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自発的な貢献を"やらされ感"に変えないために:組織市民行動の副作用を科学する(全5記事)

「自分の業務以外は関与しない」メンバーとどう向き合う? チームの「不公平感」をなくすヒント

【3行要約】
・組織内で「貢献する人」と「しない人」の格差が生じ、不公平感が蓄積――これは多くの職場が直面する課題となっています。
・伊達洋駆氏は、役割内行動と役割外行動のバランスや公平性確保について実践的な示唆を提供します。
・マネージャーは組織市民行動を取る従業員への感謝・承認を徹底しすることが求められています。

前回の記事はこちら

「仕事満足度」と「エンゲージメント」の違い

伊達洋駆氏:ということで、いくつかご質問をいただいていますので、そちらに回答させていただきたいと思います。たくさん質問をいただいています。ありがとうございます。まず1つ目です。「仕事満足度とエンゲージメントは同様の意味でしょうか? ロイヤリティは別物のように感じています」ということですね。

まず、仕事満足度というのは、文字どおり仕事に対して、それから職場とかに対して満足している、つまり働く環境に対して満足しているということですね。

エンゲージメントと同じなのかということなんですが、違います。実務的に使われるエンゲージメントは大きく2種類あって、1つが組織との関係性が良いということですね。組織に対して愛着を持っている、いわゆるロイヤリティはこちらに近いです。実はエンゲージメントとロイヤリティは同じような意味合いで使われるケースがあります。

もう1種類のエンゲージメントは、仕事との関係性が良いというもので、これは仕事にやりがいを感じているというものです。仕事に対していきいきと活力を持って没頭して取り組むことができるというものです。どちらかというとちょっと仕事満足度と近い側面があるんですが、ただ概念的には区別されるというように、微妙にそれぞれが違っている概念になっています。

まず「与えられた役割」で結果を出す重要性

2つ目ですね。「興味深い内容(の講演を)、ありがとうございました。お話を聴きながら、一人ひとりが自分の役割、仕事を理解し、まずはやっていくことが大事なのではないかと思いました」ということで、ありがとうございます。

これは非常に大事な視点で、組織市民行動というのは役割外の行動なんですよ。つまり自分に与えられた役割以外のところで、組織にとって有益な行動を自発的に取るのが組織市民行動なんですが、役割内の行動もやはり大事なわけですよね。自分が周囲からどんな役割を期待されているかを把握して、その役割をきちんと遂行する。

これを「タスクパフォーマンス」と呼ぶんですが、役割内行動ですよね。いわゆるパフォーマンスというのは実は、そちら側を指すことが多いんですよ。そういうパフォーマンスをちゃんと高めた上で役割外行動をやっていくことは、考え方として非常に重要です。

「役割外の行動」をする人がいないと、組織は回っていかない

ただし、1個大事になってくるのが、組織市民行動がなぜ集団の成果につながっていくのかということなんです。これは、なんでだと思います? 組織市民行動は役割外の行動なんですけど、それらをきちんと取っている組織のほうが組織のパフォーマンスが高いことがわかっているんですが、よくよく考えてみると非常に不思議ですよね。

ちゃんと役割を設計すればいいじゃないかと思うんですが、ただそれがやはり難しいんですよね。役割を完全に設計しきることはなかなかできません。したがって役割外の行動は、どれだけ役割を定義しようが必然的に出てくる。その時に役割外の行動に対してみんながどんどん飛び込んでいかないと、組織として円滑に回っていかないわけですね。

飛び込む人が多いほど組織として円滑に回りやすくなってくるので、結果的に組織全体のパフォーマンスが高まりやすいという側面がある。役割をきちんと理解して、それを遂行するようにしていくことはもちろん大事なんですが。

ただそれをどんどん行っていったとしても、やはり役割外の行動をちゃんと取る人がいないと、組織全体としてはうまくいきにくいという部分があるので、そちらも意識していただけるといいんじゃないのかなと思いました。

