【3行要約】・プレイングマネージャーとして顧客との関係性や経験を活かす強みがある一方で、仕事が集中し過剰負担になるリスクが指摘されています。
・組織の規模や構成によってはプレイヤー業務が求められる現実がありますが、マネジメントへの転換が組織全体の生産性向上につながります。
・効果的なワークスイッチには、自分の仕事の棚卸し、詳細な引き継ぎ資料の作成、部下の特性理解など、段階的なアプローチが必要です。
前回の記事はこちら プレイングマネージャーが悪というわけではない
佐久間大輔氏:では、ここまでの内容を整理させていただきながら、管理職がプレイングマネージャーの仕事から卒業するためにはどんなことをしなきゃいけないのかを次からお話しさせていただきたいと思います。
まず1つ確認させていただきたいのが、本セミナーの中で言っているプレイングマネージャーが悪だとか悪いって言っているわけではございません。
例えば組織のメンバーが少ない。メンバーがまだ1人で数字を上げられない。若手社員が多い。このような中で、会社自体がみなさまにプレイヤーとしての力を求めている実態は往々にしてあると思います。
また、先ほども言ったように、先の見えない時代において、長年培ってきたみなさまの顧客との関係性は、ほかの人にはできないような最大の武器になっているのも否めません。
プレイングマネージャーとしては、顧客との関係性が長年培ってきた最大の武器になっていて、判断とスピード感があったり、知識とか経験からしかなし得ない柔軟な動きができます。
プレイヤーから脱するところを少しずつ増やす
社内の事情としては、メンバーが少なかったり、社内のコミュニケーションが確保できない。このような状態がですね、プレイングマネージャーを作り出していると思います。なので、会社がプレイングマネージャーとしての動きを期待しているケースもあります。
(スライドを示して)ただ、下にも書いてありますが、この状態があなたにとって過度なストレスを生んでしまっていて、組織としての生産性でいうと、必ずしも高まるとは言えないんですよね。
だからこそプレイヤーから脱するところを、全部ではなくて、少しずつ増やしていったほうがいいですよねっていう話になります。
例えばですが、みなさまが忙し過ぎて、自分がいっぱいいっぱいになって、部下の指導ができていない。部下の成長につながっておらず人が辞めてしまったら、「こんなにがんばっているのにまた仕事を辞められてしまって、その仕事が自分に降りかかってくる。もう次に辞めるのは自分かもしれない」。そんな状態になっちゃうかもしれませんよね。
そうならないためにも、部下に仕事を任せることが必要だと思っております。
プレイングマネージャーに仕事が集まる理由
(スライドを示して)なぜプレイングマネージャーの人に、次から次へといろいろなことが降ってきてしまうのかっていうと、その理由がこちらになります。
プレイヤーしながらマネジメントをしてしまうと、いろいろな仕事の中にマネジメントが入って、みなさんの能力、経験などに引き寄せられてしまうんですよね。例えばクライアント対応も「あの人じゃないとダメ」、クレーム対応も「もうあの人にお願いします」みたいなかたちです。みなさんにもこんな経験はないでしょうか。何でもかんでもとりあえず自分のところにいったん仕事が舞い込んでくるみたいな。
ワークスイッチでは「じゃあどうやって自らの価値を自分に使うのではなくて、組織として使っていくのか?」っていうのが重要になります。
それは、マネジメントをしながらプレイをしていくっていうことになります。最初に重要なのが、マネジメントを行って、その力を分散しながら、例えば自分の中で何かやらないものを決めるとか、(自分の仕事を)部下の業務にしていく。そうすることによって、ワークスイッチが少しずつできてくると思います。
もちろんその中には手放せないような仕事もあるかと思いますが、例えば会議の進行とかは、必ずしも管理職がやるべきことではないかもしれませんよね。
