【3行要約】
・日本発のエンタメビジネスがスタートアップ投資の新たな焦点となっています。
・エンタメ社会学者の中山氏は「日本のキャラクターIPは他国が不調な中で相対的に評価が高まっている」と指摘します。
・近年はゲームファンドやエンターテインメントコンテンツファンドなど、エンタメ分野に特化したファンドも注目されています。
日本が誇る成長産業「エンターテインメント」のマクロ分析
草野美木氏(以下、草野):まず自己紹介をさせていただくということで、私から。オフトピック株式会社の草野美木と申します。よろしくお願いします。ふだんはポッドキャストの制作など、いろいろしています。今は『Off Topic』という、アメリカのテックやビジネス、カルチャーの話をするポッドキャストをやっています。よろしくお願いします。
(会場拍手)
田中翔太氏(以下、田中):「『Off Topic』を聞いていますよ」という方はどのくらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
草野:わー!
中山淳雄氏(以下、中山):意外に少ないですね。2、3割ぐらい。
田中:IVSだったら全員手を挙げるかなと思ったんですけど、エンタメの方々なのでもしかするとあまり知らないのかもしれない。
草野:ありがとうございます。ぜひポッドキャストで『Off Topic』を検索して聴いていただければなと思います。
『キャラクター大国ニッポン』著者の中山淳雄氏が登壇
中山:エンタメ社会学者の中山と申します。僕も(IVSの登壇は)今回で3年目なんです。IVSはいつもNFTとWeb3の話ばかりでしたが、(IVSの運営が)「これからはエンタメです!」っていきなり言い始めて、ついに本業で呼ばれましたね。「Anime Expo」があるこのタイミングによく設定したなと。
一応、ブシロードやバンダイナムコスタジオにいて、キャラクターの経済圏を分析していました。これはちょうど先月発売したばかり(の『キャラクター大国ニッポン』という書籍)で、『ドラゴンボール』や『ゴジラ』『アンパンマン』といった日本IPがどうやってできてきたのかを分析している学者です。今日はちょっと楽しくグローバルなエンタメの話ができればと思います。よろしくお願いします。
草野・田中:お願いします。
(会場拍手)
田中:ディー・エヌ・エー時代は直接絡んではいないんですけど。
中山:そうですね。一瞬の接点があるぐらいの感じで。
田中:あとはブシロードに在籍されていた時に、知り合いのスタートアップを伴って投資・協業のご相談にお邪魔したのを思い出しました。
中山:謎の会社、(株式会社)バカー(笑)。
田中:(笑)。インディーゲームブームのある種の始まりを知っている方もいらっしゃるかと思います。バカーは第2次、第3次ぐらいの、ブームの火付け役かもしれないです。
中山:あれは2015年、2016年ぐらいですもんね。
田中:はい。あれで一緒にアニメを作ったりするのが盛り上がった時期でしたね。ぜひよろしくお願いします。
中山:よろしくお願いします。
ディー・エヌ・エーのコンテンツ領域で活躍
田中:田中翔太と申します。今、ディー・エヌ・エーの中はちょっと特殊で、エンターテインメント開発事業本部が、いわゆるエンターテインメントの新規事業部門なんです。私はもともと本当にソーシャルゲームの開発者からキャリアを始めていて、みなさんもご存じかもしれないですが、「mobage」の『怪盗ロワイヤル』を作っていました。
その後にIPもののゲームのプランナーとして仕事をして、アニメのプロデューサーをして、という流れで、いわゆるアニメやエンタメの新規事業部門というのがエンターテインメント開発事業本部になります。
その下が、AIイノベーション事業本部戦略投資統括部オープンイノベーション推進部という、噛みそうになるんですけども、こっちがいわゆる投資部門です。AIの部門ではあるんですが、AI以外のファンドへのLP出資や直接投資を担当しているので、エンターテインメントとスタートアップのどちらも兼務していると。
ディー・エヌ・エーはけっこういろんな会社さんとジョイントベンチャーを作らせていただいています。その中で集英社さんと一緒に立ち上げたジョイントベンチャーでは主に新規事業を中心とした執行役員をやらせていただいています。今日はよろしくお願いいたします。
草野・中山:お願いします。
(会場拍手)
中山:たぶん、ディー・エヌ・エーで今、一番コンテンツに近い人ですかね。
田中:そうですね。伝統的なコンテンツビジネスも、スタートアップが取り組んでいる新しいエンタメビジネスも、どっちも見ていると思います。
なぜ今、エンタメが注目される?
草野:じゃあ、ちょっと1つ目。メインのテーマだと思うんですけど「今、エンターテインメントがスタートアップ業界で注目されている理由とは?」というところです。IVSにも、エンターテインメントエリア(IVS Entertainment)が初めてできたので、日本の業界的にもすごく注目されているかなと。これはなぜだと思いますか?
中山:そうですね(笑)。僕はIVSの人じゃないのでアレですけど、(IVSは)歴史的には、もともとはほとんどが「IVS LAUNCHPAD」のようなVCというかアントレプレナーを支援する組織でした。2021年頃には、Crypto系など、それぞれのイベントがもともとあって、それらを2023年にマージして、京都で大きいイベントをやるようになりました。
でもやはり、もともとアントレプレナー型からWeb3になり、それが今エンタメになっていって、3年単位ぐらいでガラッと変わっていっています。これは2026年もちゃんと続けてほしいなと思うんですけど。
草野:ぜひ、そうですね。
中山:それでIVS自体はテック側や起業家を支援するんだけど、ちょっとずつエンタメにフォーカスが向いてきた。エンタメ系って、この3年間で本当に、IPやら何やらが雑誌でも取り上げられているので、そこのところをフォローしたんですかね?
日本ならではの領域
田中:そうですね。今朝もたまたまXで見ていておもしろいなと思ったのが、ソーシャルゲームです。2010年前後の日本では「mobage」「GREE」「mixi」というところで、非常に盛り上がっていたんです。
けれどもその時に金融系や銀行系のベンチャーキャピタリストはよくわからないから投資しなかった。一方で独立系のVCの方々は、「これはいける」と思ってけっこう突っ込んで、それが大きな成長のきっかけになったと。
当然、今はメガベンチャーって呼ばれている会社の多くもソーシャルゲームの盛り上がりで多くのキャッシュを得ました。それがいろんな事業に展開したり、いまだにエンターテインメントに張り続けたりする原資になっていることを考えると、エンターテインメントが非連続的な進歩のタイミングになることがけっこうあるなと思っています。
特に今だと、SaaSブームがスタートアップの領域では確実に収益を上げていくジャンルとしてあったところ、なかなかイグジットも難しくなったり、やはりちょっと混沌としてきている。
いわゆる新しいチャレンジとしてグローバルに攻める時に、「日本にいる日本発スタートアップならではの領域って何だろうか?」という問いを立てると、けっこういろんなテーマの中の1つとしてエンタメがグッと上がってくる。