【3行要約】
・「自分でやったほうが早い」と考えて部下の仕事を奪ってしまう管理職ほど、チームのパフォーマンスを最大化できないジレンマに陥っています。
・研修トレーナーの伊庭正康氏は、リーダーは「個人の5倍」ではなく「チームの10倍」を目指し、部下に任せる勇気と一貫性のある姿勢を持つことが必要だと提唱します。
・また、伊庭氏は「タフ・エンパシー」という概念を紹介し、部下に対する優しさと甘やかしの違いを解説しています。
「任せるマネジメント」のスキルを伸ばす秘訣
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。優秀なプレイヤーと、優秀な上司はまったく違います。それは「任せる」チカラの違いなんです。

何でもやってしまう人は優秀なプレイヤーです。ところが、リーダーがそれをやってはダメなんですね。今日はそれがテーマです。任せるチカラを高めたい方はぜひ見てください。
メニューはこちらです。「信じて待つ」チカラ、あなたはどれぐらいありますか? それが1つ目。2つ目は「優しさ」と「甘やかし」の違いを知っていますか? 3つ目、「失敗」の定義を確認しておきましょう。
そして4つ目、部下の成長ストーリーを描く。そして5つ目、任せるのであれば、部下が任されてうれしいと思える環境をしっかりと整えること。今日はこの5つを紹介していきます。

そして、今日の内容は9月に出した私の新刊『
リーダーの「任せ方」の順番 部下を持ったら知りたい3つのセオリー』からエッセンスを抜粋して、5ヶ条として紹介します。
「自分がやったほうが早い」思考から脱却する
ではいきましょう。ドン! 1つ目は、任せたのであれば「信じて待つ」チカラを会得しておきましょう。一流のリーダーは判断が一貫しています。任せるのであれば、ちゃんと任せる。
途中で不安になって「やっぱり自分がやる」なんてことをやると、部下は上司を信じなくなりますよね。ですから一貫性が大事なんです。
そのためにはまず、どうすればいいのか。「任せる方針」を自分の中に持っておくことです。ここでは「自分1人だけでは何もできない」という感覚を持つことが大事だとよく言われています。優秀なプレイヤーと、優秀なリーダーの違いがまさにこれなんですね。
私の周りにも「優秀なプレイヤーだな」と思う方がいらっしゃいます。その方は1人で5人分ぐらいの仕事をします。「私がやったほうが早いから」と、あれもやって、これもやって。
本人はそれでいいと思っているんですけれども、(仕事を)任せたほうからすれば「ほかの人の力も使って、全体のパフォーマンスをもっと上げてよ」と思うんですよ。「あなたのパフォーマンスが5倍」ではなく「チームを使って10倍」にしたいんですよね。ですから(自分でやってしまう人が)ボトルネックになってしまうんですよ。
いい意味での「無力感」を持っておくことが重要
「自分1人ががんばる」という感覚は自己最適なんですけれども、やはりリーダーになっていくためには、組織最適で考えるようになることが大事。なので「自分1人で5倍まではできるかもしれないが、とてもじゃないけど10倍まではできない」という感覚を持つこと。これを「無力感」と言っています。
本当に「無能である」というふうに、謙虚になりすぎることではないんですよ。そうではなくて、「5倍まではできるけど、10倍まではできない」という感覚のことを言っています。
そして、私が好きな言葉があります。それがこちら、プロ経営者の大久保恒夫さんがおっしゃっている「正解なんてわかりません。でも、私は人を信じています。変わるまで待つんです」という言葉です。
(この言葉に関する)映像を見たことがあるんですけれども、ただ待っているだけじゃありません。何かというと、チャンスをあげていました。
「ああ、この管理職は困っているな」というのを観察しているだけじゃなく、「あそこのお店、見てきたらどう?」と言って、チャンスだったり、考える機会をあげているんですね。つまり、人を信じています。
変わるまで待つ。これは受け身ではないです。迅速に変わるきっかけを与えるということなんですね。これが「信じて待つ」ということだと私は感じています。
ですので、リーダーはまず、このように任せる方針を持っておくことによって、任せやすくなるんですね。
まとめましょう。1つ目は任せる方針を自分の中に持つこと。そして、任せたのであれば信じて待つということなんです。でも、手放しではないですよ。チャンスをあげる、教えることはする。これを、ぜひやってみてください。
