スタートアップ業界の注目領域、日本が誇る成長産業「エンターテインメント」のマクロ分析(全3記事)
「ゲームは投資対象じゃない」と言われた時代から一変 海外起業家も注目、日本が誇るエンタメ分野の経済効果 [2/2]
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エンタメ系のファンドも活躍するように
田中:これはやはり、今のエンターテインメント、特に先ほど例にあった集英社さんやアニメ各社さん、コンテンツ産業を支えてくださっている事業者さんたちの業績が非常にいいことも含めて、やはり「ここなんじゃないか」というスタートアップの目線も出てきたんじゃないかと思います。
2020年ぐらいには「ゲームは投資対象じゃありません」って普通に言われていたので、やはりVCさんの目線もぜんぜん変わったなと思っています。今も言うところはありますけどね。
中山:確かにね。
田中:ボラティリティが高いからとか、評価できないからっていうのは当然ありますけど、昨今はむしろゲームファンドやエンターテインメントコンテンツファンドが出てきました。あとはやはりCVCが盛り上がってきて、「わかるよ」という人たちが自ら投資部門を立ち上げています。そういうところも含めて、すごく環境が整ってきている印象はあります。
中山:日本のVCの15年ぐらいの歴史でいうと、ソシャゲをやって、その後VRやVTuberが来て、みたいな文脈の中で……SaaSもありましたけどね。そこにエンタメっていう。
田中:それでいうと、当たりはずれは間違いなくあると思います。ソーシャルゲームは結果論で見れば非常に大きく成長して、今はアプリでの運営型ゲームとして競争が激しいです。
「にじさんじ」「ホロライブ」上場の衝撃
田中:けれどもその後に来たエンターテインメントのテクノロジー部分が全部ソーシャルゲームぐらいまでいったかというと、やはりそうでもないという評価はあると思います。一方で、上場したVTuber(事務所)の2社は本当にすごい業績だったりするので、そこを支え切って当てたVCの方々のリターンがすごかったのは、LP出資している側としても感じています。
中山:「にじさんじ」「ホロライブ」で、いろんなものが変わりましたよね。
田中:ANYCOLORさんとカバーさんは本当にすごいと思います。
草野:確かに。海外の起業家の方に「VTuber事務所として上場している企業で、これぐらいの規模感なんですよ」という話をするとすごくビックリされます。やはりそこは日本だからこそだと思います。
中山:草野さんにも聞いてみたいんですけど。
草野:はい。
中山:アンドリーセン・ホロウィッツが「Anime Is Eating the World」(という記事をブログで公開したの)ってちょうど2024年9月ですよね? たぶん彼ら自身がアメリカの金融業界として普通にアニメに注目するようになったり。僕は夏ぐらいに日本に来ていた時に話をしたことがあって。
草野:そうなんですね。
中山:当時もすでに、VTuberをアニメ銘柄みたいな感じで見ていました。LAやサンフランシスコに行かれた時に、日本のコンテンツの熱量が上がっている感触はあるんですか?
草野:やはり起業家の方やブランドをやられている方で、「アニメIP系とのコラボをやりたいんですけど、どこに問い合わせたらいいですか?」とか、やりたい方がすごく多いなと思いましたね。
アパレルでもアニメコラボが注目
田中:アパレルとかも、今はすごいですよね。
草野:確かにそうですね。Z世代はアニメを見ているのが普通という中で、「オタク」ではなくて本当に格好いいファッションとして認識されているんだなとは思いますね。
中山:この間『WWDJAPAN』という雑誌に取材されたんですけど(2025年4月14日号)、初めてのアニメ特集で「アニメコラボとは?」って分析したんです(笑)。
それは24歳くらいの方が企画をしたんですよね。上の人が「これは今、熱いだろ」みたいな。その記事を読んだ人から「あんた、アパレル雑誌に載っているよ!?」みたいなことを言われました。
田中:アパレルの世界でもアニメを真正面から取り上げるのが傍流じゃなくて、むしろやっていいと。
中山:そうなったっていうことでしょうね。
配信サービスの普及と供給ショックが追い風に?
