【3行要約】
・真面目だが挑戦を避ける若手社員――デジタルネイティブ世代のレジリエンス低下が企業の新たな課題となっています。
・高野氏の分析では、Z世代は堅実な仕事観を持つ一方で対面コミュニケーションに不慣れで、人に質問することにも遠慮する特徴が見られます。
・レジリエンスは鍛えられるスキルであることを認識し、若手社員の特性を理解した上で適切な育成プログラムを設計することが企業に求められています。
最近の新入社員はリスクを恐れる傾向が強い
高野聡子氏(以下、高野):では、さっそく本題に入らせていただきます。「デジタルネイティブ世代の仕事観」という調査結果を1つご紹介させていただきます。私どもの親会社、ビジネスコンサルタントで毎年実施しております、新入社員アンケートの結果です。
ビジネスコンサルタントは、毎年多くの新入社員研修を担当させていただいております。そのお取引先の新入社員のみなさまにご協力をお願いして採ったアンケートの結果でございます。2024年は5,759名のみなさまにご協力をいただきました。
どういったことを聞いているかといいますと、実際に働く上で重視していることですとか、不安に感じていること。そして、仕事をする上で得意なこと、将来のキャリアビジョン。その他、自己・自尊感情について、レジリエンスについて。あとは、エンゲージメントについてといった観点で、23項目の質問をしております。

今回は、レジリエンスに関する部分について、ご紹介をさせていただきます。新入社員のレジリエンスについての認識ですけれども、恐らく予想どおりな部分もあるんじゃないかなと思います。過去3年間の傾向を見ていただいても、それほど(新入社員のレジリエンスが)高い傾向は出ていません。

特に各分野ごとでご紹介しますと「リスク対応」、自分の強みをどう使っているかという「自己活用力」の項目ですね。そして「感情の把握」「自律」といった項目があるんですけれども、常に一番低い傾向値があるのは「楽観性」ですね。失敗したら、「もう駄目だな」と思いがちだよねと。
実際に、新人・若手の方々の教育を担当している方々におうかがいしても、「ここ最近の新入社員の傾向としては、非常にリスクを恐れるよね。間違いを気にする傾向があるよね」と。みなさん口をそろえてよくおっしゃるのは、やはり教えたことについては、非常に真面目に熱心に取り組みます。ただ、何も言わないで「新しいことに挑戦してみよう」と言うと、途端に尻込みしてしまう。
または、ちょっとしたことを指摘しただけで、ものすごく落ち込んでしまうとか、「もっとこうしたほうがいいよ」とアドバイスをしたはずなんですけれども。本人としては、「ああ、もうこんなことを指摘されたらやっていけない」みたいな、激しく落ち込んでしまう傾向があるんだよねなんて話がされていました。
自分自身が失敗をするということについて、非常に恐怖心を抱いていらっしゃる世代なのかなと思います。そういった観点から、やはり「若手の方々にはレジリエンスが必要だよね」なんて話も出てくると思います。
若者が一生懸命になるために必要な項目
もう1つ、こんな観点からもご紹介させていただきます。仕事について、どんなことを思っているのかなという「デジタルネイティブ世代の仕事観」です。バブルが崩壊した後の氷河期の世代なんですけれども、その入社当時と比べると、だいぶ変わってきた印象はありますね。

やはり社会貢献とか、仕事観は非常に堅実です。真面目に一生懸命取り組みます。オープンなコミュニケーションを好みますが、一方でプライバシーは重視し、仕事は仕事、プライベートはプライベート(と分ける)。そして、平等性・合理性を重視。「四の五の言わずにやれ」と言われても、絶対にやりませんよねという傾向はあるかなと思います。
ただ一方で、「これが何のためにつながっていくのかな?」「世の中の何に貢献するのかな?」とか、自分自身のキャリアアップに納得感が得られると、ものすごくポジティブに一生懸命やれる傾向はあると思います。
もう1つ、特徴としてもご紹介したいと思います。やはりデジタルネイティブ世代、別名「Z世代」と言われる方々は、スマートフォンで生活のほぼすべてを解決しています。つまり、何かあっても答えはスマホの中にあるということです。

