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事業成長に宗教 (パーパス) は必要か(全4記事)

日本のパーパス経営は99%が失敗? 入山章栄氏らが探る“社員が熱狂する企業”のメカニズム [2/2]

日本のパーパス経営の99パーセントは失敗している?

はやまり:お二人の関係性みたいなところを、ちょっとみなさんにお伝えしたいんですけど。

松田:なんで今、入山先生とご一緒しているかというと、実は僕、2025年の3月まで入山先生のもとで、研究をガチでやっていました。30本以上の学術論文から理論構築をして、いろんなすばらしい方を入山先生に紹介していただいて。楽天さんとか、ロート製薬さんの超偉い方にもインタビューをして理論を構築しました。それで4万字ぐらいの論文を発表したんです。

それで、企業を熱狂的な宗教にする「パーパス・ディープニング」というフレームワークを開発しました。今回は宗教がテーマなんですけど、入山先生の指導のもとで一緒に開発させていただいたので、こういうところをお話しできればなと思っています。

日本でも「パーパス経営」みたいなことが言われているんですけど、僕はもう99パーセントの会社が失敗していると思っているんです。

入山:ガワしかやっていないからね。

松田:いやぁ、そうなんですよ。「イノベーション」というワードがパーパスに入っている会社は、もうほぼ100パーセント失敗していると思っているんです。でも、海外にはGoogleとか、スターバックスとか、いわゆる宗教的なファン、信者と言われるようなファンを抱えているブランドがいっぱいあるじゃないですか。

「これは何が違うんだろう?」ということで、すごく議論もさせていただいてたどり着いた答えが、やはり熱狂。みんながパーパスに熱狂しているところがあります。

自分の会社に熱狂しているのか

入山:みなさんはどうですか? 組織、会社で働いている方がいっぱいいると思うんですけど、「自分の会社に熱狂しているか」という話ですよ。楽天もなんだかんだ言われているけど、なぜか奇跡のリカバリーを見せているじゃないですか。

楽天が携帯に投資して、僕はもう正直ダメだと思っていたんですよ。テレビでも「KDDIが買収するんじゃないですか?」とか言っていたんですよ。そうしたら、奇跡のリカバリーを見せて。

あまり知られていないんですけど、僕の友人が楽天の幹部と飲んでいたら、「で? 今、携帯は何を使っているの? 今日から楽天に替えてください」と言われて。役員レベルでクソ地味な営業をしているんですよ。

はやまり:えー!?

入山:だから、僕はよくわからないけど、三木谷(浩史)さんの周りにいる人たちは、やはり信者なんですよ。だから奇跡の回復を見せて、今、どうにかなりそうになっているわけですよ。

松田:インタビューした方も「もう、楽天の宗教を作っていなかったら、このモバイルは乗り切れなかった」と、やはり同じことをおっしゃっていましたね。

はやまり:えー!? でも、そんな宗教のように、みんなが熱狂する会社のかたちは「楽天だからできただけじゃないのか?」と、私的にはちょっと思うんですけど。

入山:そこで、松田くんが!

松田:(笑)。

入山:フレームワークを考えたわけですよね!?

「うちは、宗教法人Googleです」

松田:いいお膳立てができましたね。ありがとうございます。何をやったかというと、パーパス経営で成功している会社のメカニズムを構造化してみました。(スライドを示して)例えばGoogleのパーパスがこれなんですけれども。

「世界中の情報を整理して、世界中の人がアクセスして使いやすくする」というところを、みんなめちゃくちゃ信じているんですよ。それで、Google Japanの方にもインタビューしたんですけど、「うちは、宗教法人Googleです」と言っているぐらい……。

はやまり:本人が言うんですね。

松田:はい。信じていて、熱狂しているんですよ。それによって、既存の事業が深まり、新しい事業が生まれていく。例えばGoogleだと、検索事業とか広告事業がベースにあるんですけれども、「地図も情報じゃん」「俺らが整理しなきゃ」って、Google Mapsができるんですよ。

はやまり:あー、なるほど。

松田:それで「空間も情報じゃん!」と言って、Google Earthができるんですよ。

はやまり:へー!

