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「リーダー1年目のマネジメント大全」刊行一周年トークイベント ~「優れたリーダー」を大解剖する夜~(全4記事)

リーダーの“力みすぎ”がチームを壊す 年上部下・静かな退職・やる気のばらつきに悩んだ時の対処法

【3行要約】
・木部智之氏は、力み過ぎたリーダーほどチームを疲弊させると指摘し、まず自分の緊張を客観視する必要があると強調しました。
・同氏は、年上部下や“静かな退職”などの温度差には組織の「2:6:2」を前提に個別最適で向き合うべきだと述べました。
・また同氏は、次のリーダーに仕事を渡して育成することを勧め、最終的には仕組み化でリーダーが“暇”になれる状態を目指すべきだと結論づけました。

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力み過ぎるリーダーがチームを疲弊させる

松尾美里氏(以下、松尾):それだけ蓄積があるんですね。私もまだまだマネジメントで悩むことが多数あるんですが、今日ここにいらしている方って、マネージャーとしてさらにチームを良くしたいとか、成果を出したいと思っている向上心がある方だと思います。

そういうやる気があるマネージャーほど陥りがちな状態とかやりがちな失敗とかはあるんでしょうか。

木部智之氏(以下、木部):パターンはいっぱいあると思うんですけど、よく見るのが、肩肘張りすぎてガチガチで、下のメンバーが疲れちゃうケース。私の経験の中では、わりと早くリーダーになって「よし、次もがんばるぞ」と言っている人に多いパターンかなと思います。

私も年数重ねる中でリラックスしてリーダーができるようになりましたけど、そうじゃない時って、やはり不安もあるし、「がんばろう」という気もある中で、力入りすぎちゃって、下のメンバーが疲弊してしまうケースはあるかなと思います。

自分を客観視しながら、力入りすぎちゃいないかを見るといいかなと思います。

松尾:「引っ張っていかなきゃ」とか「みんなを育てなきゃ」とか、思いがありすぎて、がんばりすぎてしまって、空回りするじゃないですけど。

木部:そうです。

年上部下との関係は“気まずさ”の解消から始まる

松尾:他にも、特にマネージャーになりたての時に、「こういうところでよく悩んでいるなぁ」とかあるんでしょうか。

木部:年上のメンバーに対しては絶対悩みますよね(笑)。間違いなく。それは今でも悩みます。

松尾:年上のメンバーをマネジメントした経験がある方もいるでしょうね。そういう時は、どんな点を意識して接しているんでしょう?

木部:難しいですよね。

(一同笑)

まず正直、お互い気持ちよくないですよね。その気持ちよくない具合をいかに解消していくかは、相手にもよりますけど。一番シンプルなのは、リスペクトして接することです。

でもそうじゃないケースも私は経験していて。先ほどお話しした600人をマネジメントしていた時は、そんなことを言っていられない状況だったので、年は関係なくガンガンやっていました。

松尾:年齢よりも、その人の持っている強みや専門性に敬意を払ってフォーカスすることも大事だったりするんでしょうか。

木部:そうですね。でもそれはちょっときれいごとかなという気はしています。

松尾:おぉ~。

木部:上がっていく人は優秀であるということで、年上でそうじゃないということは反対なわけです。なのでリスペクトする時に何をリスペクトするのかというのは、まぁいろいろあるかなと思います。

松尾:なるほど。その人のモチベーションや性格も多様ではあるから。それで「ちょっとこの人は接しにくいなぁ」みたいな人とかもどうしてもいますよね。

木部:事前にいただいた質問の中に「モチベーションが低い人をどうしたらいいですか」というものがありましたが、年齢が上がって普通の役職にいる人は、とかくそういうことが多いかなと思います。

“2:6:2の法則”で考える、モチベーションのばらつきとの向き合い方

松尾:そういう時は、どうやってモチベートするんでしょう。

木部:人にもよりますけど、たぶん僕はモチベートしないですね。本にも書いていますが、2:6:2という組織の概念があるんですよね。働きアリを観察していた人が発見したもので、2割、めっちゃ働く働きアリがいます。6割が普通です。2割はサボります。私もいろいろな組織を経験してきましたが、一緒です。例えば、下の2割を外します。そうするとどうなるかというと、上の6割から(次の)2割が生まれるんですよ。

松尾:これ、不思議ですよね。

木部:不思議なんですけど、そうなんですよ(笑)。理屈も何もなくて、なぜかそうなる。「組織にはそういう人がいるもんだ」と思ってマネジメントをしたほうが、自分も余計なストレスを抱えずにやっていけるかなとは思います。

松尾:そうか、個々人じゃなくて、組織の構造上の問題と捉える。まずそういうもんだと受け入れると、また違う。

木部:むかし一緒に仕事していた先輩が、自分を卑下して「俺は下の2だ」と言っていたんですよ。その人、別に下の2じゃないんですけど。「下の2がいなくなったら、どうせ下がまた落ちてくるから、下の2にも役割があるんだ」とか言っていましたけど。

(一同笑)

僕、頭の中にその印象があるので、組織とはそういうもんだという感じなのと、こういう場だから言えますが、そういう2割の役割はそういうところなのかなと思いながらやっています。みんながハイパフォーマーなチームなんてあり得ないので。

松尾:そっかぁ、ちょっと理想を描きすぎていたのかも。

(一同笑)

でもがんばりたいしなとか、ちょっといろいろ考えてしまい(笑)。

木部:2~3人のチームとか、4~5人のチームだとそういう傾向は生まれないかもしれないですが、人数が増えてくると間違いなく生まれてきます。

“静かな退職”をどう見るか 価値観の多様性とアサインの現実

松尾:そうですね。大規模だとどうしてもね。ぜひそこに絡めて聞きたいなと思ったことがあります。経営層とか、より上位職の人と現場のメンバーの板挟みに遭うことがすごく多いと思っていて。

