【3行要約】 ・研修トレーナーの伊庭正康氏は、部下の失敗には「投資になる失敗」と「取り返しのつかない失敗」があり、前者は成長の機会として活用すべきだと指摘します。
・同氏は部下のチャレンジの成功確率については「7割で十分」とし、部下のWill-Can-Mustを接続した成長ストーリーの重要性を説きます。
・部下に任せる際は評価とキャリアに連動させ、環境を整えることで部下が「損をしている」と感じることを防ぎ、成長を加速させることが必要です。
前回の記事はこちら “投資になる失敗”が成長を加速させる
伊庭正康氏:(部下に仕事を任せる能力をまとめた5ヶ条について)3つ目、「失敗」の定義を決めておきましょう。誰もが失敗するのは嫌だと思います。だけれども、ちょっと引いて見ると、失敗にも2つの種類があるんですよね。
1つは投資になる失敗です。「失敗をするから成長する」なんて言われます。
2つ目の失敗は取り返しのつかない失敗です。情報を漏洩してしまったとか、会社の信用を傷つけて大変なことになったとか。お客さまにも迷惑ですし、会社のブランドも失墜しますよね。これはダメです。
でも、考えてみてください。現場の場合は、ほとんどが投資になる失敗ではないでしょうか。投資になる失敗とは、投資に変えられるものなんですよね。
変えられるものには1つのことがあるんです。それは何かというと、計画、実行、検証、改善策、PDCA(Plan-Do-Check-Act)です。この中のCとAをちゃんとやることによって、むしろ失敗が成長を加速させます。
PDCAの“検証と改善策の提案”が成長のカギ
例えばですよ。提案書を作成して、お客さまに提案した。お客さまからは、まったく話にならないと叱られた。上司としては、本当は自分がやったら絶対に契約が決まっていた。でも、部下に任せたから「どうしてこんなにしょぼい提案をしたんだ」ということがあるでしょう。
これは失敗なんでしょうか。もちろん失敗ですけれども、投資になる失敗なんですよ。でも、投資にするためにはCとA、つまり検証が必要です。
部下の伊庭さんが、いまいちな提案をして大事な契約を失注した。(それを踏まえて)伊庭さんと打ち合わせをします。
「今から思うと、どうしてこの状況になったのかな? 一緒に考えようか」「事前に現場を下調べしていなかったことが大きかったと思います」「どういうこと?」「実は提案した時に社長からこのように言われまして……」どうたらこうたら。
「なので、もっと現場の事実を把握した上で、課題設定をするべきだったと思います」「そうか。じゃあ、今度からどうする?」「現場ヒアリングをして、その事実を盛り込んでから社長に提案するようにします」「それでいこうか」。
おそらくこの伊庭さんは今後、ほかの提案でもそうするんでしょうね。これが成長です。ですからきちんとCとAに(つながるような)伴走をする。失敗してもいいんです、ということなんですよね。
部下の成長ストーリーを一緒に考える
ですから、私はいつも研修で「7割で十分ですよ」なんてことを言っています。例えばやることが10個あった時に、3個は失敗する。それは成長のチャンスです。全部が成功することより、多少の失敗があったほうが成長するということなんです。
でも10個中、7個が失敗したらさすがに本人もめげますし、周りも困ります。3個ぐらいにしておくのがいいのかなと思っております。
では次にいきましょう。任せるのであれば、部下の成長ストーリーを部下と一緒に考えていきましょう、ということをお伝えしたいです。これはよくこのチャンネルでもお伝えしている「Will-Can-Must」の法則で考えるとめちゃくちゃわかりやすいです。
Willは本人がありたい姿、なりたい姿、理想の自分です。Canというのは本人が習得するべき能力。足りない能力がありますよね、伸ばすべき能力がありますよね。Mustは、あなたが部下に与える任務のことを指します。
この時に「伊庭くん、新人が入ってくるので教育をお願いね」(そうすると)伊庭くんは「ああ、仕事が増えるなあ」と思うわけですよ。ところが、伊庭くんと事前に会話をしているとどうでしょう。
部下の目標と任せる仕事を関連付ける
「伊庭くんって将来はどうなりたいの?」「僕はできたら、プロジェクトのリーダーなんかをやっていきたいなと思っていますけどね」「そうなんだ。そのためにはどんな能力が必要なんだろうね」
