【3行要約】
・「管理職になりたくない若者」という言説は広まっていますが、実際には2割強が管理職志向を持ち、20代に限れば3割近くが昇進を望んでいる実態があります。
・廣田文将氏は、管理職の業務過多やワークライフバランスの崩れが若手の昇進忌避を生み、社会的背景や価値観の多様化も影響していると指摘します。
・若手社員は管理職にならないリスクを理解した上でキャリアを考え、企業は管理職の負担適正化と魅力向上で3割強の潜在層を動かすことが課題です。
管理職になりたくない社員が増えている
廣田文将氏:今回のテーマは次世代リーダーというお話です。次世代リーダーに関しては、我々は「近い将来の自社の事業を牽引し、組織を支える中核となる人材」と定義しています。
みなさんには意外と幅広いイメージ、大きくは3つのパターンがあるかなと思っております。その中で今回は、「管理職手前の候補者を育てて次期管理職層を充実させよう、ストックさせよう」という話でございます。
「次世代を担う管理職を育成・ストックしたいな」と願っているにもかかわらず、今回のテーマのように、管理職になりたくない社員が増えているという問題があるというのが今回のテーマです。
若手は管理職に対して「なんか大変そうだな」と思っている
(スライドを示して)みなさん、この手の記事を目にしたことはございませんか? 管理職になりたくない若者増加。責任と業務が割に合わない。どうやら管理職の手前のメンバーがこんなイメージを持っているようなんですよね。
左の絵の下のように、管理職手前のメンバーたちが、「管理職を見ていて責任や業務の負担が大きいなぁ」「その割には業務量と給料が合わないんじゃない?」とか。最近の管理職は、部下になかなか言えなくて、部下の仕事を巻き取って自分が残業しているから残業も多くなっている。
この姿を見ていて、若者は「なんか大変そうだな。おもしろくなさそう。私生活はどうなっちゃうんだろう?」なんて思っているんでしょうね。
上司は上司で、最近はハラスメントと言われますから、言い方がどうにも奥歯に物が挟まったような言い方になっちゃう。ズバリと言えない。非常に気を使う。で、疲れている。部下に本当は成長してもらいたい。そのためにはもう少し向き合って突っ込んだ話もしたいんですけど、それもままならない。
「『管理職になりたくない』若者増加 責任と業務、割に合わず」といった記事タイトルに(現状が)表れているかもしれません。
その風潮は本当なのか?
我々の今回のセミナーでは「その風潮って本当か?」という意味で、「その言説は本当か?」という問いを立ててみました。本当なんでしょうか?
(スライドを示して)この図を見てください。この図はかなり興味深いですし、みなさんがさまざまな施策を打つ時の示唆に富んだデータですね。みなさんはこれをどう解釈するかです。
「管理職になりたくない、なりたくない」って(若者は)言っているんですが、右上の象限を見てください。
縦軸は今の仕事です。管理職手前の今の仕事がおもしろいと思っている部下、かつ管理職になりたいと思っている方が17.3パーセントもいらっしゃる。
そして右下の象限の5.4パーセント。この人たちは、管理職にはなりたいんだけども、今の仕事そのものに満足していない、仕事をおもしろくやれていない人です。右上の17.3パーセントと合わせると合計22.7パーセントが「管理職になりたい」と言っています。これをどう見るかですよね。
そして、より注目したいのは特に左上の象限。「今の仕事はおもしろい。でも、管理職にはなりたくないな」。ここの32.2パーセントの層がどう動くかだと私は思っております。
管理職になりたくない若者だらけ。8割、9割いるような、いやもっといるようなイメージを持っていらっしゃいますが、そうじゃないんですよね。2割ぐらいいればもう御の字だと私は思います。
32.2パーセントの山がどう動くかを考えた施策が問われるんだと思っております。
現在の会社で管理職になりたい20代もいる
次に「なりたくない」言説は本当か、2つ目。現在の会社で、管理職になりたいと思っているのが、20代、30代。まぁ、40代も含めてもいいでしょう。管理職になりたいという人たちが17.2パーセントもいらっしゃるんです。確かに年々若干下がってはいるものの、まだまだ2割弱いらっしゃるわけですよ。
ましてや、今勤めている会社の20代のメンバーで管理職になりたいって思っていらっしゃる人も28.2パーセント。3割弱ですよね。これには私は驚きます。
捨てたもんじゃないですよね。20代の人たちが、今いらっしゃる会社の中で管理職になりたいという気持ちはあるんですよね。このあたりをどう活かすかです。