブ・フィードバックは、この内発的動機付けを高めることができるとされています。そのため、成果や成長につながりやすくなるのです。

一方で、ネガティブ・フィードバック、つまり叱ることは内発的動機付けを低下させてしまいます。叱られて「よし、やる気が出た」と思う人はあまりいませんよね。多くの場合、叱責は「自分は能力がないのではないか」「自分のやり方が否定された」と感じるきっかけになります。その結果、仕事への関心や楽しさが失われてしまうのです。

叱られても前向きに仕事を楽しめる人はまれであり、多くの人にとってはネガティブ・フィードバックが内発的動機付けを下げる要因になってしまう、ということが研究からも示されています。

ホメられた人の脳は「お金をもらった時」と似た反応をする

それに対して、ホメるというポジティブ・フィードバックは、相手ができたことをきちんと認めることで「自分はうまくやれている」と感じさせ、有能感を高めます。さらに、自分のやり方が認められているという安心感から「自分で選んで進めている」という自律性の感覚も強まります。こうした有能感や自律性は、人が本来的に持つ基本的な心理的欲求にあたります。

これらの欲求が満たされることで、活動への意欲が自然に高まり、内発的動機付けが強化され、結果的にパフォーマンスの向上につながることが明らかになっています。

また、ポジティブ・フィードバックに関する研究の中でも興味深いのが、信頼できる人からホメ言葉を受け取ったときの脳の反応です。研究によると、脳内の「報酬系」と呼ばれる領域が活性化することがわかっています。報酬系とは、その名のとおり、喜びや「またこの行動をしたい」という意欲を促す領域です。

さらにおもしろいのは、この脳の反応が「お金をもらった時」と非常に似ているという点です。

つまり、お金を渡さなくても、誠実にホメることで脳の報酬系が刺激され、人の行動を動機付ける力が働くのです。

このように、ホメるという行為には、人の内面を動かす強い力があることが、科学的にもあきらかになっています。

ホメることで生まれるポジティブな連鎖反応

次に、ホメるという行為が具体的にどのような効果をもたらすのかを見ていきましょう。個人・人間関係・組織全体といった複数のレベルで、ポジティブな連鎖反応が起きることが、ホメるという行為の特徴です。詳しくは本の中で紹介していますが、ここでは一部だけ取り上げます。

まず個人レベルの効果についてです。ホメることはパフォーマンスを高めるだけでなく、心理的な充足感も高める特徴があります。

例えば、上司からホメられると、仕事に対する意欲が高まり、「もっと良い成果を出したい」という気持ちが生まれます。結果として仕事の水準が上がり、それが達成感や満足感につながり、さらに意欲が高まるという相乗効果が生まれます。これがホメることによるポジティブな循環です。

また、ホメられるというのは他者から評価されるということでもありますが、その評価の内容によっては、自分では気づいていなかった強みや可能性を発見するきっかけにもなります。

こういうところがあなたの良さですね」と指摘されることで、自分の中の新しい側面に気づき、自己認識が広がる。こうしたプロセスは自己理解や成長につながります。このように、ホメるという行為は個人の成長を促す力を持っているのです。

取引的な関係を「パートナー」に変えるには?

さらに、人間関係のレベルでもホメることには大きな効果があります。特に、信頼関係を築くうえで重要な役割を果たします。

心理学の分野では「LMX(Leader-Member Exchange)」という理論があります。これは上司と部下の関係性の質がどのように発展していくかを示したもので、関係性は大きく3つの段階に分けられるとされています。

最初の段階は、まだ親しくない取引的な関係で、上司が指示し、部下が実行するという関係です。次の段階では、お互いに情報を共有し、信頼が少しずつ芽生えていく「知人」のような関係になります。そして最終的に、お互いの強みを理解し合い、補完し合える「パートナー」としての関係に発展します。

こうした信頼関係を育む過程で、ポジティブ・フィードバックは非常に有効です。上司が部下の行動や成果をきちんと評価し、成長を促すことで、部下は上司を信頼するようになります。その結果、部下は「この人のもとでならもっと成長できる」と感じ、主体的に貢献しようという気持ちが生まれます。

信頼関係が深まると、さらに良い循環が起こります。部下が「もっと成長したい」「自分のやり方を改善したい」と考え、上司に対して自らフィードバックを求めるようになるのです。これを「フィードバック探索行動」と呼びます。

つまり、ポジティブ・フィードバックによって関係性が構築されると、今度は相手からもフィードバックを求められるようになり、そこでまた新たなフィードバックが生まれる。その結果、信頼関係がさらに深まり、行動変容が起こり、パフォーマンスの向上へとつながる。このような良い循環が、人間関係のレベルでのホメる効果なのです。

組織の風土や文化にも良い影響を与える

組織レベルでも、ホメることには明確な効果があります。ホメるという行為は個人や人間関係にとどまらず、組織全体へと連鎖し、波及効果を生み出します。例えば、組織の風土や文化にも良い影響を与えることがわかっています。

具体的には、職場でホメられる経験をすると、「自分はこの職場で受け入れられている」という感覚、いわゆる被受容感が高まります。逆に、けなされると「ここでは認められていないのでは」と感じてしまいますよね。ホメられることで「この組織の一員として貢献したい」という気持ち、つまり所属感が強まっていきます。

この所属感が高まると、今度は自分の職務の範囲を超えて組織全体に貢献しようとする行動が見られるようになります。これを「組織市民行動」と呼びます。つまり、ホメることによって一人ひとりのモチベーションが高まり、それが組織全体の活性化につながるのです。

さらに、ホメる文化が根づいて、日常的にお互いを認め合うような職場では、心理的安全性も高まります。「こんなことを言っても大丈夫かな」とためらうことなく、自由に意見やアイデアを出し合えるようになります。こうした環境では新しい発想が生まれやすくなり、結果として組織のイノベーションを促進します。

このように、ホメるという行為はいっけん小さなことのように見えますが、個人・人間関係・組織文化のすべてにおいて良い循環を生み出す。つまり、組織を強くする力を持っているということが、研究でも明らかになっています。

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