「自分の業務以外は関与しない」メンバーへの対処法

他、いただいているご質問に回答していきます。「組織市民行動を積極的に行う従業員がいる一方で、自分の業務以外には関与しない従業員も存在します。その結果、貢献している側に不公平感が溜まり、全体のモチベーション低下につながることを心配しています」という感想をいただきました。

そうですね。こういうことももちろんあり得る状況かなと思います。組織市民行動の偏りのようなものが生じているということですね。

講演の中でも少し申し上げたんですが、その時にまず大事になるかなと私が思うのが、やはり貢献している、すなわち組織市民行動を取っている従業員に対して、とにかく感謝や承認を徹底していくということですよね。かつ、そうした人たちの貢献、努力が正当に報われるような環境をやはり作っていくことが先決ではないかなと思います。それがないと、そもそもなかなか報われないですよね。

ただ一方で、じゃあ、貢献しない従業員に対して、もう協力的ではないと即座に判断してしまうのも、少し急ぎ過ぎかなと思うんですね。

例えば非常に業務過多の状態に陥っているかもしれませんよね。あるいはエンゲージメントが低下しているのかもしれません。もしかすると何かしら背景があるかもしれないので、例えば個人面談であったり、仕事ぶりであったり、少し対話をしてみるとか。

いろんな方法を通じて背景を把握していくことが重要ではないかなと思います。背景がわかればより具体的な打ち手がわかって、かつ、効果的な打ち手がわかってきますよね。そのようにやってみるといいんじゃないのかなと思いました。

「役割外の貢献」に金銭的な報酬を与えたらどうなるか?

他、いただいている質問ですね。「金銭的な報酬を与えた場合はどうなると思いますか? 無償、少額の心付け、適正価格で反応は変わるような気もしています」という質問をいただきました。ありがとうございます。

まず、内発的な動機付けで組織市民行動は行われている、自発的に行われているものなので、金銭的な報酬と相性は良くありません。今度は内発的、つまり自発的に行われなくなっていく可能性があるので、逆に抑制してしまう恐れがあるんじゃないのかなというのが、まず1つの観点として、原則としてあります。

ただし、実は途中にも少しだけ触れたところを持ち出すとおもしろいんですが、組織市民行動が評価の基準の中に明確に含まれている会社もあれば、含まれていない会社もけっこうあるんですよ。

ところが、特に欧米のようなジョブ型ですと、役割のところに書かれていない行動が組織市民行動なので、基本的には書かれていないわけですよ。役割ではないわけです。ただし、評価の結果を見てみると、組織市民行動とかなり相関しているんですよね。これは、おもしろいですよね。役割に書かれていないのに、むしろ評価は組織市民行動とかなり高い相関をしていることが明らかになっています。

つまり上司は、役割内の行動を取ることも重要視しているんですけど、役割外の行動を取ることを重視しているんですよ。ということは、それが評価に反映されるので、ゆくゆくは金銭的な報酬に関わってくる、昇進・昇格等を通じて関わってくると思われるので、実はそこまで意識して金銭的な報酬を与えなくても、結果的にそこにつながっていき得るみたいなことが1つ言えるんじゃないのかなと思います。

ということで時間が来てしまいましたので、本日のセミナーは以上とさせていただきたいと思います。本日、組織市民行動を取り上げて、1時間にわたってセミナーを行わせていただきました。

また今回特徴的だったのは、プラスの側面だけではなくてネガティブな側面もあえて取り上げることによって、自発性の奥深さをぜひみなさんに知っていただき、その奥深さを踏まえた上で実践的な行動を取っていただくヒントを提供できればということで進めてきました。

本日私がお話しした内容の中で、1つでも使える知見が含まれているとうれしいです。それでは以上で、本日のセミナーを終了とさせていただきたいと思います。みなさん、ご視聴いただきありがとうございました。

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