【3行要約】
・「上司からフィードバックがない」という不満は、若手社員の間で10年連続ワースト1位の問題となっています。
・株式会社PDCAの学校代表・浅井隆志氏は、この根本原因を「管理職が部下に興味を持っていない」ことだと指摘し、心理学的な「興味」の構造を解説しています。
・組織の生産性向上のためには、部下との関係構築や評価制度の見直しなど、管理職の意識改革と行動変容が不可欠だと浅井氏は強調しています。
部下に興味を持たない管理職
浅井隆志氏:今回は経営者向け、社長向け。部下に興味がない管理職をどう変えていくのか? 管理職を変身させる3つのポイントについて解説をしていきたいと思います。
あらためまして本日登壇させていただきます、株式会社PDCAの学校代表取締役、浅井隆志でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
私の経歴、過去を聞きたい方は、浅井隆志の経歴ウェビナーをやりますので(笑)。そちらで2時間ぐらい語ろうかなと思っておりますので、今日は割愛させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

以前「管理職をどう動かすかセミナー」みたいなものの中で「興味がないから動かないよね」「重要度が低いから動かないよね」とか、いろいろお話をさせていただきました。
「そうなんです。うちの管理職って、部下に興味をぜんぜん持たないんですよ」っていうような反響がすごく多かったので、部下に興味を持っていない管理職をどう動かしていくのかみたいな深掘りバージョンで今日はお話をしていきたいなと思っております。
部下の最大の不満は「フィードバックがないこと」
まず管理職の方が部下と会話をしない。教えない。指導しない。駄目出し、指摘をしない。フィードバックというのは簡単に言うとアドバイスのことですね。フィードバックをしない。それから部下の成果しか見ないということで、結論、これは部下に興味を持っていないですよねという話。
ちなみに余談になりますが、私たちは全国で若手向けの教育研修をもう過去10年ぐらいやらせていただいておりますが、若手からの一番の不満が何かというと、管理職、いわゆる自分の上司がフィードバックしてくれない。10年間アンケートを採っているんですが、これが10年連続ワースト1位なんですよ。
ちゃんと教えてくれない。ちゃんとフィードバックをしてくれない。いわゆる簡単に言うと放置プレイが若手の不満。
若手がこういう不満を持っていて、(そんな中で)がんばって生産性が上がるか、成果が上がるか、能力が上がるかっていったら上がらない。なので、まずは管理職を変えていかないと会社全体の生産性が上がらない。これが背景としてあるということですね。
そもそも「興味」とはどのような心理状態か
もともと僕は心理学をけっこう勉強していましたので、心理学的なお話もさせていただきたいなとは思います。じゃあどうやったら興味を持てるのかという話で、そもそも興味というものについて心理学的な考えは一応2方向あります。ちょっと読み上げていきますね。
拡散的好奇心っていうのがあって、特定の目標を定めずに新しい情報を幅広く求める状態。何か欲しいものがあって買い物に行くんじゃなくて、「なんかブラブラしていろいろウィンドウショッピングしたいな」みたいなのあるじゃないですか。あの状態。情報収集したいっていう欲求ですよね。
それから特殊好奇心っていうのは、特定の目標を定めて、既知の情報を深く掘り下げる状態。買い物に行こう。もう欲しいものは決まっている。だけど実物を見たい。他のお店の代替品とか類似品も見たい。それからネットで口コミを見たいとか、深く掘り下げる状態。これも好奇心ですね。この2つがまずあるっていうことを前段でお伝えさせていただきます。
1番について、どうやったら管理職がこういう拡散的好奇心が持てるかっていうと、いわゆる多様な価値観に触れることによってのおもしろみを感じられる人かどうかが、まず1番になってくるわけですね。