もちろん最終的な決定権はマネジメントをしている管理職にあるかもしれませんが、会議体を変えてみたり、会議の資料を作ってみたりして、部下の育成とかを考えながら(仕事を)流していく。こんなところも必要になるんじゃないかなと思います。
いきなりのシフトチェンジ、全部をマネジメントに振り切るのは難しいので、徐々に、できることからワークスイッチをしていくところが先決になります。
ワークスイッチのために何をしなければならないのか
続いてプレイングマネージャーからの卒業のためにということで、先ほどのページで説明したとおり、まずはプレイヤーとしての自らの仕事の持ち方。持ち込みをするのではなくて、プレイヤーとしての仕事をほかへ渡すか、渡した仕事をこれまでの経験を活用して支援、サポート、伴走するようなかたちでワークスイッチすることが大切になります。
では、そのワークスイッチのために何をしなければならないのか。まずは冷静に、自らやっている仕事をしっかりと天秤にかけることが必要になります。
価値の天秤にかけて、自らがやるよりワークスイッチしたほうが価値が高いと判断ができれば、そのプレイヤーの仕事はシフトできます。
どういうことなのか。簡単に言いますと、例えば「自分が得意なものと不得意なもの、どっちを渡しますか?」といった時に、おそらくだいたいの人が、自分が不得意なものを渡そうとしますよね。得意なものは自分でやりたいですよね。
ただそうではなくて、会社として、その部とか課として、自分がやったほうがより価値が高いと判断されている仕事なのか、自分が苦手な仕事でも、これは自分がやったほうが価値がある仕事なのか。そこをしっかりと天秤にかけることが必要になります。
(スライドを示して)ここに書いてあるように、自分がやることが組織としての一番高い成果になるか。メンバーにシフトして、自分の空いた時間を総合的に勘案して、マネジメントの仕事とかに活かしていくことが必要なのか。そんなところが必要なんじゃないかなと思います。
マネジメントを行おうとすると、当然プレイヤーとしてやってきたことができなくなります。しかしそうではなくて、より価値の高いものを組織として生み出すためにはどういうような仕事の振り方をしたほうがいいかを考えていく必要があると思います。
誰が見た時にでもPDCAサイクルで回せるようにする
続いて「プレイングマネージャーからの卒業のために」の3つ目です。ワークスイッチ、どの仕事を渡すかが決まった後、次にしなきゃいけないのが、仕組み作り、チェックシートになります。みなさまの中では引継ぎ書と言ったりですとか、引継ぎ資料と言ったりするものですね。
できるだけ早く自分から渡すことができればいいんですけれども、その時に適当なものを作ったとしたら、ブーメランになって自分に戻ってきますよね。自分の頭の中で描いている、自分しかできないやり方を誰かに渡したとしても、それがほかの人ができるレベルまで可視化できないものだとしたら、インプットされないですよね。
なので、私たちがやっている仕事で大事なものは単なる引継ぎ書ではなくて、誰が見た時にでも、ほかの人がしっかりとPDCAサイクルで回せるようになることです。これが曖昧になると、先ほども話したように、結局ブーメランになって自分に仕事が舞い込んできてしまいます。
なのでしっかりと仕組みづくり、引継ぎ書を作っていただいて、ほかの人、誰が見ても、誰がやってもできるような状態にすることが必要になります。
「自分でやったほうが早い」にたどり着かないように
ただそうは言っても、そんなことってめちゃめちゃ難しいですし、時間もかかります。「そんなことをやっているんだったら、自分がやったほうが早い」。最終的にここにたどり着くかと思いますが、そうならないようにしていきましょう。ちょっとずつやっていきましょうっていうのが今日のテーマになります。
仕組み作りをして、しっかりと下の人に下ろすこと。ここが一番時間もかかりますし、諦めてしまうことって本当に多いですよね。
せっかく自分でいろいろなことを試しながら作ってみたものの、「これってどういうこと?」「ぜんぜんわからないんだけど」って逆に文句を言われたりとか(笑)。本当に管理職の方って大変だなっていうことを日々感じております。