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「リーダー1年目のマネジメント大全」刊行一周年トークイベント ~「優れたリーダー」を大解剖する夜~(全4記事)

「罰ゲーム」と言われてもマネジメント職を選ぶ理由 “やらない自由”の先にある、挑む人だけの報酬 [1/2]

【3行要約】
・デロイトの木部智之氏は、マネジメントの魅力を「収入の伸びしろ」「希少性」「視座の広がり」にあると説明し、「成長と快適さは共存しない」と強調しました。
・同氏は、高い成果を出したチームは「楽しそうで発言が多く裁量がある」状態だったと述べ、チームの実力と個々の特性に合わせて監督のように戦い方を変えてきました。
・さらに、次のリーダー育成では小さなストレッチ任務の付与と“考え方を語る1on1”、自走的な振る舞いと継続学習が効いたと述べ、規模拡大時は「押すボタン」を見極める重要性を示しました。

前回の記事はこちら

マネジメントの魅力とはお金・希少性・視座の広がり

松尾美里氏(以下、松尾):最後に、1個ぜひ聞きたいことが。今は、マネジメントをやりたい人ばかりではないというか。あまり好きな言葉じゃないんですけど「罰ゲーム化する管理職」という言葉があったりとか。

マネジメントを全員がしたいという状態ではないですが、その中でもマネージャーに対してメッセージがあればちょっといただきたいなぁと(思います)。

木部智之氏(以下、木部):そういう中でのマネージャーに対してのメッセージですね。どんな仕事をやっていたって大変だと思うんですよ。先ほど板挟みというお話がありましたが、どんなポジションやっていたって板挟みなんですよ。ストレスがない仕事なんてほぼないと思うんですね。

余談ですが、IBMの元CEOのジニー・ロメッティが「成長と快適さは共存しない」「快適な状態は楽な仕事だ」と言っていたんですね。今、自分のスキル、経験でできる仕事だから快適であると。

でも新しい仕事、初めての仕事、ちょっと背伸びした仕事をする時は何かしらストレスや苦しみがあるから、成長につながる。輪ゴムと一緒でテンションがかからなかったらびよーんとなるし、引っ張ると伸びる。伸ばすにはストレスがかかるんです。

どんな仕事したってそうです。目指さない人は目指さなくていいんじゃないかなというのが先ほどの話なんですけど、じゃあ目指すならなぜ目指すの? 別に目指さなくてもいいと思っています。

正直、1つはお金だと思います。この世の中でお金を稼ぐ方法は2つしかないと思っていて、1つは何かの領域でトップクラスになること。もう1つは、いわゆる組織を束ねる、多くのビジネスを動かすことで上に上がること。何かの領域でトップになるということは、そこに希少性があるので高い値段で買ってもらえます。

私はプロジェクトマネージャーというところで、そこそこのポジションまでいったという自負はあります。今は会社員ですが、会社を辞めてフリーランスでもごはんは食べられるかなと思っています。だけどそれをやらないのは、そこにあまり個人的なおもしろみがないからです。どうせトラブルプロジェクトに突っ込まれるからというのもありますが。

1度独立しようかなと思ったこともありますが、そうしちゃうと小さな仕事しかできないから、それはいつでもいいなってその時は思ったんです。IBMを選んだ時も、今回デロイトを選んだ時も、やはり大きなビジネス、大きな仕事、インパクトのある仕事をしたいなと思って会社員をやっています。

あと、リーダーという話だと、例えば1人の仕事量で稼げる限界が来る仕事ってあると思うんですね。例えば髪を切る仕事。1日8時間髪切った時に、それ以上はもう(得られるお金は)増えない。増やすためには腕を上げて指名料を取ることもできますが、そこもおそらく限界が来ます。じゃあその世界でお金を増やすにはどうしたらいいのか。自分で店を作って、その店を増やす。

リーダーを目指す、希少性というところで目指す、いろいろあると思います。リーダーを目指していく場合、ポジションが上がるとお金はついてくると思います。先にポジションが来るか先にお金が来るかは別ですけど。

あとポジションが上がっていくと、やはり経営に近くなるので、見られる情報・知る情報が増えてくるんですね。例えばクライアントさんのポジションも次第に上がってくる。知的好奇心もくすぐられたりするので、そういった良さはあるかなって思います。

松尾:ありがとうございます。マネジメントは大変だろうけど、そこにいくからこそ見える景色もある。

木部:本当に大変ですよね。今でも本当に嫌だなと思うことがありますよ。

成果を発揮できるチームのポイントとは何か

松尾:そうなんですね。私も聞きたいことが増えていく一方なんですが、事前に質問をいただいていたので、ちょっとそれを投影していただきます。

1つ目「成果を発揮できるチームのポイントを教えてください」。いかがでしょう。

木部:今日、これまでのお話もそうですし、この後のお話もそうですけど、決まりきった答えはありません。その中で、私の中で重要視していることだとか、ピンポイントでこういったケースはこう考えていますという前提で聞いていただければなと思います。