「チームとしてどんどん成果上げていこう」と思っているけど現場のメンバーは、「いや、そこそこでいいです」と言ってきたり。最近は静かな退職というんですかね、「本当に最小限しかやりませんよ、残業もしません」みたいな人もちょっと増えているかと思うんですけど。そういう状況に対してまずどうお考えですか。

木部:スポーツのトッププロ選手はめっちゃ稼ぐじゃないですか。でも、(そこまで)いける人は、限られているじゃないですか。

松尾:そうですね。

木部:違う人もいるかもしれないですが、世の中の人の95パーセント以上が会社員だと思うんですね。この95パーセントの人がおしなべてやる気があるかというと、そうじゃないと思うんですよ。価値観が違いますし。

最低限の給料で自分の好きなことやればいいと思っている人もいるし。家族と楽しむことが大事だという人もいるし。そういう人たちの集合体が、会社だと私は思っているので。定時になったら帰る人もいるし、逆にそうじゃない人もいるしなぁと思うので、静かな退職も「まぁ、そうなんだ」と思いながら私は見ています。

次のリーダーを育てるためには“自分の仕事を渡す”が最短ルート

松尾:個人的にも、価値観の違いで、良い・悪いではないのかなと思うんですけど。それでもやはりプロジェクトなり事業なりを成長させなきゃいけないことがあるじゃないですか。そうなった時にこの人には成長してもらわなきゃ困るなとか(あると思います)。全体としてのアサインとかで調整していくんでしょうか。そこはどうしているんでしょう。

木部:みなさんがこれから先、次のステップとか、もっと上の役職に上がっていく時に、一番重要なのが、今の自分のポジションに就く次の人を育てることなんですね。

私を厳しく育ててくれた先輩がいて、この人はもうどこかの社長をやっているんですけど。僕がやっていた仕事に対して「お前はいつまでそんなことやっとるんや。それを誰かに渡さんと、いつまでたっても上にあがれんぞ」と言われたのが衝撃的でした。

自分の仕事を誰かに渡さないと自分は次の仕事にいけないので、下の人にやる気があるかどうかも含めて、自分のバトンを渡す人を誰にしようかは考えないといけないんです。選べるほど潤沢にいればハッピーですけど、なかなかそうもいかない中で何人かを見ながら、育てる。

思うように育たない人もいるし、意外と、サブリーダーポジションに置いたら光る人もいたり。これ、おもしろいものでサブリーダーで輝ける人を「じゃあ次リーダーしてみよう」としても、リーダーになった瞬間に輝けない人もいるんですよ。

松尾:そうなんですね。

木部:私は600人まで見ましたけど、5人、10人のリーダーマネジメントと20人のマネジメント、50人、100人、それ以上……ここまでできても、じゃあ次もできるかというと、やり方がぜんぜん違うのでまた違うんですね。

10人マネジメントできた、リードできたから、じゃあ次は30人のチームを任せてみようとなった時に、できる人もいれば10人が限界という場合もあります。

松尾:それは「この人ならなってくれそうかな」って人を日頃から観察しているんですか。

木部:はい、そうです。

次世代リーダーをどう見極め、どう育てるか

松尾:ちなみに見るポイントってあるんですか。

木部:いろいろなポイント見ますね。まず、仕事はどうやっているかとか、リーダーポジションなので、人をどう動かしているかとか。例えばプロジェクトを任せられるのかとか、事業として組織を金とともに任せられるかという感じで見ています。

例えば今の私の場合、いま一緒に仕事をしている次のリーダーは、おそらく順調に育つだろうなと思っています。ただ、その彼が次にポジションを引き継ぐ予定のリーダー候補が、今少し苦戦していまして。

彼には得意な領域と不得意な領域があるのですが、その不得意な部分は自分でもわかっているので、そこを補うために、一緒に提案活動をしながらビジネスを作っていく、ということを個人体験として今取り組んでいます。

“暇”をつくれる仕組み化こそ理想のリーダー像の到達点

松尾:そうですか。じゃあ自分の後任をいかに育てて、自分は(仕事を)手放して、次のステップに行けるように整えていくことがとても大事になってくるんですね。

木部:そうなんですよ。確か本にも「『このチーム、この組織は俺がいないとダメなんだよな』って言っている人は残念です」と書いたような気がするんですけど(笑)。そこは自慢するところじゃないです。「俺がいなくても、私がいなくても、このチームは回っているんだ。俺はいなくてもいいじゃん。だから次のポジションいくよ」という状態を作らないといけない。

私はリーダーの究極の姿は、暇だと思っているんですよ。リーダーが入らないといけないのは、メンバーが対処できないから。

松尾:そうか。

木部:メンバーが対処できるように育っていけば、報告ぐらいしか来ないので、リーダーってやることがないんですよ。相談が来たりトラブルが起こった時になにかしないといけないとなると、リーダーが忙しくなる。

私も組織を持って最初バタバタしていて、「あぁ、暇になってきたな」と思うと、次の仕事が来ちゃうんですね。

(一同笑)

またわーっと立ち上げて、巡行運転になって「暇だな」と思ったら次の仕事が来る感じです。理想は暇なんですけど、ずっと暇なことはないんですね。

松尾:また次(笑)。

木部:同じ仕事でバタバタするんじゃなくて、新しい仕事でてんやわんやしたほうがいいんじゃないかなとは思いますけど。

松尾:そのほうがどんどん新しい挑戦ができますよね。

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