管理職にならないまま45歳を迎えるとどうなるか
先ほどの「仕事がおもしろい、おもしろくない」というところで、キャリアの話もよく出るんです。キャリアとして管理職っていうのをどこまで真剣に考えているんだろうかと。ここには我々も疑問があります。
先ほどの「管理職になりたくない」と言う人たちは、本当に自分自身の将来、キャリアをよく考えているんだろうかと。あまり考えずに、安易にそういった風潮に流されて「管理職になりたくない」と言ってしまっているんじゃないのかなと。これが気になるんです。
こういう方々に問いたい。管理職にならないまま45歳を迎えると想像してみましょうか。年功序列色が今より薄まっていると仮定した場合。
その下の段にあるように、若い頃と同じようにプレイヤーとしてですよ、若い頃と同じように……45歳を迎えると、同じように、またそれ以上に成果を上げ続けることが要求されます。
2番目。そうなりますと、45歳ですからより高い専門性を身に付けていない限りは、給料はあまり上がらないんじゃないんですかね。ということは、自ら学んでいく、磨いていくプロ意識が相当問われると思います。
3番目。職位や給与面では、場合によっては後輩や上の職位の方々が、おそらく自分の年収を追い越していく。そういう中で文句を言わず、年下の上司にマネジメントされて働いていくって、本当に大丈夫なのかなと。
こういったことをちゃんと考えた上で「(管理職に)なりたくない」とおっしゃっているんでしょうか? ここに私は少し疑問を感じます。
管理職になることでキャリアの選択肢は広がる
また、彼らは本当にここをわかっているのかなと思っています。管理職になることで、キャリアの選択肢が実は広がるんです。
なぜかって、今、マネジメントできる人が非常に求められているからです。マネジメントの実務を求められているだけに、「マネジメントの実務をやっています」と言うと、自分の市場価値は高まるんですよね。
また、マネジメントのプロとして生きていく選択肢もあるわけですよ。それだけに安易に「管理職になりたくない」なんて言うんじゃなくて、本当に自身の将来キャリアを考えていった方がいいんじゃないかなと思っております。
なぜ「管理職になりたくない問題」が起きてしまっているのか
これらの「(管理職に)なりたくない問題」ですが、なぜこういうふうになってしまうのかを少し全体を俯瞰して整理してみました。
(スライドを示して)上段のところが、だいたい世の中の傾向ですね。背景というやつです。真ん中の段が管理職自身の問題です。下の段が部下メンバーの考えというか、気持ちにおける問題点というように、大きく3層に整理してみました。
これを見たらわかるように、上段の内容はまさに今の世の中の傾向を表していますよね。価値観や雇用形態が多様化している。働き手が企業を選ぶ時代である。転職のハードルも低下。だからいろいろとあると、プロとしての力がつく前にすぐ転職を考えてしまう。もちろん、中にはプロのステップアップを狙っている人も当然いらっしゃいますが。
また一方で人手不足。働き方改革で残業時間の規制。そしてコンプラ問題が重視されています。そうすると、管理職がどうしても部下にいろいろ言えなくて、部下を早く帰らせる。自分が部下の仕事を巻き取ってやってしまう。こんなことが巷でよく見られます。また、世代間のギャップによる意思疎通の難しさ。
こんなことで、昔と違い、マネジメントの難易度が上がっています。また、業務量も大幅に増大しているわけですから、マネジメントの高度化が求められているのは否めません。
それができていないと、まさにその下にあるように「管理職はつらいよ」と愚痴ってしまいます。この気持ちはよくわかります。
また、管理職の過度の業務過多。管理職には非常に負荷がかかっていきます。
そういう中でいろいろな部下たちにも対応していかないといけない。育てていかないといけない。こういうことも担うわけですね。ですから、ついついワークライフ・バランスが怪しくなっていく。
そういう管理職を見て、部下は「管理職になりたいとは思えない」と言っているんだろうなと推察しております。
ですから、管理職が愚痴れば愚痴るほど、また業務過多になっている姿を見れば「管理職は割に合わないな」と。
また、管理職もつい愚痴っちゃう。部下に「管理職になる手前の時のほうが給料良かったんだよな」とか言うんですよね。(そうすると)余計に割に合わないというイメージが広がります(笑)。
「管理職になりたくない」問題は複雑なものが絡み合っている
そういう中で、将来のキャリアを描けない。「本当にこの会社に長く勤めることはいいことなのかな?」とか、そんなところがぐらついちゃうんでしょうね。そういうこともあって「このまま管理職になっていいものか?」と考えちゃう。
また、「私に管理職? 無理無理」っていう、この思い込みも中には当然あります。この思い込みを言われている人は、私から言わせると、かなり古い時代のマネジメントを思い浮かべておっしゃっている方が非常に多いんです。今は時代が違うんですけどね。
「管理職の責任を本当に担えるのか、不安だ」とか「私にはリーダーシップなんて、みんなを引っ張るなんて」とか、こういうことで自信がない。この思いが「管理職になってみんなを動かしていくのは非常に難しいな、億劫だな」ってなっちゃうんでしょうね。
管理職じゃなければ何の逃げ道かというと「専門家として働きたい」。こういう意識が当然働きます。中には本当のプロとして、専門家として磨いていこうっていう人もいらっしゃるんですけども、「管理職になりたくない」というところの逃げとして、こちらの部類に入っているという方もいらっしゃいます。
こういうものが複雑に絡み合って、「管理職になりたくない」とおっしゃっているんじゃないかなとに思っております。