部下のモチベーションを左右するタスクの伝え方
田中:ここまでで何か質問はありますか?
司会者:一貫して、田中さんは人のキャラクターやスキルをしっかり見極めて、いろいろと工夫されてきたんだなと感じました。特に今のスライドの内容は、難しいとか悩ましいと感じる方もいらっしゃると思いますが、ここが大変だったとか、逆にうまくいったご経験があればぜひ教えてください。
田中:このスライドにある内容は、たぶんみなさん頭では理解している部分だと思います。業務の分類やスキルのレベル分け自体はできると思います。例えば、「この人はベテラン」「この人はジュニア」、あるいは「この業務は重要」「これはそうでもない」というのは、それぞれの土地勘でわかる部分かなと。
ただ、本当に重要なのは、それをどうコミュニケーションに落とし込むかだと思っています。
例えば、前職のマッキンゼーでの経験ですが、コスト削減のプロジェクトを例に挙げると、削減額が数億円単位になるような施策は非常に重要で、失敗できない内容です。一方で、10万円単位の施策は、必須ではないかもしれません。ただ、チャレンジの機会としてジュニアに任せよう、という判断をすることがあります。
ここで大切なのは、それぞれそのタスクをどう渡すかです。数億円単位の施策を「重要だから任せます」と言うだけでは、その人にとっては重要性が伝わるかもしれませんが、他のジュニアメンバーが見た時に「自分にはそんな重要なことを任されていない」と感じ、モチベーションを下げてしまう可能性があります。
また、ジュニアメンバーにタスクを渡す時も、「金額が小さいからやってよ」と伝えるのではなく、「この金額は小さいかもしれないけど、これは中長期的に非常に重要な投資で、今仕込んでおくことで将来的に成長につながる」といった意義付けをして伝えることが必要です。
さらに、場合によっては、「この前の1on1であなたが伸ばしたいと言っていた部分に、このタスクは役立つと思う。一見小さい仕事かもしれないけど、一生懸命やってみてほしい」と伝えることもあります。「短時間でこれをうまく終わらせることが、あなたのこういうスキルを伸ばす上で非常に重要だ」というかたちで、明確な意義を持たせて渡すことが大切です。
このように、タスクを渡す際のコミュニケーションに気を使うことが、非常に重要だと感じています。
司会者:ありがとうございます。
人はエモーショナルな部分で動くもの
田中:あっという間に30分が終わろうとしていますので、ここでまとめに入ります。今日お伝えしたことは大きく2つあります。

1つ目は、「相手をリスペクトしましょう」ということです。ロジカルな考え方だけではなく、人はエモーショナルな部分で動くものです。その感情をしっかり理解し、相手を想像しながら行動を取ることが大切です。
2つ目は、「3つの行動を取る」ということです。まず、相手をしっかり気にかけ、知ろうとする。相手がどういう人なのか、どんなバックグラウンドを持ち、何を考えているのかを知ろうとする姿勢が重要です。そして、関わりを持つ際には、ゴールからプロセスに分解し、「なぜこれをやるのか」を順序立てて説明していきましょう。
また、指示をする際には、相手のスキルや業務の重要度に応じて、適切に差配することが求められます。任せた後も、相手をしっかり想像しながらメッセージを伝え、相手が納得しながら進められるようサポートすることが大切です。
これらが、マネージャーとして取るべき行動のポイントだと思います。本日の内容がみなさんの実務の中で少しでも参考になれば幸いです。
同じシリーズの記事はこちら