【3行要約】
・IBM時代、600人規模の炎上プロジェクトで“火消しPM”として呼ばれ続けた木部智之氏が、修羅場の経験を語りました。
・リリース直前に請求システムの致命的な欠陥を見抜き、3ヶ月で再構築すると決めた判断の裏側について話しました。
・外資・日系・コンサルを横断してきたキャリアと、現場で磨かれた判断力の背景を語りました。
600人規模を束ねた“火消しPM”のキャリア
司会者:それではさっそくお二人にご登壇いただきましょう。木部さん、松尾さん、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
あらためてお二人から自己紹介をいただければと思います。まずは木部さんからよろしくお願いいたします。
木部智之氏(以下、木部):みなさんこんばんは。木部です。よろしくお願いします。
今デロイトトーマツコンサルティングという会社で仕事をしています。3社目で、大学出て最初にIBMという会社に入社しました。(スライドを示して)ちなみにこの丸の中に書いてある数字は、これまで私がこの環境の中でマックスでマネジメントした人数です。

IBMの時は主にシステム開発をやっていました。(スライドの)下に書いていますが、Executive Project Managerという、PMの中で一番上のランクとグローバルで認定される最高職位のシニア・コンプレックス・プロジェクトマネージャーをやる中で、システム開発大トラブルプロジェクトで600人見ていました。
そこから日系のパナソニックという会社に移りました。そこでは、プロジェクトだけじゃなく、新規事業もやりました。入社する前は、私もBtoCのイメージが強かったのですが、BtoBの、いわゆるテクノロジーを使ったソリューションを立ち上げるといったところで参画しました。
一区切りついて、今はデロイトで仕事をしています。ここでは、主にクラウドに関するビジネスをやっています。
今日はリーダーの話が中心なので、多くの人数をマネジメントしてきた経験と外資系と日系での経験をみなさまにお話しできると思います。よろしくお願いします。
本の要約で“悩みに光”を当てる編集者
司会者:木部さん、ありがとうございます。続いて松尾さんよろしくお願いします。
松尾美里氏(以下、松尾):本の要約サービス「flier」(フライヤー)で本の要約を制作したり、インタビューをしています、松尾美里と申します。今日はこんな本に囲まれてリラックスできそうな場所で、私自身もすごく助けられた本の著者にインタビューできるというありがたい機会に恵まれて、本当に感激しています。
みなさんと一緒に、この本の中身とか、マネージャーならではの悩みを解決するヒントを一緒に探っていけたらうれしいなと思っています。
私は本がひたすら大好きで、特にビジネス書が好きで、少しでも本を手に取っていただけるように魅力を形にするということをしています。
みんなの前でインタビューするのは初ですが、ぜひ木部先生にいろいろなお話を聞いていけたらなと思っています。よろしくお願いいたします。
最終フェーズで見えた致命的欠陥 請求システムを3ヶ月で再構築
司会者:さて松尾さん、今回はインタビューかつ本書の要約者という立場で、どんどん本書の魅力や木部さん自身の考え方について深掘りしていただきたいと思っています。
さっそくですが、最初のテーマはこちらです。(「木部先生のご経験について」)では、松尾さんよろしくお願いします。
松尾:まず木部先生のご経験を少しうかがった後に、この本の魅力を掘り下げて聞いていけたらいいなと思っています。
『リーダー1年目のマネジメント大全』に加えて、過去の著書『入社1年目のビジネススキル大全』と、『複雑な問題が一瞬でシンプルになる 2軸思考』という本も、私は2017年ぐらいに読んでいて、念願の対面が叶いました。
これまで600名以上のプロジェクトマネジメントを経験されている中で、どんなプロジェクトが多かったとか、こういう悩みがあったよとか、そんなところから簡単にご紹介いただけますか。
木部:デロイトに入ってもう少しで3年になります。今トラブルプロジェクトはあまりありませんが、それまでトラブルに関わったことのない年はありませんでしたというぐらい、トラブルプロジェクトの炎上の火消しばかりやってきました。
松尾:そうだったんですね。
木部:自分でトラブらせたわけじゃないんですけど、途中から突っ込まれて。まぁ、突っ込まれてという表現も、もうネガティブですよね。
(一同笑)
好きでやっていたわけじゃないんですけど、ずっと火消しばかり。最初に入って、そこで(対応)できたので、その後もそういうラベルが貼られてしまって、何かあったら呼ばれるという。(火消しを)ずっとやっていました。
松尾:もう困った時の木部先生って感じだったんですね。
木部:はい。ありがたいことに(笑)。
松尾:そうでしたか。差し支えない範囲で、これまでで一番「こういうの大変だったな~」という難関プロジェクトとか、「こういう時にやっぱプロマネの力が問われたな~」みたいな経験はありますか。
木部:今、瞬間的に思い出したのが、先ほどお話しした超トラブルプロジェクトです。カードを使ったら、データがたまって、毎月明細が送られてきて、銀行(の口座)からお金が落ちますという古いクレジットカードの基幹システムを、3社まとめて1個にするという、どう考えてもうまくいかないプロジェクトを7年ぐらいやっていたんですね。
中に20チームぐらいあって、トラブったところを順次渡されて、全部火消ししてきたんですが、最後に請求という一番根幹にあるシステムを渡されました。それがもうぜんぜんダメだったんですね。
松尾:そうだったんですね。
木部:ぜんぜんダメで、それがきちんと動かないとサービスインしないという話がありました。それをフェーズの後ろのほうで渡されて。ひっくり返してみたら「こりゃダメだな」と思って、作り直す判断をしたんですよ。(作り直すと)決めて。3ヶ月で作り直しました。
松尾:3ヶ月。
木部:0から作り直したわけじゃなくて、幹となるものだけを残して、後のごちゃごちゃしたところを全部取っ払ってシンプルに作り替えました。結果、できたんですが、もう怖くてしょうがなかったです。本当にできるのかなぁ(って思っていました)。
この最後のフェーズは、2週間ぐらい休みなしでやっていましたが、それが一番すぐ頭に浮かんだ経験ですね。
松尾:そうだったんですね。眠れたのかなぁと思いますけど(笑)。
木部:寝つきは悪かったですね。家に着いたのは1時とか2時の状況が多かったです。今ではね、そんなことできませんけど(笑)。当時は、ブラックな時代で、それでも4時とか5時にふっと目が覚めたりしましたね。