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(2025年再掲版)片付けパパ対談 #20 ネガティブフィードバック ~「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術 ~(全2記事)

上司の「どうせ言っても無駄」という態度は部下に伝わっている 「言いにくいこと」をきちんと伝えるコツ [1/2]

【3行要約】
・「言いたいことが言えない」という職場の悩みは多くの人が抱えているが、それは実は自分で「言わない選択」をしているという見方があります。
・難波猛氏は、パワハラを避けながら効果的にフィードバックするには、相手の感情に配慮しつつ具体的な行動に焦点を当てることが大切だと説明。
・リーダーは自らも挑戦する姿勢を見せながら、Will・Must・Canのフレームワークを使って相手との認識のズレを明確に伝えることが求められます。

本記事では、特に反響が多くあった同イベントの2記事目を再掲します。

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職場で「言いたいけど言えない」と悩む人へ

大村信夫氏(以下、大村):みなさん、悩みがいろいろあるんですね。

難波猛氏(以下、難波):そうですね。このあと少し解説を進めていきます。例えば、「いろいろ言いたいけれど、言えない」という場面があると思うんですね。「言いたいけれど言えない」ことに関しては、ポイントがあります。「言えない」ではなく、実は「言わない選択をしている」ということです。

これはアドラー心理学の『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』の中に出てくる「目的論」という考え方です。人は何かの理由があってできないのではなくて、「やらないほうが得だからやらない選択をしている」ということなんですよ。だから、モヤモヤしているけど言えないんじゃなくて、言わないほうが、波風が立たない状態のほうが、私にとってハッピーだから言わない選択をしているということです。

例えば部下に対して、あるいは上司に対して、「どうせこの人に言っても、かけた労力だけのリターンが得られないから、言うだけ無駄だ」と思って、言わない選択をしているということなんですよ。

大村:なるほどね。

難波:フィードバックに関しては、言えるんです。なぜならば、みなさん日本語が使えるからです。

大村:なるほど。

難波:「納得できていないんです」ということだったら、「納得できていません」と言うだけで済むんです。でも、「言わない選択を自分はしているんだ」と自覚するということです。自覚した上で、その次です。

「やらない選択、言わない選択をし続けたら、この環境は改善するのか?」ということですね。例えば、先ほどの体臭の話です。言わない状態を続けたら、これから夏場、状況としてはどんどん悪くなるわけです。それは、ご本人にとっても、たぶんアンハッピーなことですし、クライアントにとっても、アンハッピーなことですよね。

であれば、「伝えてあげたほうがいいかもしれない」と思えば、伝えてあげるということですね。部下のギャップに対しても、年上上司に対してもそうです。うまくいかないかもしれないけど、やってうまくいくこともあるはずです。でも、やらない選択をし続けたら、「その状況は改善されない」ことだけは確定するんですよ。

それを5年、10年ほっといてもいいんだったら、言わなきゃいいんです。でも、言ったほうが改善される、もしくは言わなきゃ将来的に絶対困ると思ったら、言ってあげるということです。

大村:うん、うん。

難波:だからこのあたりも、「言えないんじゃなくて、自分は言わない選択をしているんだ」という前提に立って、物事を考えるのが1つの方法ですね。

大村:なるほど。

パワハラにならないフィードバックの仕方

大村:この物事の考え方は、あまりなかったですね。

難波:そうなんですよ。一方で、言い方を間違えるとパワハラになるので、実はパワハラにならないポイントがあります。

私も、先ほど言ったみたいに、リストラとか降格とか、めちゃくちゃ厳しい状況のコンサルばかりを100社以上、管理職でいうと2,000人とか3,000人にやっています。でも、1回も法的トラブルは起こっていないんですね。1件もです。それはなぜかと言うとポイントがあります。

まずは、「相手を変える」ではなく、「ギャップを埋める」ということです。「この人を変えよう」とか「あいつをなんとかしたい」と、個人を指定して個人を変えるのではなく、発生している問題やギャップについて話し合う。そのギャップを埋めていくということです。

大村:なるほど。

難波:その上で、相手の性格ではなくて具体的な行動です。例えば、服装が乱れているんだったら、その服装について話す。仕事における言動がズレているということだったら、「その言動は困りますよ」と、ちゃんと伝えてあげる。

最後に、論理的・ロジカルなだけではなく、感情面・エモーショナルですね。フィードバックというと、「ひろゆきみたいに論破王にならないといけない」と思われがちですが、大事なのは論破じゃないんですよ。人って、論破されたくないんですよ。

