スタートアップ業界の注目領域、日本が誇る成長産業「エンターテインメント」のマクロ分析(全3記事)
『ポケポケ』のヒットで年間約4,000億円の売上を達成 IPビジネスの成功例に見る“グローバルに届ける力”の重要性 [2/2] コピー リンクをコピー
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エンタメ投資の難しさはボラティリティ 田中 :例えばグッズ1つを取っても、グローバルで売るってものすごく大変です。仮に日本国内で適切に売るのでもけっこう大変です。当然、今はゲームも「Steam」やiOS、Androidがあるけれども、その中で負けずに(グローバルでゲームを)出すという、すごく大変なところをやっているプレイヤーがいるのもすごいなと。 まさに先ほどの言い方だと、ポケモン社さんや集英社さんというすばらしいIPホルダーがいます。その中で、やはりバンダイナムコさんみたいな、それを世界に届けられるプレイヤーも国内で揃っています。それを「一気に押し出すぞ」という企業連合を緩やかなライセンス関係で作れているって、僕はちょっと他に類を見ないですよね。中山 :ディー・エヌ・エーに隠れた資産があったということですよね。結局この10年かけて任天堂とやってきたタイトルが4、5本あったし、『ポケモンマスターズ』だってめちゃくちゃ(売上が)良かったわけじゃない。なんだったらngmoco社を買ったりとか、いろいろ経験値を高めていたからグローバルに出せたとか。田中 :そうですね。これはもうエンタメに向き合う方は共感していただけると思うんですけど、やはり投資そのものがあまりうまくいかないパターンは絶対にあるんですよね。なぜならばエンタメってボラティリティ、いわゆる当たりはずれが激しすぎるし、成果が出るのにけっこう時間がかかる。 要は「今、売り上げているものをすぐに買えばいい」という話はあるんですけど、それを育て続けるのって意外と時間がかかるんです。その中で、失敗しても脈々とその会社の中にあるものがすごく強い。 実は日本企業のIPホルダーさんはけっこう非上場だったりします。なので変に(業績を)問われずに適切に育て続けられたから今があるという言い方もできるかな、と思ったりしますね。 エンタメ分野でアメリカの勢いに陰り? 中山 :でも、そこに疑問があるというか。ここで僕も少し話をシフトします。10年間で準備や蓄積した会社が今、海外で勝っていると思います。けれども、最近やはり(中国の)湖南省や、インド、(アメリカの)ラスベガスなどいろんな国を見てきたんですが、「アメリカがけっこう劣化しているんじゃないか?」という説が僕の中ではあって。草野 :あー、はい。中山 :というのは、例えばラスベガスにはだいたい年間で4、5,000万人のお客さんが来るんですけど、けっこうドメスティックのお客さん(が多いところ)なんですよ。「Sphere(球体型のエンターテインメント施設)」とかいろいろあるんですけど、海外から(来るの)は400万人なんですよね。9割は国内客で成り立っているのがカジノビジネスなんです。 それでちょっと調べたらロサンゼルスも変わらないんですよね。5,000万人来ていて、グローバルから来ているのは4、500万人とかそんなものなんです。実は京都って、毎年5,000万人来ているんですけど、1,000万人が外国の客なんですよね。だからめちゃくちゃ大きい投資があってすごいことをやっているように見えるんだけど、コロナの後はカジノがけっこうへたっていて、潰れたところもある程度はあるんですよね。 もちろん持ち直してはいるんですけど、(以前の)3分の2ぐらいのイメージです。日本は意外に減らずにもっている状態だから相対的にいいんですけど、中国はもちろんこんなことをしながらすごく上がってきている感じがあります。(質問としては)「アメリカは市場として見ていていいんだろうか?」ということです。エンタメの文脈でめちゃくちゃ難しい問いを投げちゃっているんですけど。草野 :難しいですね。うーん……。 AIなど新興分野に注目が集中する傾向 中山 :ロスに行ったり、『Off Topic』で「HypeBeast(ストリートファッション情報などを扱うオンラインメディア)」の事例を聞いていると、相変わらずとんでもないサイズなんですが。時価総額が5ビリオンとかでしたっけ? めちゃくちゃ儲けている事例はもちろんあるんですけど。 けれども、やはり日本から見た時に相対的な位置づけは、「海外、ニアリーイコール、アメリカ」よりは「中国やインドのほうがまだ儲かるんじゃないのか?」と、作り手からすると迷いが生じるような事例を、この1年ぐらいでたくさん見ましたね。田中 :けっこうスタートアップ環境で見ても、実は米国って絶好調というわけではないですよね?中山 :うんうん。田中 :AI以外はけっこう静かだなという印象をお持ちですよね?中山 :あー、そっか。何かが1つ変わった時に、みんながそこにガッとシフトするからすごいように見えるんですかね。アメリカや中国にもそういうところがありますけどね。田中 :そうですね。 プラットフォームは強いが、IPはどうか 中山 :逆にアメリカで、コンテンツカンパニーでグッと上がっているところってあったりするものなんですかね? すみません、それは僕が答えるべきなのかもしれないですけど。田中 :これは先ほど裏側でも話していました。草野さんはあまりめちゃくちゃコンテンツを見ているわけじゃないと思うんですけど、例えば「Roblox(オンラインゲームのプラットフォーム)が最近すごいですね」みたいな話はあったじゃないですか?草野 :はい。田中 :そういう意味だと、アメリカのスタートアップないしはエンターテインメント産業って、放送局やプラットフォームは絶好調というか、むしろそこしかないです。けれども、まさにディズニーの不調が象徴的ではあると思うんですけど、中身のイメージがあるところって今はそんなにないんじゃないかとは思うんですよね。草野 :確かにそうですね。プラットフォームが強くて、その中で経済圏ができているのは実現できていると思うんですけど。中山 :Robloxがすごいゲームを作ったというよりは、プラットフォームですもんね(笑)。「今、『Grow a Garden』が流行っていますよ」「(最大同時接続ユーザー数が)数千万人いっています」という状況だけれども、確かにゴリラのやつ(『ゴリラVSヒューマン』ほか)とかも、どこが作ったのか、ちょっと作り手はわからないです。 続きを読むには会員登録 (無料)が必要です。
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