2番は、自分の目標とか目的とか、自分のやりたいことに、そもそも自分のメンバーが当事者であるという認識があるかないかっていうのが、おそらく(管理職が好奇心を持てるかどうかの)1番、2番だろうと僕は見解を持っております。
「どんな時に興味を持つか」アンケート
それ以外に人間はどういうところに興味を持つのか。調査をした母数が学生なので、回答が学生向けなんですが。「どういう時に興味を持ちますか?」みたいなアンケートがおもしろいのでご紹介します。
実験体験型興味ということで、いろいろな器具を使うことができる。いわゆる「バリエーションが豊富というところに興味を持つ」みたいな感じ(の回答)です。それから驚きがあるかないか。これはもう直球ですね。それから達成感が欲しい、達成感を味わいたい。ここでやはり興味が湧いてくると。
いわゆる知識欲ってよく言われますよね。「なんでそんなに本を読むんですか?」「いやぁ、知識欲ですかね」みたいな。とにかく知りたいという欲求が根源になる方もいれば、思考活性型、「サスペンスドラマが好き」という方もいらっしゃるじゃないですか。あれはまさに思考活性型の興味です。
それから日常関連。いわゆる自分の生活に密着しているかどうかという興味。こういうところがあるということなんですね。
これら1個ずつの学術的な解説よりは、具体的にこういう興味の喚起をどうやってしていくのかを、具体的な実践型でお話ししていきたいなと思っています。
部下に興味を持つには、部下から興味を持ってもらう
まず、部下に興味を持つには、部下に興味を持ってもらう。どうですか(笑)? 実は人間が一番興味があるのは、自分自身なんですね。これはおそらく全員だと思います。僕もみなさんもそうですよね。おそらく人間は自分に興味がある。「自分が一番かわいい」っていう言葉がありますよね。ということは、自分に興味を持ってくれる人に興味を持ちやすいんです。
ちょっとくだらない話ですけど、僕が小学校ぐらいの時に、思いもよらない女の子からバレンタインデーのチョコとかをもらって、そうなるとその子のことが気になっちゃって気になっちゃって、挙句の果てに好きになっちゃうみたいな(笑)。人間は、興味を持ってもらうことで相手に興味を持つというきっかけがあります。
逆説的に言うと、「部下に興味を持ちましょう」じゃなくて、部下に興味を持たせる。これがいいんじゃないかなと僕は思っています。
そのために部下のエピソードを知ってみる。どういうきっかけで入社したのか、どういう生い立ちなのか、どういう家庭環境なのか。エピソードトークとよく言われますが、人間はエピソードとか背景に(対して)関係値を非常に築きやすいんですね。
「同じところとか同じような乗り越え体験があるな」とか、「同じような怪我をしたね」とか、「お前、部活同じだったんだ」みたいな共通点とかを見つけたりすると、親近感とか興味って湧いてきやすいです。なので、お互いにエピソードを語り合うコミュニケーションがあってもいいんじゃないかなと思うんですね。
部下の行動を損得で捉える
あとは、部下の行動をちゃんと損得で捉えるかどうか。簡単に言うと興味がないっていうことは、自分に得もないし損もないんですよ。例えば「部下がすごく成長して成果を出したら1億円もらえます」みたいな報奨制度だったら、メチャクチャ興味、重要度が高まりますよね。
ということは、現状はそういう損得勘定、利害関係が簡単に言うと成り立っていない可能性が高いんじゃないかなと思っております。
マネジメントの必要性に関する知識のなさ
それから承認の行動とかマネジメント力。いわゆる「承認ってなぜ必要なのか? マネジメントってなぜ必要なのか?」っていうことの目的とか背景とかの知識とかスキルがないからなのかなと思うんですよね。ということは、やはりインプット、学ばせることが重要であろうとも考えます。
これらをやはり実行していくためには、日頃の面談とか会話。会話というのは、会議とかミーティングのあり方。このあたりは会社の制度とかルールでも変えられますので、変えていく必要があるんじゃないかなと思っております。
先ほど言った損得の部分もそうなんですが、等級とか評価制度できちっとそこにウェイトを持たせていくというのが、非常に重要なのではないかなと思っています。