まず成果を発揮するチームのポイントというところで、楽しそうにやっているチーム、みんなが元気なチーム、みんなが発言するチームはこれまで見てきた中で高いパフォーマンスを出していると思います。

会議をやっていても発言がないとか、先輩とか上司に相談しにくいとか、自分の裁量が少ないとか、凝り固まっちゃって、「ちびまる子ちゃん」みたいな「どよーん」みたいなのが、うっすら見えるようなチームは、あまりうまく回っていないかなと思います。

その中でそういうチームをどうやって作るのかというと、別に答えはないんです。私は、仕事ってスポーツと一緒だと思っています。いろいろな観点があるんですけど、ことリーダーに関して言うと、チームの監督をやっている感じ。弱小チームの監督をやらされる場合もあるし、強いチームの監督をやる場合もある。自分が持ったチーム次第で戦い方って変わるんですよね。

例えばサッカーで弱いチームだったら、まず引いて守って、ワンチャン、カウンターで狙う。でも強いチームだったらそんなことはしないですね。抱えているメンバーもポジションも違うし、特徴も違うし、性格も違うので、どのボタンを押したらこの人はやる気出るんだろうかというのも違います。

そういうことを考えると、自分のチーム力、およびメンバーのスキル・経験・キャラ・性格・メンタリティを見ながら、どういうことをやればこの人は上に成長するのかなとか(考える)。いい選手を集めたから勝てるわけじゃないので、チーム力を高める上ではどういうことをするのがいいんだろうと考える。

飲み会も1つですが、飲み会って2日~3日経ったら効果がなくなっちゃうので、違う方法できちんとチーム力を作るということをしていかないといけないと思っています。

松尾:なるほど。本当にみんなそれぞれだから、ふだんから見て、どうしたら今いるメンバーが輝くかを考えて、楽しそうなチームを目指せるといいのかもしれないですね。

「なんか合わない…」部下との向き合い方

松尾:2つ目は「一番やりにくい部下はどんな人ですか?」。

木部:一番はわかんないですけど(笑)。いろいろいますよね。今リーダーやってる方も、これからリーダーになっていく方も、周りを見ると頭に何名か思い浮かぶんじゃないかなって思います。

先ほどの年上(の部下)もそうだし、言っても聞いてくれないとか、発言するたびにネガティブなことを言う人とか。私は今いろいろな顔を思い浮かべながら言っていますけど……。連絡してもぜんぜん返信がないとか。ちょっとしたことで落ち込みすぎちゃうとか、いろいろな人がいます。

どうしたらいいかは先ほどと一緒で、本当に人それぞれ違います。「手厚くケアしてほしい」と思っている人もいれば、私なんて上司からかまわれるのは嫌なんですね。「ほっといてくれ」と思うんです。「入ってくんな」と思うんですよ(笑)。そういう人もいる。

なので、その人がどういうことを望んでいるのかとかいうところで。私はそんなキャラですが、そんなキャラでも、精神的にへこたれている時に声をかけてもらうとうれしかったりもしますし。

当たることもあれば外れることもあって、それをやり続けることでその感度が上がっていったり、外れる回数が減ってきたりするかなとは思います。

松尾:なるほど。ふだんは、自由なほうがいいんですね(笑)。

木部:はい。

リーダー適性は任せてみないとわからない

松尾:ありがとうございます。3つ目の質問です。「リーダーにつくと責任が増えるから避けたいと考える人も少なくありません。そうしたメンバーに対して、どんな支援や育成のあり方が適切なんでしょうか」。先ほどとちょっと似ていますね。

木部:別に育成しなくてもいいんじゃない? って思います。ですが、自分の後釜として成長させたい人であれば、それは然るべき濃度で支援・育成してあげる。

こういう考え方だからどうというわけじゃなくて、リーダーを育成する1つの方法は、自分の仕事をちょっとずつ渡していくとか、その人が今あまり出てない場に、同席からでもいいんですけど、責任を持たせて渡していく。

例えば相手の部長さんとの会議を任せるとか。そういった、今その人がやっている仕事から少しストレッチさせたものをちょっとずつ渡していくことで、できることもあればできないこともある。それって座学で教えてもやはりわからないですよね。

やって「うまくいかないな」という時に、自分で解消する人もいれば、レクチャーしながら手助けする中で、伸びていく人もいます。

今しゃべりながら1人思い出したんですけど、超優秀なんですね。半年ぐらい前から一緒にやっています。

次はマネージャー・管理者クラスに上がっていこうという人で、今回初めて一緒に仕事しましたが、最初リーダーとしては欠点が多かったんです。1on1とかを重ねる中でフィードバックしていったのですが、すごく飲み込みが早くて、びっくりするぐらい成長しました。

つい2ヶ月ぐらい前まではもう少し時間かかるかなと思ったんですけど、この4月ぐらいにやった1on1の中で話したことが彼の琴線に触れたっぽくて、そこでガラッと変わりました。

そういった感じで急激に成長する人もいます。いろいろなことをやりながら成長・育成をしていくのがいいのかなと思います。

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