部下に対しては共感しつつも甘やかさない
2つ目。これはめちゃくちゃ注意が必要です。「私、部下のことを叱れません」という管理職の方がよくいますよね。ちょっと厳し目に言いますね。叱れない管理職は部下に舐められます。これは確実に言えるんですよ。
じゃあ、叱るって何かというと、要望なんですね。さあ、これが2つ目のテーマです。どういうことかというと「深く共感しながらも」。これは優しさですよね。「甘やかさない」。これが要望を下げないということなんです。
そしてこの「深く共感しつつ、甘やかさない」ことを「タフ・エンパシー」と言って、リーダーが絶対に持っておくべきものです。
何度も言います。コミュニケーションは優しくていいんです。ですが、要望を変えてはいけない。
なので、叱るというのは別に「怒る」じゃないんですよ。「今回は、ここまでができていなかったよね。で、これをやってなかったよね。これはダメ」。
しっかりと言ってください。「これはダメ」「これは約束したよね。これができていないことはダメ」「報告受けてないよね。報告していないのはダメ」というふうに、やっていないことであるとか、手を抜いたことに対しては「ダメ」と、しっかりと言う。
未着手、着手不十分は「ダメ」。これは言ったほうがいいですね。能力に対して言っちゃダメです。「君は、これができないということはダメだよ」「能力がないことはダメだよ」。こんなことって言わないですよね。
なので、できていない状態とか行動に対しては「ダメ」。これは要望ですよね。しっかりと言いましょう。よろしくお願いします。
なぜ、組織が向かっている目標を示す必要があるのか
じゃあ、強くなるために何が必要なのか。これは僕が思っていることなんですけれども、「組織の目標をちゃんと持っている」ことなんですよ。
先ほど、ちらっと個人最適と組織最適の話をしましたけれども、「組織としてこれを目指しているので、ここまではちゃんとやってほしい」ということが大事になります。
1対1の人間だけで見ちゃったら「忙しいから、これを言うのはちょっとかわいそうかな」というのは、もちろん誰もが思います。
でも、そうじゃなくて「組織がここに向かっているので、(忙しいのは)わかっているけど、サポートしながらみんなでやろうと言っているんだよね。だからやろうぜ」。これです。
組織として「ここに向かっている」ということを公言しちゃっているので、周りのメンバーのこともそこに向かって動かしているんですよね。その中で1人だけ「いや、私はちょっと忙しいので」ということがあった場合は、やはり譲れなくなるんですよ。
「なんとなく積極的」なメンバーをどれだけ作れるか
だから、まずは組織の目標ありきです。「組織としてこうありたい、これを目指している」というものを必ず作ることです。そしてそれをちゃんとメンバーに日々、伝えるんですね。毎日言う必要はありませんが「これをやるんだ、これを目指してるんだ」と(言うことを伝える必要があります)。
するとメンバーは概ね2:6:2になります。2割が、かなり積極的。6割が、なんとなく積極的。残りの2割がちょっとついて来れない、ということになるんですよね。
でも、もうこの状態で8割、つまり概ねそちらに向かっている状況なんですよ。そこでリーダーがぶれてしまったらダメなんです。
迷った時はこのように、組織が何を目指しているのか、何をなすべきなのかということから逆算することをおすすめいたします。
「リーダーの俺は何て言うのかな?」精神で動く
話がちょっとそれますが、日本のロック界のレジェンドといえば誰でしょうか。いっぱいいますけども、そのうちの1人が矢沢永吉さんじゃないかなと思っているんですよね。
これは本当かどうかはわかりませんけれども、よくギャグのように「俺はいいけど、矢沢は何て言うのかな?」みたいなことを言われませんでした?(笑)。今でも言われているかもしれませんけれども。
「俺としては別にやってもいいんだけど、矢沢は何て言うのかな?」。これです。「私は別にいいと思うんだけど、リーダーの俺は何て言うのかな?」。そんな感じですよね。
でも、本当にそうだと思います。自分の役割としての一貫性を担保しないとダメということなんです。
「矢沢は何て言うのかな?」「リーダーとしての私は何て言うのかな?」。これでお願いします。(リーダーは)優しさと甘さを区別してください。
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