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生成AI時代にマーケティング組織をどうデザインするべきか?(全3記事)

“老害側”にならない管理職の条件 AIに“触れる回数”をKPIに組み込む [1/2]

【3行要約】
・生成AI時代でマーケティング組織の変革が求められる中、従来の役割分担や体制をどう再構築すべきかが課題となっています。
・OpenAIの組織構造を分析すると、CMOが短期成果を、CCOが長期ブランド戦略を担う明確な役割分担が見えてきます。
・AI活用による業務効率化と人材育成の両立を図りながら、顧客接点の強化と新ツールへの適応力を高めることが重要です。

前回の記事はこちら

OpenAIに見るCMOとCCOの役割分担

司会者:今のお話と少しかぶるかもしれませんが、次のテーマに移っていければと思います。テーマは「生成AI時代のマーケティング組織の体制はどうなるのか?」です。ここまでの話がすでにほぼ答えになっているというか、「組織は縮小していくのではないか」といった点も出てきた気がします。

その中で、「シニア中心か? ジュニア中心か? どうすべきか?」という点についても、ぜひうかがいたいと思います。では、お願いします。

土屋尚史氏(以下、土屋):ちょっと1つ、ネタ的な話なんですけど。このテーマに若干つながる話を投げ込んでもいいですか?

司会者:もちろんです(笑)。ぜひお願いします。

土屋:OpenAI。いま、生成AI時代において最先端の企業といえば、やはりOpenAIだと思うんですが、そのOpenAIのCMOって知っていますか?

山口義宏氏(以下、山口):知らないですね。

司会者:調べたことないです。

山口:「それはAIだ」というオチにしか聞こえない前振りに見えますね(笑)。

司会者:(笑)。

土屋:いやいやいや(笑)。これは僕がこのセッションの直前、10分くらい前にChatGPTに聞いて調べた話なんですが、すごくおもしろいと思ったので共有させてください。OpenAIのCMOは、元CoinbaseのCMOで、その前はFacebookやInstagramのマーケティング部門でVPを務めていた方なんですよ。

さらにおもしろかったのが、CMOの他にChief Communication Officer、いわゆるCCOもいて、このCCOはApple出身なんです。で、ここがポイントなんですが、CMOはCOO(Chief Operating Officer=最高執行責任者)にレポートしていて、CCOはCEO(最高経営責任者)にレポートしているんです。この構造の違いがすごくおもしろいなと。

山口:あー、なるほど。おもしろい。

土屋:いわゆるCXOの中でも、マーケティングとコミュニケーションが分かれている。そのうえで、レポートラインがCMOとCCOで違うというのは、企業としての力の入れ方や重視している領域の違いを如実に表している気がして、すごくおもしろいと思ったんですよね。

OpenAIが向き合う可能性のあるリスク

山口:おもしろいですよね。想像でしかないですけど、いわゆるCMOとChief Communication Officer(CCO)違いについて、僕は厳密な定義を知っているわけではないんですが、CMOはやはり「今月」「今期」「このクォーター」といった目先の成果、数字が求められる立場で、COOとタッグを組んで足元の結果を出す役割なんだろうなと。

一方で、「ブランディング」や「長期的な資産をつくるコミュニケーション」のような領域は、CMOではなくコミュニケーション側、つまりCCOが担っているのではないかと感じます。

土屋:そうですね。

山口:僕の想像ですが、OpenAIにとって一番大きなコーポレートリスクは、「AIそのものが人類の雇用や生活を破壊する存在として悪評を受ける」ことなんじゃないかと思うんですよ。

さっき土屋さんとも話しましたけど、本当にAIが人々の生活や文化、雇用を壊してしまった時、社会の敵として見なされるような忌避のフェーズが来る可能性は、けっこう高いと思っています。

そうした時に「AIは悪者だ」という世論が一気に広がってしまうリスクがある。例えばAmazonって、日本の文化を尊重するような広告コミュニケーションをすごくやっているじゃないですか。あれって、広告としても機能しているけれど、同時に日本の文化をリスペクトしている姿勢表明によって企業の評判の「守り」の側面も大きいと思っていて。

