心理的安全性を高めようとして「ぬるま湯」組織に陥る罠　「無能」「協調性がない」と思われそうで発言できないメンバー [2/2]

職場で“言いたいことが言えない”のは世界共通の悩み

宮木：ただ、どちらかというと、言おうと思ってやめていることは、人間にはめちゃくちゃあるんですよね。

島津：確かに。

宮木：これは日本人が遠慮しがちだからみたいなことだけではなくて、これはもう世界中のあらゆる文化であるんですよね。

「今はちょっとやめておこう」とか、「もう結論が出始めているから言うのをやめておこう」とか。自分が言ってもどうせあんまり聞いてもらえないだろうから、「ちょっと言おうかな？」と心の中で降ってきて湧き出てきている言葉があるんだけども、それを引っ込めて、その場を終わらせることはあり得るんですね。

ただそれをその場で言わなかったとしても、どこかのタイミングで言うことによって、何か新しい展開があったり、他の人に新しい気づきがあることもあるので、その可能性を閉ざしているということなんですよね。なので、その場でどう言うかは熟慮しなければならないタイミングはあったとしても、言わずに引っ込めている言葉が、実は可能性とかチャンスを逃している可能性がある。

「無能だと思われるんじゃないか？」という恐怖

島津：そのとおりですよね。言わずに引っ込めている言葉を言えるような関係を日頃からどう作るかということなのかな、なんて今聞いていて思いましたね。

例えば会議とか、何かの意見出しの場で「今言うと時間が押しちゃうかな？」とかを考えずに言う。それをいきなりやろうと思っても難しいケースはやはりあるんだろうなと思うんですけど。

そこに至るまでのその他の場面の関係性の中で、そういうことが言い合えるようにする。それこそ「無知だと思われるんじゃないか？」とか、「無能だと思われるんじゃないか？」という恐怖がないというのが心理的安全性です。

ここで場違いなことを言っても、「何だよ、こいつ」と思われない関係ができていれば、会議とか意見出しの場でも同じようにできるのかなと。日頃の何気ない関わりもすごくつながっているのかなと思いますね。

宮木：そうですね。『7つの習慣』なんかで言われている「信頼残高」みたいなのがありますよね。言いにくいこともズバッと言うのは、どちらかというと信頼残高を減らす可能性がある。でもマイナスにならないだけ、ふだんから信頼残高を積んでおく必要がありますよね。

島津：そうですね。増えたり減ったりするものと考えると、確かにその場だけで完結させるのはやはり難しいのかもしれないですよね。

宮木：あとはやはり受け止める側の問題というか、双方向あると思うんですけど。厳しいことを言っているけども、この人は別に自分を傷つけようとして言っているわけではなくて、良い仕事をするため、成果を上げるために言ってくれていることなんだなと受け止められるかどうかなんですよね。

島津：そうですね。