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自発的な貢献を"やらされ感"に変えないために:組織市民行動の副作用を科学する(全5記事)

「仕事満足度が高い人」=「パフォーマンスが高い」とは限らない 管理職が知っておくべきチームで成果を出すポイント [1/2]

【3行要約】
・組織の成功には自発的な貢献行動が重要とされていますが、実は「真面目な人」が必ずしも貢献するわけではないという意外な事実があります。
・研究によると、性格特性よりも「仕事満足度」が組織市民行動(役割外の自発的な貢献)を促す主要因であることが判明しました。
・マネージャーは部下の満足度を高める職務設計と、公正な手続きによる信頼関係構築に注力すべきです。

前回の記事はこちら

自発的な貢献をする=「真面目な人」とは限らない

伊達洋駆氏:では、この組織市民行動がそこまで重要なのであれば、できればそれを促していきたいところです。どのように促していけばいいのかを探っていくために、組織市民行動の要因を見ていければと思います。

何が組織市民行動を促すのかと考えた時に、誠実な人柄とか協調性のある人といった、ある種の人の性格特性を要因として思い浮かべる人も少なくないのではないでしょうか。真面目な人ほど組織市民行動を取るんじゃないのかなとか、そういったことは思いつきますよね。

ところが、そうでもないんですよね。またメタ分析ということで、今までの多くの研究を統合した論文によると、性格特性よりももっと影響度の大きい要因があるということが明らかになっています。

それは一言で言うと、仕事満足度です。性格特性よりも日々の仕事に満足しているかどうか、職場や仕事に満足しているかどうかといった満足度。実は仕事満足度が組織市民行動を促す主たる要因であることが見えてきました。

すなわち、組織市民行動を取る人は、採用時に決まっているわけではありません。変わらない要因ではないんですよね。例えば入社後にやりがいや満足感を覚えて働くことができれば、入社後でも組織市民行動を高めていくことは可能なわけです。そのように満足度が高まるような環境をいかに整備するのかが、1つ重要になってくるのがわかります。

これはなぜなのかということなんですが、組織市民行動は、やろうと思えば取れる行動なんですよね。ところが役割外で自発的なので、なかなかみんな取らないわけなんですが、その意味では能力ではないんですよ。つまりそれを取ろうとする意志があるかどうかが非常に重要になってきます。

つまり、その人が職場で幸せに働けている、といった前向きな感情の状態が、性格特性以上に実際の組織市民行動に結びつきやすいと考えられています。能力よりも感情のほうが大事ということなんですね。

「仕事満足度が高い人ほどパフォーマンスが高い」とは限らない

この仕事満足度と組織市民行動の強い関係性は、実はちょっとおもしろい裏話というか学術的にはおもしろい部分があります。仕事に対する満足度は重要だと、みなさんは直感的には思いますよね。

実はこれは、経営学の1領域である組織行動論の1つの命題だったわけですね。仕事は満足してやれたほうがいい。そのほうが生産性(の向上)につながる、パフォーマンスにつながるんだといった仮説があったんです。

ただ、いろんな研究を行っていった時に、仕事に対して満足している人ほどパフォーマンスが高いとはあんまり言えなかったんですよね。いろんな研究を行ってきたんですが、そこまで強い関係がないことがわかりました。

ただ一方で、この仕事満足度は組織市民行動との間では強い関係があることが明らかになったわけです。すなわち、仕事に満足して働くことはパフォーマンスを直接刺激するというよりかは、役割外の自発的で有益な行動を促す、組織市民行動を促すことがわかったわけです。

こうなるとけっこうおもしろくて、職務満足はパフォーマンスを直接促さないんだとしたら意味がないと一瞬思ってしまうんですが、ただ仕事に満足すると組織市民行動が多く取られるようになる。その結果、集団単位でのパフォーマンスが高まるというふうに、より重要性が高い因果の連鎖が1つ見えてくるところなんですよね。

なぜ「仕事満足度」が高いと「自発的な貢献」が増えるのか?

なぜ仕事満足度と組織市民行動が関係しているのかというメカニズムについては、2つの理論で説明されています。1つが「社会的交換理論」と呼ばれるものです。

満足している従業員は、満足する環境を与えてくれた組織に対して、ある種の恩恵を感じているわけですね。その恩恵の恩返しの具体的な表れが貢献行動、すなわち組織市民行動になるということです。

「いい環境を与えてくれてありがとうございます。私からお返しをします」。そのお返しの行動が組織市民行動になるという、互恵性の原理。これを社会的交換理論と呼ぶんですが、そういった原理が働いているという説明が1つです。

もう1つの説明が「正の感情状態理論」というものなんですが、人間は満足感が高いとポジティブな気分になりますよね。ポジティブな気分だと、人は他者に対して親切な行動を自然に出すことがわかっていて、いい気分になっているので人を助けようと自然に思えるという理論的な説明がメカニズムとして行われています。

これらの要因を見ていくと、結局、組織市民行動を促していこうとすると、仕事満足度を高めていくことが重要であることがわかります。

ただ、この仕事満足度は、「満足せよ」と命令してもうまくいかないわけですよね。当たり前ですよね。仕事に取り組んでいる従業員とか部下に対して、「仕事に満足しろよ」と命令して、「はい、満足します」とは当然ながらいかないわけです。

この満足度を高めるためには仕事そのものの設計、ワークデザインを見直していくことが1つ有効です。具体的には「職務特性モデル」という考え方がかなり応用性が高いので、その職務特性モデルの考え方をもとにして、仕事満足度を高めるための働きかけについて考えてみたいと思います。仕事満足度を高めることができれば、自然と組織市民行動を高めることにつながっていくという、先程の連鎖を思い出していただければと思います。

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