というのも、Amazonは日本における書店の廃業を加速させているという批判を受けやすい存在でもある。そのため、「日本市場をちゃんと愛している」「日本のユーザーを尊重している」という姿勢を、広告やPRで示すことによって、レピュテーションを守ろうとしているのではないかと。

でもこれって、「今期の売上」や「目先の経営指標」に直結する話ではない。完全に長期視点のリスク管理の投資ですよね。

だから、土屋さんがおっしゃったような取り組みって、短期ではできないけれど、確実に経営にとって意味があることなんです。そう考えると、経営の時間軸でいうと、CEOは相対化すれば比較的長期、COOは短期での成果単位で物事を見ている。そうした役割分担の中で、CMOとCCOのレポートラインの違いが象徴的に現れているように感じました。

ブランディング重視の組織配分

土屋:そうですね。いや、まさにそれをすごく表しているなと思っていて。しかも、おもしろいのが、そのチームの人数が、コミュニケーションとブランドのほうが多いんですよ。

司会者:へー。

土屋:すごくないですか、これ? コミュニケーションやブランドのチームが50人以上いて、マーケティングとGo To Marketのチームが30人とか40人って、今出ているんですよね。

山口:えー!?

土屋:つまり、ブランドやコミュニケーションのほうに、より多くの人数、リソースが割かれているという事実があるんです。

山口:たぶん、それっていわゆるPLG、Product-Led Growthっぽいやり方なんでしょうね。OpenAIって、通常の広告とかあまり見かけないじゃないですか。

土屋:見ないです、見ないです。

山口:ですよね。こっちがPLG型だとすれば、マーケティングチームをガンガン膨らませるというよりは、プロダクトを中心に成長させていくスタイル。となると、プロダクトチームの中にマーケ的な役割やリソースが含まれていて、そこに厚みを持たせている可能性もありますよね。

土屋:日本だと、ブランディングのチームのほうが手厚いって、あまり聞かないですよね(笑)。

山口:ないですね(笑)。それはもう、超強力なプロダクトがあって、しかもPLGが成立しているという、すごく特殊なケースなんじゃないかと思います。

土屋:そうですね。いや、すみません。めちゃくちゃ脱線しちゃって申し訳ないです(笑)。でも、こういう話ってすごくおもしろくて。最先端の企業、特にAI企業のマーケティング組織がどうなっているのかを調べると、ちょっと未来が見える感じがしますよね。

山口:示唆に富んでますね。

土屋:そのうえで、ちょっと話を戻しましょうか。

司会者:ありがとうございます(笑)。けっこう衝撃的な数字だった気がしますね(笑)。でも、今後AIに代替される仕事、されない仕事という観点から考えても、そういう方向に進んでいく可能性はありそうだなと感じました。

マーケティング組織の体制はどう変わっていくのか

司会者:ただ、もう少し現実的なところで、例えば「組織図」や「体制」はこれからどう変わっていくのか。山口さん、そのあたりで「こうなっていくんじゃないか」と感じていることはありますか?

山口:基本的に、ジュニアがいなくなることはないと思っています。ただ、ジュニアが担っていた作業や、頭数が必要だった理由は確実に減っていくと思います。

一方で、「じゃあシニア人材だけで構成すればいいか?」というと、それも現実的ではない。そもそもシニア人材って、そんなにマーケットにいないんですよ(笑)。各社ともシニア人材を採用したくてもできず、1人も見つからずに困っている会社がたくさんある。だから、「経験豊富な人が少人数いればいいよね」という構想は理屈としては正しくても、シニア人材だけで固めるのは実現性としては難しいと思います。

とはいえ、「ジュニア+AIですべて解決」みたいな話でもまったくないんですよね。例えば、社内でメルマガを作りましたとか、PLを作りましたとか、AIの力を借りてジュニアがアウトプットしたものを最終的にチェックしてみると、フィードバックポイントはいくらでも出てくるんです。

なので、構成比という意味では変化があると思いますが、組織の構造自体が劇的に変わるかというと、そうでもない。ジュニアの数は相対的に減っていくかもしれませんが、「生成AIでジュニアがいきなり最強になる」みたいな幻想は、ちょっと違うんじゃないかと思っています。

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