大村:そうですね。

難波:なので、相手の感情面がどうなっているかを考えながら、相手に感情的に納得してもらえるように、説得するんじゃなくて、納得してもらえることを意識しながらやっていく。

大村:でも、ロジカルも必要なんですよね。

難波:おっしゃるとおりです。感覚的に「あれ、あれ」みたいな感じで言ってもぜんぜん伝わらないので、具体的なファクトに基づいてロジカルには説明するけど、一方で、相手の気持ちの動きや感情の動きはちゃんと把握する。この両軸がすごく大事になると思っています。

上司と部下の認識のズレをなくす話し合い

難波:その上でフィードバックって、例えば組織の中の関係性でお話しすると、上司から部下もそうですし、みなさんからいただいている、部下から上司というケースもそうですけど、基本的には「この状態を目指す」みたいなことがポイントになると思っています。

キャリアコンサルタントの方はご存じかもしれないですけど、「Will・Must・Can」というフレームがあります。

「自分のやりたいこと=Will」「やらなければいけないこと=Must」「できること=Can」。これが大きく重なっている状態だったら、本人もハッピーだし、会社もハッピーなんですよ。

自分のやりたいことが会社の中にあるし、それはお客さんからも会社からも期待されている。そして、自分はそれをできる能力もあると。ただ、何かしらでズレてしまっているパターンが、どうしてもあるということです。

大村:なるほど。

難波:このズレている時に、「ここがズレていますよ」と上司側から伝えたり、あるいは部下側から、「私のやりたいことと会社が求めていることには、実はズレがあるんですよ」と話し合ったりすることが、フィードバックの際に、すごくシンプルですけど、わかりやすい話し合いになります。

「なんか会社から言われていることと、自分の考えていることがズレているんだよな」みたいな時には、この「Will」と「Must」がズレているケースがけっこうあります。なので、そこについて、いきなり「ダメだ」と大騒ぎするのではなく、「こういうズレが生じていますけど、どうですか?」というかたちで話し合うのが、上司・部下の関係性ではポイントになると思います。

大村:ごめんなさい、僕、難波さんの本を読んでいなくて。

難波:はい(笑)。

大村:違うんですよ。読んじゃうと、予定調和じゃないけど、「このポイント」とか、「僕のアレ」に行っちゃうので、資料も初見なんです。

ぜひチャットでも、気づいたことを言っていただければ拾っていきます。

難波:そうですね。ご質問とかがあれば、後半でも入れていきたいと思います。その上で、こういったギャップを埋めていくというお話になります。

「言って悪化するリスク」の捉え方

難波:大事なこととして、先ほど「ロジカルさ(論理面)とエモーショナル(感情面)の両軸が必要です」とお話ししました。それは、本の中では「マインドセット・スキルセット」と表現しています。

1つはマインドセットで、感情面を整えてやることが、めちゃくちゃ大事になります。上司側がイライラしながらしゃべると、相手に対して攻撃的になったり、部下側がイライラしている状態で上司に話を持っていくと、喧嘩越しになったり泥沼化したりします。それが、ハラスメントになるかたちですね。

なので、「感情面を落ち着いた状態で整えてやる」という心理状態が、実はテクニックの前にすごく大事になります。

大村:これは、「お互いに」ということですよね。

難波:お互いにです。だから、相手がイライラしている時に、いきなり話し始めないことも大事です。「ちょっと耳に痛いことを言わないといけないんだけど、今大丈夫ですか?」と確認して、「いや、ちょっと今は勘弁してください」と言われたら、やらないという選択もアリです。

大村:なるほどね。

難波:その上でどんなふうにやるかというと、合計5つほどですね。

(チャット欄より)「言って悪化するリスクをどう取ればよいか」。このあたりも、このあとお話ししたいと思います。

難波:まず、ポイントとしては5つですね。

「①嫌われることを覚悟する」「②期待するが、期待しない」「③感情を込めるが、感情的にならない」「④真剣に職務に取り組む」「⑤自分で決める」。これを、それぞれ解説していきます。

まず、「言って悪化するリスク」とチャットに書いていただきましたけれど、ポイントとしては、耳に痛いことを相手に言って喜ばれるはずがないんです。

大村:そうなんだ(笑)。

難波:「好かれようと思って言う」というのは間違いです。前提としては、一定レベルで嫌な顔をされるということです。喜ぶ人はいないんですよ。

大村:そうですよね。

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