【3行要約】・心理的安全性の高い組織づくりが注目されているが、その本質である「フィードバック文化」の構築に多くの企業が苦戦しています。
・宮木俊明氏と島津愛氏は、日常的な双方向のフィードバックこそが心理的安全性を高める鍵だと指摘します。
・リーダーは「ポジティブな言い方」を意識し、チーム全体でフィードバックし合う文化を醸成すべきです。
前回の記事はこちら 心理的安全性が高い組織は「フィードバックし合う」文化がある
宮木俊明氏(以下、宮木):心理的安全性が本質的な意味で高い組織は、お互いにフィードバックをする文化があるんですよね。もちろんGoogleもそうですし、いろんな会社で取り組まれていることなんですけど。
このフィードバックという言葉も、またけっこう誤解が多い言葉です(笑)。上司が評価結果を半期に1回伝える時の、フィードバックみたいなものをイメージされる方もいらっしゃるかと思うんですけど。
これは日常的に行うことであって、かつ、上司が部下へではなくて、一緒に働く仲間同士、お互いの立ち居振る舞いとか行動が自分にどう映ったかを、あらゆる方向に率直に返してあげるという意味でのフィードバック。これがしっかり根付いているかどうかによって、心理的安全性に大きく関わってくるんですよね。
ネガティブなフィードバックをする時の注意点
島津愛氏(以下、島津):そうですね。あと、今聞いていて思い出したんですけど、フィードバックをする時に当たり前のことなんだけどめちゃくちゃ重要なのが、ポジティブにフィードバックすること。
「それはちょっと違うんじゃないか?」というようなネガティブなフィードバックする場合であったとしても、やはり最初の言葉はポジティブなところから始めるということですね。
具体的に言うと、お互いが言いたいことや言うべきだと思うことを言った時に、それがちょっと場違いだったり、「いや、なんかちょっと違うんじゃないかな?」と思ったとしても、「あっ、そういう意見もあるよね、いいね、いいね」とか、「そういうことを言ってくれてありがとう」とか。そこから入るって、けっこうシンプルだけどめちゃくちゃ重要なんじゃないかなと思っています。
自分自身がいろんなプロジェクトとかチームと関わっていて、宮木さんとこのウェビナーをやるのも支えてくれている人たちがいる。やはり自分自身が心理的安全性があって自由に伸び伸びやれるなと思う場面は、何を言ってもまずはみんながポジティブに受け止めてくれる場面。
「いや、でもそれはこういう観点で私は違うと思うけどね」ということが後ろにくっついていたとしても、まずは必ず受け止めてもらえると、やはり言いやすいよなとも思うし。その後ろのフィードバックも受け止めやすいというか。「あぁ、そうか。そういう考え方もあるよな。めっちゃ勉強になるな」と、すごく自分もポジティブに受け止められると思います。
今日のテーマの「『安心感』から『挑戦力』へ」みたいなことで考えると、ちゃんと受け止めてもらえるのは、すごくキーなのかなと思いましたね。
宮木:どんな事象に対しても、いい面も必ずあるので。
島津:うんうん。
そのやり方は「あなたらしくない」と伝える
宮木:昨日、ちょうど(島津さんたちと協働しているチームとは)他のチームで僕が「ちょっとフィードバックさせてもらうね」と言ってフィードバックをしたことがあったんですけども。報告してくれた内容が周囲の期待値とはちょっと違う方向にいっていました。
その場では、「ああしたらいい、こうしたらいい」で終わったんです。そもそもまず、その資料を作ってくれたり、報告してくれたり、やってくれたことに対しては「ありがとう」なんですけど。一方で、「本来の目的がこういうところなのに、内容を聞く限りは手段が目的化しているように感じたんだよね」ということを素直に言ったんですよね。
それはその人らしくないし、もっとやれるはずだから、「僕が手伝えることがあったら教えて」みたいなことを言ったんですよね。それを相手がどう受け止めたかをまだ確認していないので、スベっている可能性もあるんですけど(笑)。
こんな言い回しで、行ってくれたことに感謝、だけど自分の中の違和感は伝えて支援を申し出るみたいなフレームワークで伝えることはけっこうやっていますね。
島津:場面としてはよくありますよね。やはり目的とちょっとずれているよねみたいなこととかがあった時に、どうフィードバックするかは本当に難しいですよね。
でも、「その人らしくないし」というワードは、すごくミッキー(宮木俊明)さんらしいなと今思ったりして。そうやってフィードバックされると、冷静に受け止められるなという感じがしましたね。
宮木:実際に傷つけたいわけでもなんでもないので、せめていろいろ考えて伝えていることが伝わればなと。実際にやってきた仕事の質が期待値を下回っていたとしても、どうしても言われて気づくことはあるじゃないですか。
島津:まぁ、普通にありますよね。
宮木:だから能力の問題じゃなくて、当然作業をやっていると作業に没頭しちゃうことがあるので、目的を見失うことは自分自身も経験があります。だから、それに早めに気づいたほうが自分でリカバリーできるので、そんな意味でお伝えしました。
自分のフィードバックについての「フィードバック」をもらう
宮木:ここでもう1個大事なのが、僕がそれを(相手に)どう受け止めていただいたかを、もう少し時間が経ってから確認させてもらおうと思っているんですよね。自分のフィードバックに対するフィードバックを受けるということです。
島津:なるほど!