そして、キーワードで検索。「人に聞くことはあまりしない」とありますけど、OJTを担当されているみなさまは、お心当たりがありませんか? 「わからなかったら聞いてね」と必ず言うと思うんです。ただ、新入社員の方々は、「聞くぐらいだったら、検索したほうが早いんじゃないかな」と。
そうは言っても、例えば「日報 書き方」で検索しても、御社版(の日報の書き方)は出てきませんよね。そうすると、非常にフラストレーションがかかるそうです。人に聞くことも、別に聞くのが面倒くさいから聞かないわけではなくて、聞いたことについて、「相手の時間を奪ってしまうのが申し訳ないな」と思ってしまうので、あまり人に聞かない傾向がある。
Z世代は対面コミュニケーションに不慣れ
あと、縦のつながりより横のつながりが強い。ある意味スマートフォン上で、常に周りの方々とつながっていられる状況ではございます。なので、学生時代からつながり等を非常に大事にしている傾向があるかなと思います。
実際に採用担当の方におうかがいしますと、やはり「生まれた土地を離れたがらない方々も多いな」という話はおうかがいしますね。「今自分が生きてきた、このコミュニティの中で、一生を完結させていきたいな」「この横のつながりを大事にしていきたいな」なんて話も、よくおうかがいしております。
そして、4つ目。人間の感情に直接対面することに慣れていない。要はフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションにはちょっと慣れていない。特にコロナ禍を経て入社された方々になってきますと、非常に人間関係が限られた時代がございました。本来だったら学生時代、いろいろな体験をしなければいけないところも、できなかったりしたケースもございます。
そうすると、ネット上でいろいろなやりとりをできるんですけれども、対面であれこれやりとりすることには、少し苦手意識を持っている。特に人の激しい感情だとか、ネガティブな感情等に触れるのにあまり慣れていない傾向がございます。
5つ目、興味関心の幅が限られることが多い。実際に最近、テレビがない、新聞を読まない方々もすごく多いかなと思います。それはそれでその人の選択なので問題ないんですけれども、そうすると、自分の興味関心のある情報しか出てきません。そして、非常に考え方が偏ってきてしまう傾向もございます。
最後は、動画でのインプット学習に慣れていると。「あれ、動画で見たほうが理解が早いよね」という認識がございます。やはり対面でのお互いのやりとりに慣れていなかったり、情報の幅が限られていく中で、思考の柔軟性が、だいぶなくなってきている傾向があるんじゃないかなと思います。
人事担当の2人に1人が、レジリエンスに課題を感じている
もう1つ、ここで、デジタルネイティブ世代とはあまり関係ないかもしれないんですけれども、LDcubeのほうで、各人事部門ご担当者の方々のレジリエンスの実態調査についてご紹介させていただきます。
2024年7月19日~8月1日に、「調査委託:ProFuture株式会社」とございますが、「HRプロ」というポータルサイトですね。みなさまもご覧いただいたことがあるかもしれません。そちらでアンケートを行いました。各組織の人事ご担当者の方々が、「レジリエンス」についてどのように感じているのかなと。こういった質問項目をおうかがいしているんですけれども、いくつか抜粋してご紹介させていただきます。
まず、「人材のレジリエンス」に課題を感じているのはどこかという質問です。約半数の組織が、人材のレジリエンスに課題を感じています。「感じていない」というところもあるんですけれども、全体の20パーセント程度にとどまっている。要は、2人に1人の人事ご担当者の方々が、レジリエンスに課題を持っていらっしゃる状況が見えました。

続いて、レジリエンスに課題を感じている階層としてはどこなのかなと。やはり、最も課題と感じたのは「20代前半」ですね。入社2~3年目ぐらいになりますでしょうか。そのあたり、全体の半数以上の方が、課題を感じていると。次いで、「20代後半」の若手社員の方々。こちらも半数を超えています。主に20代の方々のレジリエンスに課題を感じていると。そんなところが浮き彫りとなってまいりました。
もともと、「レジリエンスは管理職のほうが求められているんじゃないかな?」という仮説があったんですけれども、蓋を開けてみると、「若手社員の方々のレジリエンスをもっと鍛えていきたいね」というのを、人材育成部門の現場では感じているようでございました。
レジリエンスが低いことで休職することも
続いて、「レジリエンスに課題を感じている職種はどこなのですか?」。一番多かったのは営業職ですね。お客さま相手の商売ですので、やはり気持ちの切り替えが大事になってくるんじゃないかなと、人材開発部門のご担当者の方々は思っていらっしゃるかなと思います。

そして、「レジリエンスが高くないことを原因に、メンタル面の事由から休職してしまった人がいますか?」という質問。けっこうダイレクトに聞いてみたんですけれども、半数弱の組織においては、やはり「レジリエンスが高くないことから、休職してしまった人がいる」という回答をされていました。

そして、「新入社員を採用する際の、選考基準としてのレジリエンスの高さ」なんですけれども、こちらは回答が分かれる傾向ですね。入社の段階では、「レジリエンスの高さを意識している」と、はっきりと言い切っているところは35パーセント。「意識していない」というところは41パーセントです。採用基準として、レジリエンスを考えていらっしゃる組織はあまり多くないのかなという認識です。
実際、採用面接の中で、レジリエンスの高さをどう見るのかという課題もあるかと思いますけれども、採用の時にはそれほど意識していないと。そして、レジリエンスについての考え方ですけれども、「レジリエンスは、後天的にトレーニングで育むことができるんですが、それについて知っていますか?」という質問です。こちらは約半数の方々が、「知らなかった」とご回答されています。
この後、ご紹介させていただきますけれども、レジリエンスは後天的にトレーニングで身に付けることができるプログラムでございます。ぜひ鍛え方を確認していっていただければと思います。