田中:ここでちょっと、マクロ分析というテーマなので少し歴史的に見ると、やはりコロナで家にいなきゃいけなくなった時に、配信でアニメを見た人が全世界でめちゃくちゃいるんじゃないかなと。
草野:あー、なるほど!
田中:海外だと、気づいたらNetflixで普通にアニメを見れる環境があったといろんな人から聞きますね。あとはやはり、子どもの頃に見ていたものに大人になってまた興味を持つという話は、エンタメではすごくあると思います。
それとコロナ禍での視聴体験の変化で、こと海外や英語圏においてアニメのマーケットがグンと伸びた印象があるんじゃないですかね。
中山:でも配信だけ(が海外でアニメのマーケットが伸びた要因)だとすると、2020年、2021年、2022年に伸びたのはコロナ禍での視聴体験の変化によるものだとわかると思うんですよね。けれども、なぜ2023年、2024年も伸びているかがけっこうポイントだと思っています。
やはり相対的に投資対象となった銘柄な感じがするんですよね。2023年の後半にロサンゼルスのハリウッドでストライキが起こり、丸ごと半年間は映画やドラマが作られなかった。あれが、ディズニーの不調期を長引かせてしまった。同時にSaaSなり何なり、投資する対象がなくなってきたのもあると思うんですよね。 『ドラゴンボール』は年間約2,000億円を売り上げる
田中:そうですね。エンターテインメントをめちゃくちゃ理解して新たな投資対象として評価されているというよりかは、中山さんが今おっしゃったとおり、相対感の中で、むしろ消去法の中でエンタメ(が評価されている)。もしかすると日本でもグローバルのコンテンツ調達でもそういう側面はちょっとある気がしますね。
中山:そうなんですよね。だからアメリカの4大映画会社は実はそんなに調子が良くなかったり、韓国でもK-POPが今ちょっときつくて、ウェブトゥーンなんかは(事業を)売るんじゃないか、みたいな話もあったりします。だから実は全体の調子がいいというよりは、日本が相対的に浮いてきた。他が乱高下している感じですよね。
草野:日本のキャラクターやIPについて書籍でも書かれていますが、どれぐらい盛り上がっているかをご説明していただいてもいいですか?
中山:ちょうどバンナムさんのIP別売上を見てもらうと如実にわかります。今、『ガンダム』と『ONE PEACE』と『ドラゴンボール』が史上ナンバーワンの売上です。『ガンダム』は年間で1,500億円いって、『ONE PEACE』1,400億に、『ドラゴンボール』はなんと2,000億近くで絶好調。バンダイナムコに関わるだけでそのぐらいなんです。
正直、1つのIPごとに2〜3,000億円の売上になっていて、むしろ2020年から上がり続けていることによって、また投資対象として評価されるポイントが大きい。『ウルトラマン』もちょうどこの間イベントに行ってきましたが、ウルトラマン経済圏ってもう5,000億円近いんですよね。
草野:へー!
中山:円谷自体は「100億円ぐらいの企業でしょ?」って言いますが、中国とかで、ものすごく当たっています。
長年の積み上げが巨大経済圏に
田中:『ウルトラマン』もしかりなんですけど、やはり「IPやキャラクターがすごい」という図がよくあるじゃないですか。(スライドを示して)これはまさに中山先生の著作の中にあります。「これだけ大きいキャラクター経済圏がありますよ。各キャラクターがこれだけ売上を出しています」というIPの規模感と歴史をプロットした図です。
たぶんこちらにいらっしゃる方もピッチ資料の中に入れたり、もしくは見たりしたことがあると思うんですけど。
中山:めちゃくちゃ使われています(笑)。僕の本の引用で出てきます。「あ、また使われている!」って。
田中:「『ポケモン(ポケットモンスター)』はこれだけの規模感です。なのでIPビジネスをやります」みたいな(説明の際に使われています)。
中山:「ご存じでしたか?」って言われて、「あの……僕の本です」って言ったことがあります(笑)。
田中:やはり、すごく今まで積み上がってきたものとしてキャラクターが育ってきましたよというお話です。 続きを読むには会員登録
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