【3行要約】・挑戦を促進する職場環境が求められているが、アイデアの否定や失敗への恐れが新たな取り組みを阻害しているのが現状です。
・不確実性の高い現代では「成果主義」にこだわるほど苦しくなり、挑戦の回数を増やすことが成功への鍵。
・管理職は部下のアイデアを建設的に受け止め、チーム全体で挑戦と失敗を共有できる心理的安全性の高い環境を構築すべきです。
前回の記事はこちら 仕事の失敗を防ぐには“職場コミュニケーション”が大事
宮木俊明氏(以下、宮木):だから、ふだんから周りとコミュニケーションを取りながら仕事をしていくことによって、個人による失敗はだいぶ防げるはずなんですよね。そういう意味で、失敗した時は周りがやるべきことをやっていなかった可能性とか、あとは仕組みとかルールを見直すことが重要です。
島津愛氏(以下、島津):今、そのとおりだなと本当に思いました。ずっと同じようなことを繰り返して、個人が責められているところから脱却できない会社はやはりあるなと思うんですよね。
私は中小企業さまをご支援することが多いので、人数的にも30人とか50人とか小さい規模だったりすると、30人のところに1つ壁がありますけど、人数が少なかったりするとなおさらそうですよね。失敗も成功も個人に起因してしまうところがあって、大企業でもチーム単位で見るとそういうところはあると思うんですけど。
それを個人のせいで終わりにせず、「この人がせっかくこういうふうにして、失敗なり、何かちょっと問題を明るみに出してくれたから、みんなで仕組み化しようよ」みたいな、チームの課題として捉えるのはすごく大事。リーダーの人が言わないと、(チームのメンバーが)そういう目線にならないですよね。
宮木:本当にそうなんです。だからもうあらゆる目標達成の敵は、孤独なんですよ。人1人に仕事を押し付けて、良い結果が出ないと。そんな時は、周りがどう支援するかというところへのチャレンジが足りていないんです。実はもともとその人に与えた仕事が向いていないみたいなこともあるでしょうし。
島津:そうですね。
宮木:だから、そこはみんなで補い合えるようにする。自分が苦手な仕事を引き受けた時にも、周りが助けてくれるはずなので(笑)。
人のアイデアを否定しない
島津:そうですよね。今の話はわりとミスだったり、ちょっとうまくいかなかったことをどう仕組み化していくか、次につなげるかみたいな話だと思うんですけど。逆に、「こうありたいよね」みたいな話とかで関係性の質を高めていくのも、挑戦力に転換していくという意味では大事だと思います。そのあたりはどうですか?
宮木:いや、やはり挑戦を後押ししてくれるのも周りの声なんですよね。「ちょっとこんなことをやってみたらおもしろいかな?」とか、アイデアがあるじゃないですか。でも誰かに言うまでは自分の中にしまっていて、それを自分の力だけでこっそり実現しようという人はたまにいますけど、難しいんですよね。
ポロッと言った時に、否定されたら「あっ、やっぱやめておこう」ってなりますよね。でも「あっ、それ、おもしろいじゃん」と言ってくれたら、「おもしろいのかもしれない」となる。
島津:「なんかいいかも」みたいなね(笑)。
宮木:で、「やってみよう」と。あわよくば、「じゃあ、今度こういう機会があるから一緒にやってみようぜ」みたいなことがお互いに言い合えるような関係になっていると、挑戦の回数は爆上がりしますよね。
島津:さっきおっしゃっていたみたいに、「実はこういう種を自分で持っているんだけど、言うと恥ずかしいし、否定されるかもしれないし。失敗したら嫌だから、こっそり自分でやろう」みたいに考えている時は、やはり関係性の質はその程度というか。それがまだ高まり切っていない状態なのかなとは思いますよね。
宮木:何か言った時に、「えっ? そのアイデアどうなの?」みたいに仮に思ったとしても、意図があって言っているわけだから、その意図を汲んで、「あっ、だったらこういう方向に持っていったら実現できるんじゃないか」みたいに建設的に考え合えるぐらいの余裕があると、挑戦に向かっていきやすい組織になるんだろうなと思います。
島津:そうですね。
成功確率を上げるには、挑戦回数を増やすこと
宮木:この挑戦が成功に結びつくかどうかは、本当にいろんな考え方がありますけども。簡単に言い切ってしまうと、もう打席を増やすしかないんですよね(笑)。新しい挑戦が成功するか失敗するかなんて、失敗する可能性のほうが高いわけで。だとするならば、いかに挑戦回数を増やしていくかです。
それは、1人でやるよりもみんなでいろんな挑戦をしたほうが回数を担保できるじゃないですか。チーム全体で見た時の挑戦の回数は圧倒的に変わってくるので。
島津:そうですね。ミッキーさんも新規事業開発とかだと、本当にうまくいかないことのほうが多いと思いますし。私もけっこう組織の改革とかに関わると、うまくいかないことのほうが圧倒的に多いわけなんですけど(笑)。