「1人でやるものじゃないので、まとめていく力とかが必要だと思います」「そうだよね。じゃあさ、伊庭くんに任せたい仕事があるんだよ。新人指導をお願いしたい。それって伊庭くんの言ってるプロジェクトリーダーになる近道だと思ってるんだよね」
「新人を育てることを通じて、1つのプロジェクトを動かしていると思って、2ヶ月で新人をこの状態にできるようにしてもらっていい? 新人は3人、お願いしたいんだわ」というふうに、きちんとWill・Canと接続をしていくやり方です。これが成長ストーリーです。
さらに言うと、今、私はちらっと言いましたよね。「プロジェクトリーダーになるために」っていう話をしました。それって部下とのキャリアの話なんです。
ぜひ、ふだんから(部下と)キャリアの話をしておいてください。そうすると、任せることに意味合いが出てくるんですよね。ぜひよろしくお願いします。
評価と連動するミッションを与える
そして5つ目にいきますね。ここ、めちゃくちゃ重要です。部下も「損か得」かで考えますよね。任されて「これをやるのが得なのかな、損なのかな」。得にする方法を紹介していきます。
部下は損か得かで考えるという話をしました。そりゃそうですよ、仕事ですからね。なんだかんだ言っても仕事なんですよ。損することは当然、部下はやりたくないし、上司はやらせるべきではありません。
だとすれば、ちゃんと環境を整えてあげましょう。任されてうれしい状態にするということです。まずは評価と連動させてあげてください。やはり会社員です。評価は大事です。
私が管理職の時には、評価にまったくならないミッションを与えることは極力やりませんでした。やはり評価に連動させてあげたい。なのできちんと目標に盛り込んであげるということはやっていました。
また評価する時にプラスアルファとしてそれを加点できるように(する)。管理職ですので人事の考課者ミーティングとかに出るんですね。評価者ミーティングとかいろいろ言っていましたけれども、そこでちゃんとプレゼンをして、勝ち取ることをやっていました。
部下だけはなく、上司とのコミュニケーションも重要
でも、正直に言うと約束できるものじゃありませんので、部下とはなかなか評価の話をしにくいんです。ただ、そういったフィードバックをできるようにやっておくと、2回目、3回目も部下はやる気が出ますよね。やはり仕事ですから、そこはちゃんとやってあげるべきだと思っております。
そしてキャリアとの連動。先ほど言いました「プロジェクトリーダーになる近道ですよ」ということで、ちゃんと結果を出したのであれば、上司としてそういった道があることを、自分のもう1個上の上司にも(伝える)。
「伊庭さんはプロジェクトリーダーを目指して、今はこの、後輩指導のミッションをやっています。今回がよかったら、そこをちゃんと報告します」みたいなことを、ちゃんと上と共有しておくことも大事ですよね。で、「何々さんともそういう話をしてるんだよね」という雑談をしたらいいんですよ。
現場の業務負担を考慮しつつ、チャンスを与える
あと、現場は忙しいです。なのでその場合は、業務負担を軽減してあげるために「そこは彼・彼女に任せたらいいからね」というふうに、ちゃんと環境を整えてあげることも大事です。
環境を整えることなく任せていくと、やはり、損な感じがするんですよね。それは私もわかります。やられたこともあります。
自分で解釈をしながらやっていくんですけれども、それでも「ちょっと評価と連動させてほしいな」とか思いながらやった記憶があります(笑)。会社員でしたので、やはり評価が大事でございますので、ぜひよろしくお願いいたします。

さあ、では締めていきましょう。今日の内容はお役に立ちましたでしょうか。このチャンネルでは研修トレーナーの伊庭だからこそお伝えする本物のTipsを紹介しています。ぜひよろしくお願いします。
また、(私は今までに)さまざまな本を書いてまいりましたが、今回はこちらの『
リーダーの「任せ方」の順番 部下を持ったら知りたい3つのセオリー』からピックアップしています。そろそろ本屋さんでも平積みされている頃ではないかなと願っております。ぜひチェックしてみてください。よろしくお願いいたします。
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