宮木:常にそういうコミュニケーションが取れていると、配慮せずにとっさにパッと言っちゃった時にも、「あっ、この人はきっと悪意がないはずだ」と思ってもらえると思うんですよね。
島津:そうですね。
宮木:そういう心理的安全性を高めながらコミュニケーションを取っていく。良いフィードバック文化を根付かせていくことが、心理的安全性を高めていくことにつながるし、そういった流れが関係の質にもつながっていくんだろうなということですよね。お互いをある意味、高め合うというか。
島津:そうですね。
宮木:お互いが「らしく」あるために、お互いがどう映っているかを伝え合う。それによって、自分も成長していくきっかけを作っていける。
昨日フィードバックしたのは僕のグループの若手の方なんですけど、そこからフィードバックを得ることによって、僕も自分のマネジメントスタイルというかリーダーシップを、また振り返るきっかけにすることができたので。
そういう双方向の関係性を作っていくことが重要だし、それが今日のテーマである、安心感を挑戦力に変えるということに大きく関わってくるのかなと思いながら。うまくできているかはわからないんですけど(笑)。そんなことをふだん思いながらコミュニケーションを取っていますよというご紹介です。
失敗は本人ではなく失敗させた周りが悪い
島津:なるほど。自分のフィードバックに対してのフィードバックをもらうのはすごくいいですね。それで例えば部下が、「なんかすごく傷つきました」と言ったとして、でもそれは「あっ、そうか。そうやって傷つけちゃったんだね」みたいなやり取りができれば、そこがまたお互いの学びにもなる。
私はやはり企業が成長していくために、失敗の概念をどう位置付けるかはすごく大事だなと思っていて。
「あっ、失敗しちゃった、もう終わりだ」みたいに思うんじゃなくて、「あっ、そういうこともあるよね。今回こうだったけど、次はこれを改善すればいいだけだよね」と思える組織はやはり強いなとも思います。そういうやり取りが当たり前になるために、リーダーが率先して「自分のフィードバックもちょうだい」と言うのはすごくいいですね。
宮木:誰かが失敗した時とかも、失敗するのは挑戦している証拠なので当たり前ですし。ちょっと格好つけているふうに聞こえちゃうかもしれないんですけど(笑)、失敗とみなせるような結果が来た時に、たぶん失敗させた周りが悪いんですよね。もうちょっと早く相談に乗ってあげればそれを防げたかもしれない。
例えば弁当の注文を忘れていたとしましょう。その時は頼まれた本人の責任であることは間違いないんだけど、そんなことはわかっているじゃないですか。それでその人だけを責めて、次に防止するためにどうしたらいいんだとメモを貼らせたり、リマインダーを書かせたり、3枚ぐらいの反省文を書かせたりとかをやるよりも。
周りが「あれ、できてる?」と、ひとこと言い合えるような関係性とか、場合によっては「なんか忘れていること、ないですかね?」とお互いに気軽に声をかけ合えるような関係をつくるほうがはるかに簡単なわけですよ(笑)。
島津:本当にそのとおりですよね。