お知らせ
お知らせ
CLOSE

生成AI時代にマーケティング組織をどうデザインするべきか?(全3記事)

“ナレッジ外注”が細る現場の本音 “叩き台は内製・仕上げは外注”の新しい線引き

【3行要約】
・生成AIの普及により、企業のマーケティング業務における内製と外注の線引きが大きく変わりつつあります。
・支援会社と事業会社の両方を経験した山口義宏氏は、戦略や全体設計は内製すべきだが、AIの影響でナレッジ外注の需要は減少していると指摘。
・企業は戦略的視点で内製・外注を見直し、効率化で浮いた時間を効果向上に活用する組織づくりが求められています。

前回の記事はこちら

AI時代の内製と外注の線引き

司会者:では、最後のテーマに移っていければと思います。「生成AI時代に『内製』で対応すべき領域と、専門的な『パートナー』に頼るべき領域はどこか?」というテーマです。こちらについて、まずは山口さんからお願いします。

山口義宏氏(以下、山口):これは昔からそうだと思っているんですが、戦略とか全体設計のような領域は、基本的には内製で考えるべきだと思っています。もちろん、外部の手を借りるのはいいんですが、丸投げにするのではなく、社内の人がちゃんと体制を持って取り組むべき領域だという感覚があります。

外部パートナーについては、完全に依存するというよりも、2つのパターンがあると思っていて。1つは、自分たちにはないノウハウがあるから依頼するというケース。もう1つは、自分たちでもある程度できるけれど、効率化やリソース補完のために外部にお願いするというケースです。

AI普及で“ナレッジ外注”はどこまで減るのか

山口:今、パートナー側にとっての課題は、「ないノウハウがあるから頼る」という発注理由が、今後減っていくだろうということです。特に作業リソースの補完や効率化のために使われるケースが主になると思います。

エンタープライズ企業でありがちなのは、自分でやって失敗すると社内で評価が下がる、つまり“バツがつく”リスクがあるので、うまくいかなかった時に「これはパートナーが出してきた施策です」と言い訳できるように、あえてパートナーを入れるという文化ですね。ごく一部の大企業では、まだそうした理由で外部パートナーを使うケースは残っていると思います。

ただ、パートナーに高単価で依頼する理由は、生成AIの時代には基本的に減っていく方向にあると感じています。少し質問の主旨からそれるかもしれませんが、その力学は大きいです。

なので、内製としては、戦略や全体設計はきちんと自分たちで見ていくべき領域。そして、制作や運用の業務についても、まずは社内で叩き台を作る。その上で、70点のアウトプットを100点に仕上げる工程、もしくは100点をさらにブラッシュアップする工程を、外部にうまく委託する。そういう使い方が賢いやり方なんじゃないかなと。これは、僕が今、自社で仕事をする中で感じている実感ですね。

発注動機の変化と外注に残る案件

土屋尚史氏(以下、土屋):山口さんは、もともと支援側にいて、今は事業主体側にもいらっしゃるということで、両方の視点をお持ちですからね。

山口:そうですね。

土屋:事業側に回ってみて、実際にパートナーに仕事を出すこともあるんですか?

山口:ぜんぜんありますね。かなりありますし、業務ベースで手が足りないという理由もありますし、自分たちにナレッジが足りないからという理由もあります。ただ、生成AIが出てきてから、「自分たちにないナレッジだから高単価で外注する」という発注動機は、発注側の立場としては急速に減ったように感じています。

作業部分に関しても、外注費は確実に減ってきていると思います。つまり、内製比率が上がっている。その流れは事実としてあるし、実感としてもあります。支援側の立場として「それでいいのか?」という意見もあるかもしれませんが、事業側の本音としては、やはりそうなってきていると感じます。

土屋:僕は支援側としてずっとやってきましたが、やっぱりまだ何だかんだで、さっきの「70点を100点に」という話じゃないですけど、高クオリティなアウトプットや仕事って、生成AIではまだキャッチアップできない部分が多いですよね。

例えばですけど、質の高いテレビCMとか、ハイクオリティなWebサイトやブランドサイト、あるいはしっかりとストーリーを作り込むようなマーケティングコミュニケーション。そういった「クオリティの高い仕事」は、なかなかAIに取って代わられにくいんじゃないかと思っています。

山口:そうですね。本当にそう思います。

土屋:そういう仕事って、基本的に単発の案件が多いですし、事業会社として社内にそういった機能を常時抱えておくのは難しい。だから、そこは引き続き外部にお願いする流れは残ると思います。

山口:おっしゃるとおりですね。実際、僕も支援側を経験しているからわかるんですが、すべての外注が100点のアウトプットを求めているわけではない。むしろ、作業ベースで依頼されている部分も少なくないですよね。

土屋:はい、ありますね。

山口:そういう部分に関しては、コスト圧縮のプレッシャーは確実に高まっています。

パートナーを入れる現場の本音と責任分散のリアル

山口:もうひとつ付け加えると、テレビCMなんかが典型ですが、制作費や媒体費が数億円、場合によっては数十億円というような案件だと、社内の人間がその責任を一手に引き受けるのは、心理的にかなりハードルが高い。

