黒字化はできていないが期待値が高い場合のM&A
田村:ちょっと次のテーマに移ります。次は「多角化戦略を成功させる仕掛け・仕組み」ということで。コングロマリット(他業種にまたがる巨大企業)として非常に有名なDMMさんですが、もちろん社内で作ることもそうですが、M&Aにも取り組まれていますよね。もしよければそんな事例についても、おうかがいさせてください。
亀山:実を言いますと、M&Aはそんなにうまくないです(笑)。失敗例がたまに記事になって載っていますが、M&Aはなかなか難しい。逆に今ある事業と同じものをくっつけるのはけっこう楽。仮にうちがオンラインクリニックをやっていたとして、同種の2番手、3番手がいたら、そこを買収するとか。
例えば、うちでオンラインサロンの事業をやっているけど、似たような業種の会社をくっつけました。それで市場の3割・3割をくっつけて6割になるとか、そういったパターンはけっこううまくいくケースかな。
田村:なるほど。わりとじゃあシナジー重視で企業を見ていて投資や買収をする。
亀山:あとは、まったく新しい事業の会社を買う場合も100パー買うと、だいたい買われた側はやる気をなくしたり、辞めることも多い。そうなったときに社内で巻き取れるものであればやるかな。
例えば、よく企業でゼロイチとかイチジュウといいますが、僕から言えば黒字化するところまでが10だとしましょうか。10からさらに大きくスケールするのがジュウヒャク(10 → 100)だとしたら、10までいっているなら、まだその部分は巻き取りやすい。
ただ買収になる時は、まだ5か6あたりで「今後10になる可能性はあるんだけど」という時だと思うので。「まだ黒字じゃないけども、今の会員数の伸びなら、3年後に黒字になるんじゃないか」というような案件のM&Aがけっこうやっかいで、(黒字に)ならないケースがけっこうある。
最近だとそういう可能性がある場合、うちは51パーセントだけ買う。残りの49パーセントに関しては、「自分たちの計画どおりいった時、この金額になるよ。それが何割しか達成しなかったらいくらだよ」という話になります。3年か5年かわかりませんけど、そういった感じで買収してみる以外に手はないかなというのが、最近出た結論です。
バックオフィスが弱くなりがちなスタートアップ
田村:なるほど。すごく学びが深いです。その時に、今51パーセントを持たれるという話がありましたけど、担当者としてどんな方を付けられるんですか?
亀山:担当者は担当役員とか、管理系では財務とか法務とか人事は付くんだけども、事業部長的なことは買った会社の社長にやってもらいます。
田村:いろいろな人が関わるんですね。
亀山:というのは、やはりうちも他の事業がある以上、法的に違反されたら困るし、財務上はちゃんとこっちで見なきゃわからなくなるし。あと、企業イメージ的な部分で炎上しないように広報がサポートするとか。そういったところはやりますけど、あとは事業の方向性は基本、その事業責任者が全部見る感じかな。
だいたいスタートアップって、バックオフィスといわれるところが弱いのよ。勢いはあって、「営業をがんばる」とか「開発をがんばる」とか言っているんだけど、守りが弱いから。途中で「金がなくなった」とか「炎上した」とかっていうことは、けっこうあるパターンかな。
田村:なるほど。「DMM VENTURES」も作られて、スタートアップへの投資をされていますよね。ここも最終的にはグループインするような企業を探すという目的でやられているんですか?
亀山:ああ、あれはもうやめた。
田村:失礼しました。情報がちょっと古かったかもしれないです。
亀山:初めに5パーセント・10パーセントでシード期の企業への投資をやって唾を付けておいたら、M&Aとかも話が来やすいかなとか思ったんだけど、何にも関係なかった。
0パーセントでもM&Aの話は来る時は来るけど、5パーセント・10パーセントを入れておいても来ない時は来ない。所詮キャピタルゲインを狙うしかなくなる。キャピタルゲインを狙うというのは何かというと、結局、自分たちに金はあるけど稼ぐ力がないという時に、株だけ純投資で投資しておいて、IPOで当てましょうという話なんだけど、それは投資家のVCたちがやればいい話であって。
やっぱり事業をやっていくのがうちらの本分というか得意なので、そういったキャピタルゲイン狙いみたいなかたちはやらないということで、全部撤収しました。
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