【3行要約】・プレイヤーとしての成果重視の評価制度では、管理職が部下育成に時間を割かないという組織的な課題が生じています。
・心理学の単純接触効果によれば、週1回10分の定期面談でも上司と部下の関係性は大きく改善することが明らかになっています。
・経営層は評価制度を見直し、部下育成の成果を管理職評価に反映させることで、組織全体のコミュニケーション活性化を図るべきです。
前回の記事はこちら 最初に必要なのは部下への言葉掛け
浅井隆志氏:今、概要をお伝えしましたが、あらためて一つひとつ解説をしていきます。部下に興味を持ってもらうには、(人間は)自分に興味があるので、相手に興味を持ってもらう。
じゃあ、どうやって興味を持たせるのか。もう鶏と卵みたいな話なんですが、例えば僕が上司で部下がいます。(部下に自分に対して)興味を持ってほしい、興味を持たせたい。興味を持たせたら僕も興味が持てるからと。
じゃあ、初めの一歩はどこかというと、上司が部下を認めるとか褒めるとか労うとか共感するという、この言葉掛けとか行動とか態度が必要なんですね。
なぜ部下は認められたり褒められたり労ってもらったり共感されたりすると興味が湧くかというと、部下も自分が大事で、自分に興味とか関心がある人に興味を持つからです(笑)。なので、とにかくまずは上司が部下を認める、褒めることをやっていく。
認める、褒めるって簡単なようで……。研修でもやるんですよ。一言褒めてからアドバイス、駄目出しをしましょうとか。フィードバックの練習をする時に、褒める言葉がなかなか出る方がいない。ふだんから褒めていないんだなと。
いたずらに褒めればいいっていうわけではないんですが、相手を尊重するとか認めるとか期待をするっていう、そういう言葉掛けがふだんからみなさんできていないんじゃないかなって思うんですね。
これはやはり上司、管理職の方のトレーニングだと思います。そういう場に慣れていただくのはすごく大事なんじゃないかなと感じております。
部下のエピソードを知るための方法
部下のエピソードを知るにはどうすればいいのかっていうと、ぜひ会社の中でレクリエーションなんかをやっていただきたいなと思います。自分の生い立ちとか、幼少時代に没頭したこととかをみんなで発表し合う場とか、場合によっては会社の研修会みたいなのを開いて、勉強会みたいなのを開くとか。
あとは終業後にピザを取ってビールを買ってきて、みんなでそれぞれが自分をプレゼンして、「とにかくみんなでうんうん聞く会」みたいなのを作っていただくとか。
昭和的な感じだと、お酒を飲みながらそういうのを語り合ったと思うんですが、今はなかなか飲みに行ってそういうコミュニケーション(を取る)って難しいので、会社内でそういうのをやっていただくとよろしいんじゃないかなと思っております。
現在から過去を遡り、将来のビジョンを聞く
1個だけ。これは頭の中にうっすら思い浮かべておいていただければよろしいかなと思いますが、実際は短時間で親友になれる会話術があります。現在から過去を遡って聞いて、それから将来の夢とかビジョンを聞くというものです。
いきなり相手から将来の夢とかビジョンを「夢、何ですか?」って聞かれたら気持ち悪いじゃないですか。「今、どんなところが楽しいの? そもそもなんでうちの会社に来たの? 学生時代はどうだったの? あっ、そうなんだ。で、どういうことを今後やっていきたいの?」みたいな、こういう流れはけっこう自然じゃないですか。現在・過去・未来って流れで会話を引き出していく。
これはどちらかというと管理職の方に直接お伝えしたい内容ではございますが、こういう面談のひな型を会社が作ってあげて、それでお互いに1度会話をしてくださいみたいな感じのほうがいいかもしれませんね。これはちょっとした小ネタというか、やり方があるということです。
等級や評価制度の見直しの必要性
それから、部下の行動を損得で捉えていくためには、これも前にお伝えさせていただきましたが、みなさんの会社の管理職ってプレイヤーとして優秀で、そこそこの社歴と年齢があるから管理職になっているんですよ。
「管理職できそうだね」ってことで管理職になるわけじゃなくて、だいたいプレイヤーの延長線上でなっている。(だから)やはりプレイヤーの仕事を優先しちゃって、部下は放置みたいなパターンが多い。
ということは、評価をする時に、賞与を決めるとか、昇格をする基準の時に、プレイヤーの成果だけじゃなくて、ちゃんと部下の面倒を見ているかとか、部下の成果とかチームの成果とか、あとは部下の成長率とかを評価するというようにウェイトを変えていかないといけない。自分が面倒を見て得する状態にしてあげないと、やはりなかなか行動しないということなんですね。
なので、等級とか評価制度は、今一度刷新していただくことは重要だと思っております。
定期的な面談でコミュニケーション量を増やす
単純接触効果、ザイオンス効果みたいな理論もありまして、人間というのは、接触回数が増えれば増えるほど親近感が増してくるっていう効果があるんです。なので、面談を定期的にやっていただく。
僕が推奨しているのは、週に1回、10分でもいいので、お互いの業務内容の確認、「先週どうだった? 今週どんなことやるの? じゃあ、こうしてみたら」みたいな簡単な面談、10分面談を推奨しています。これを会社でもルールとしてやってくださいと言うほうが、たぶん一番早いんじゃないかなと思います。
なので経営者の方、幹部の方は、ご自身の部下の管理職に、とにかく1週間に1度、10分でいいから前週1週間の振り返りをさせることと、今週1週間どんな意識を持って業務に取り組んでいくのかの聞き取りを必ず面談でやってもらうようなルールや制度にしちゃえば、必然的にそこで関与が生まれてきますので。
関係値も築けて、コミュニケーション量が増えて興味関心が湧いてくる状態が作れるんじゃないかなと僕は思っていますので、定期面談を非常にお勧めさせていただいております。
面談で上司が話して良い割合
面談をお勧めしているんですが、注意点として、僕の友人で上司・部下の面談内容をAIで解析するサービスを展開している友人がいるんですが。
彼のところの分析結果によると、上司の話す割合が3割ぐらいから4割、部下が話す割合が6割から7割ぐらいが、一番面談が終わった後の部下の満足度が高い。
これが半々ぐらいだと部下の満足度が下がってきて、上司の割合が6割、いわゆる10分だったら6分間上司が話をしているとなると、満足度が逆に下がっちゃうんですね。
逆に「全部聞けばいいか」と部下が9割、上司1割になると、「上司は何も言ってくれない」みたいな感じになっちゃうので、ここのバランスはちょっと難しいです。
というところで、面談ではまずはしっかり話を聞いてあげる、受け止めてあげるということを管理職にやらせていくのが非常に大事ですね。
そのためには、やはり面談のトレーニングとか傾聴とか、話を聞く技術とかスキル、あと質問をして引き出しをしていくヒアリングスキルなどを勉強させていく必要はやはりあるだろうなと思っております。
部下の管理に関する評価のウェイトを増やす
あと、もう「えいや!」でとりあえずワーッとやるんだったら、評価制度ですよ。評価でとにかく部下の成長に全振り。「それを100パーセントで評価します」って言ったら、そりゃあ一生懸命やりますので。ちょっと極端なんですが、ウェイトを増やすことをご検討いただきたいなと思っております。
とにかく、部下に興味を持たない管理職の方の人が増えているそうなので、何か御社にマッチする施策がありましたら、取り入れていただきたいなと思っております。