だから、そういう“転んだ時に自分の責任にならないようにする”という意味で、パートナーに頼るというケースは、今後も残ると思います。もちろん、それを気にしないタイプや、胆力のある人もいらっしゃいますが。現実論として、巨額投資の結果責任の社内のプレッシャーに耐え続けるのはきつい人は多いという感覚はあります。

なので、パートナーに発注する理由は「知見を借りる」というだけでなく、「責任を分散する」という心理的な側面もある。デビルインサイトという意味で言うと、そういう構造もある気がしますね。

司会者:責任の分散という視点、かなり新鮮で驚きました。

土屋:これ、あるんですよ。エンタープライズの会社では。僕も自分で会社をやるようになって、初めてそれを知ったんです。「えっ、そのためにコンサルを雇ってたの!?」みたいな(笑)。

司会者:確かに、心理的安全性のためには大事かもしれないですね(笑)。

増え続ける施策の中で問われる“質”

司会者:では、時間も迫ってまいりましたので、最後に資料のまとめについて、山口さん、お願いします。

山口:ここはサラッとなんですが、「効果×効率=成果」という、ちょっと雑な公式を出しています。将来的には、AIが効果の部分にもどんどん入り込んでくると思うんですが、現時点では、効率化のインパクトが非常に大きいと思っています。しかも、その効率化は、人間の力では太刀打ちできないレベルにまで来ていると感じています。

では、効率化によって浮いた時間を何に使うのか。それは、効果を高めることに使っていくべきだと考えています。

今は、施策の実行スピードがどんどん上がっていて、顧客の側から見ると、日々さまざまな施策に囲まれ、あふれている状態になっています。それがさらに加速していくと、効果のある施策と、効果のない施策の差を生む“質”が問われてくるわけです。だからこそ、効果を高める部分にこそ人間の知恵を使っていく。それが顧客理解やUX設計などの領域だと考えています。

その延長にあるのが「多能工化」ですね。今までは、「この領域だけを見ていればよい」という働き方でも成り立っていたかもしれませんが、これからは確実に、多能工化の方向に進んでいくと思います。

例えば、CMOや経営者自身がマーケティングをある程度理解していれば、組織の人数が少なくても、AIを活用することで十分に回る。これは、土屋さんがマーケティング組織がなかった時代に、1人で業務を担っていた状態の“拡張版”が可能になるということです。

多能工化が進むなかで、「ここだけ知っていればいい」という人材の価値は徐々に下がっていく。もちろん、すべてを深く知ることはできませんが、広く浅くでも基礎的な知識を持ち、「いま話しているのはこの領域の話だな」と理解できるレベルになっていないと、仕事になりづらくなっていくと感じています。これは、事業会社であっても、支援側であっても同じだと思います。

あらゆる組織でAIネイティブ化が前提になる時代

山口:最後にまとめとして、先ほどもお話しした内容と重なりますが、内製化すべきは全体像の設計であること。そして、AI時代であっても、高額な投資の意思決定や、社内の横断的な調整といった人間にしかできない仕事は残ると思います。

一方で、制作・運用の業務に関しては、AIを活用することで内製化比率を高めることが可能であり、実際にその方向に進んでいるのが現状かなと思います。

司会者:ありがとうございました。自分自身の整理にもつながりました。

それでは、最後に各社さまからのお知らせに移らせていただきたいと思います。まずは、グッドパッチさんからお願いいたします。

土屋:今日のテーマにもありましたが、これからはあらゆる組織が「AIネイティブ」になっていかなければならない時代だと思っています。私たち自身も、社内でAIを積極的に活用しながら取り組んでいまして、そうした知見をワークショップ形式で提供する取り組みを始めています。もしご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

司会者:続いて、グロースXさんからもお願いいたします。

山口:グロースXでは、AIの企画活用を学ぶ6ヶ月間の研修カリキュラムをご用意しています。ただ、私たちは「AIの知識だけあっても、マーケティングの基礎知識、顧客体験の施策に勘所がなければ実践は難しい」と考えていまして、その両方が必要だと思っています。

そのため、6ヶ月間でマーケティングの基礎を学べるeラーニングアプリと、月1回のビデオミーティングによる振り返り研修を組み合わせた人材育成ソリューションをご提供しています。

マーケティングの基礎、またはAIの基礎を、組織としてしっかり根付かせていきたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひ「グロースX」と検索のうえ、お問い合わせいただければと思います。

司会者:ありがとうございました。以上をもちまして、本セッションを終了とさせていただきます。私自身も非常に多くの学びがあり、初めての視点や気づきもたくさんありました。とても勉強になりました。あらためまして、山口さん、土屋さん、本日はありがとうございました。

山口・土屋:ありがとうございました。

▼主催
株式会社Digital Arrow Partners

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!