学ぶ社員を熱狂させる企業のメカニズム「SECIモデル」

松田:それで「それを貯めなきゃ!」と言って、Google Cloudができていくみたいな。唯一無二のパーパスに熱狂しているからこそ、唯一無二の事業が生まれていって、だからこそ採用だったり、事業だったり、IRがうまくいくメカニズムなんですね。「これを人為的に再現できないか?」というところで、1年間ガッツリ研究していたんですよね。

そのベースになっているのが、SECIモデルというものです。僕は先生の講義でこの理論と出会って、「まさにこれだ!」となったんですけど。

入山:これは、日本では間違いなく、もっとも世界に通用する経営学者だった野中郁次郎先生という一橋大学の名誉教授が作ったモデルで、いまだに世界でものすごく広がっているんです。もうこれからね、このSECIモデルの時代なんですよ!

野中先生は2025年に亡くなられちゃったんです。だからもう、代わりにマツケンに広めてもらうしかないんですよね。

はやまり:松田さんにかかっている。

松田:はい。入山先生はけっこう(野中先生と)交流もあられたんですが、僕はお会いしたことがないんです。今はその使命感を背負って、やっています。

教義化フェーズと信仰化フェーズ

松田:これがどういう理論かを説明すると、組織の中には言葉になっている形式知と、言葉になっていない暗黙知がある。その大半が暗黙知で、いろんな人の中に眠っている。この暗黙知を共有する。

入山:(スライドを示して)これはSが共感のプロセスですね。

松田:それを言語化して、みんなが使える形式知にしていく。さらにそれをマニュアルや、みんなが使えるかたちにして実行することで組織の知識が深まっていく。それが、このSECIモデルなんですね。これをベースにして僕が作ったのが、このパーパス・ディープニングというフレームワークです。

今、教義化フェーズと信仰化フェーズという、2つのフェーズに分かれています。

入山:すみません、ちょっと落ち着きがないので立っちゃうんですけど。

はやまり:(笑)。

入山:1個前のスライドに戻してもらって、僕のほうで学術的な説明をちょっとフォローすると、僕は野中郁次郎先生と親交があったんですね。それで年1回ぐらいお話しをさせていただいて、とても尊敬していたんです。野中先生の悩みは、こんなにすごい理論なんだけど、思ったより浸透していない。

はやまり:なるほど。

SECIモデルをより実践的に整理

入山:例えばエーザイさんとか、野中先生の信望者の企業はすごく使っているんですよ。だけど、これが意外と、企業が普通にパッと使うフレームワークになっていないというのが、野中先生のお悩みだったんじゃないかなと思っています。

それで、マツケンといろいろ議論をしている時に、マツケンを中心に築いたのが(次のモデルです)。

野中先生のS、E、C、Iはグルグル回るプロセスなんですね。共感して、それを言語化して、それでマニュアル化するのがCで、体に落とし込んでいく、行動に落とし込んでいくのがI。野中先生は「S、E、C、Iだ」と言っているけど、実はSとEでワンセット、CとIでワンセットの2つにすればいいんじゃないかと。4つはやりきれない、多すぎなんですよ。

はやまり:確かに。

入山:SとEを「教義化フェーズ」、CとIを体に落とし込むほう、本当の宗教として落とし込んでいく「信仰化フェーズ」に分けると、やることは2つでいい。

はやまり:めちゃくちゃスッキリしましたね。4つあって、それこそ「みなさん、覚えきれないんじゃないかな?」と思っていたんですよ。

松田:そうなんですよ。ここをすごくシンプルにして、左側の「教義化フェーズ」で個人の中で眠っているものを引き出して、パーパスとしてかたちにしていく。そのあとに、できたパーパスを組織にカルチャーになるまで浸透させていく、という2つのフェーズに分ける。

組織の中で実行していくには「2つにしたほうがいいんじゃないか」ということで作ったフレームワークです。

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