途中で、「もう無理です」と言って辞めちゃうとか、チームから外れていく方は、やはりそれに耐えられなくなるんですよね。うまくいかないことがたくさん続くことによって、きつくなるみたいな。
それはやはりチームでうまくいかないことの大変さを、みんなで共有したり支え合ったりできなかった結果なのかなとも思います。やはりそうやってうれしいことも大変なことも、みんなでシェアしていく。誰か1人のせいにしない。こういったことが、失敗にも耐えられるレジリエンスが強くなっていくということなのかなと思いましたね。
「成果目標」よりも「成長目標」を重視する人は、新規事業で成功しやすい
宮木:いや、本当にそうですね。だから新規事業なんかまさにですし、いろんな変革のプロジェクトでも新しい施策を打った時も、失敗する可能性のほうが高い。結果・成果を求める志向が強い人はそれに耐えられないんですよね。一方で、成長や変化に着目できる人は、それを楽しめるんですよね。
島津:なるほど。
宮木:これは実際に調査された事例があって、成果目標を立てる人よりも、成長目標を立てる人、それが好きな人、それが得意な人のほうが新規事業担当になった時の成功率はやはり高いんですよ。
島津:へぇ。でも、確かにわかる気がしますね。
宮木:挑戦的なチーム風土を根付かせようと思ったら、いかに成長に注目できるかなんですよね。だから「結果・成果は出なかったけど、そのプロセスでこういうスキルを学んだよね」とか、「次に活きるよね」ということをお互いに言い合えるような関係性をつくる。
挑戦に向けた関係の質から思考の質で言った時に、その思考をやはり結果・成果志向ではなくて、成長目標志向みたいに、少しポイントをずらすというか、「新しいチャレンジなんだから失敗するのは仕方ないよね」という。「だけど今回の挑戦にはこういう価値があったよね。だったら次はこの部分を活かしてやってみようね」ということを、時にはやはりリーダーが総括するみたいなことも重要かもしれないですね。
島津:そうですね。やはりリーダーの持っている価値観とか、そこから醸し出される雰囲気ですよね。私はけっこう成果志向が強いので、ちょっと耳が痛かったんですけど(笑)。
「成果、成果!」とやっちゃうと、そこから醸し出される雰囲気がどうしてもそういう雰囲気になりますし、それこそちょっと場違いなこととか、ちょっと脱線するような話題とかは出しにくいと思います。ましてやうまくいかなかった時、やはり捉え方はぜんぜん違ってきますよね。
宮木:ビジネスをやっていく上では、成果にこだわることが決してダメでも間違いでもないし重要なことなんですけど。でも新たな挑戦と考えた時に、やはり失敗する前提に立っていないと苦しいだけなので。このあたりの使い分けも重要になってくるかなと。
VUCA時代は「成果主義」であるほど苦しむ
島津:そうですね。場面によって使い分けは必要なのかもしれませんけど、そこをリーダーが意識的にギアチェンジできるのは、すごく大事だなと思いました。
宮木:特にVUCAとか、不確実性が高くなってきていると言われている中で言うと、成果主義でいればいるほど苦しい場面は増えていくんですよ(笑)。
島津:そうでしょうね。成果が出にくくなっていますもんね(笑)。
宮木:そうなんですよ。複雑で、混乱で先も読めない時代になっていると言われて久しいですけれども。でも仕事全体で言った時に、要は成果主義で幸せになれるパイが狭まっているということなんですよね。
島津:そうですね。まだまだ道半ばでうまくいかないこともたくさんあるけど、このチームでなんとかがんばってやり切りたいよねと思えるかどうか、そういう関係性を作れるのか。そういうことはすごく挑戦を継続できるキーかなと感じましたね。ありがとうございます。
ということで、今日もこちらで終了とさせていただこうと思います。次回は2週間後ですね。また新たなリーダーシップのテーマをもとにお話しさせていただこうと思います。
では宮木さん、今日のまとめにいこうと思うんですが、いかがでしょうか?
宮木:そうですね、心理的安全性の誤解が広まっているので(笑)、それをいかに解くかの重要性を、今日もあらためて感じましたね。双方向のフィードバックをぜひ取り入れていただければと思いました。
島津:双方向のフィードバック。ありがとうございます。私は今日、学びがいっぱいあったんですけど、やはり成果以上に成長にフォーカスするという(笑)。これこそが心理的安全性を担保して挑戦できる組織への1つのキーだと思いました。
それでは、まとめも終わったところで、今日はこれで終了とさせていただこうと思います。また次回、元気にお会いいたしましょう。どうもありがとうございました。
宮木:ありがとうございました。