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生成AI時代にマーケティング組織をどうデザインするべきか?(全3記事)

外注費にかかる“値下げ圧力” AI効率化を説明した瞬間「じゃあ安くして」が返りやすい実態 [2/2]

生成AIを使い倒すCMOは“実は1割未満”

司会者:土屋さんはいかがでしょうか?

土屋:僕らは、いわゆるCMOというタイトルを持った人材が、まだ会社にいない状態です。

このテーマをもらって、僕も事前に少し調べたんですが、実は全体のCMOマーケットの中で、27パーセントの人が生成AIを「まったく使っていない」と回答している、という海外の記事がありました。

それを見て、山口さんにぜひ聞いてみたいなと思っていたんですが、実際に山口さんが関わっている企業の中で、「この人は本当に生成AIを使いこなしているな」と思えるCMOの方って、具体的に思い浮かんだりしますか?

山口:おぉー! かなり限られますね(笑)。導入先の具体的な企業名については、NDAの関係で言えないんですが、「この人は相当ちゃんと使い倒しているな」と思える方は、肌感覚でいうと……。僕のバイアスもあるかもしれませんが、片手で足りるくらいですね。せいぜい5、6人。割合で言うと1割いないくらいの印象です。

土屋:生成AIへの取り組みについては、年齢やジェネレーションの差もけっこうあるんじゃないかなと思っていて。

山口:あ、確かにありますね(笑)。

土屋:エンタープライズ企業のCMOって、やはり40代後半とか50代の方が多い。一方で、スタートアップのCMOはもっと若い世代なので、そっちはライトに使っていくイメージが湧くんですが、エンタープライズ企業のCMOで、実際に使っている人って、いますか?

山口:個人としてテクノロジーに関心があり、「使ってみたらすごいな、これ」と思って、自発的に触り始めて深めるパターンぐらいしかない印象ですね。

おっしゃるとおり、大きい会社でCMOになると、自分で手を動かさなくても、会議でフィードバックしていれば物事が進んでしまう体制ができあがっている。自分がやらなくても、部下や取引先の広告代理店が動いてくれる状態です。

AI効率化を説明した瞬間“じゃあ安くして”が返ってくる

山口:それに加えて、大企業特有の構造として、AIに対して“自分事化”しにくいところがあるとも感じます。例えば、今日も生成AIに関するセッションがいろいろありますが、広告主や事業主側の視点で見ると、「支援側の会社から広告代理店の工数が効率化された分、外注費が下がるんじゃないの?」みたいな目線で捉えている方もかなりいる(笑)、ということもあるなと。

土屋:まぁ、そうですよね。

山口:というのも、マーケティング支援側の人がAI活用による効率化を熱く語ったあとに、「AIすごいね、すごいね」「それで浮いた分、うちに請求されるフィーは下がるの?」みたいな雰囲気になる話は、よく耳にします。つまり、AIを“外注コストダウンのトリガー”として見ることが増えるなと。

土屋:仮に僕がCMOだったとしても、やっぱりそこに一番意識がいってしまう気はしますよね。例えば、これまで10人で回していたマーケ組織が、「生成AIを使いこなせれば、もっと人数を減らせるんじゃないか」と考えるのは、自然な流れかなと。

山口:おっしゃるとおりですね。以前は10人必要だったのが、5人でも回せるんじゃないかと。もちろん現場からすると、「そんなことはない、大変なことは山ほどある」という反発は出てくると思います。やること自体も増えていくので。ただ、経営層からすれば、少ない人数で多くの施策が回せるようになると見えるわけで。まさにそのとおりだと思います。

“10人で回していた仕事を5人で回す”時代に採用需要が縮む

土屋:結局、アウトプットというか、使いこなせるCMOとそうでないCMOとの間では、試行錯誤の回数に圧倒的な差が出てくる。その結果として、マーケティング組織のリソース配分そのものも、将来的には大きく変わっていきそうですよね。

山口:確実に採用のデマンドは減ると思います。今って、海外ではエンジニアの採用数が減ってきているじゃないですか。それがマーケティング領域でもどのタイミングで起きるかどうかはわかりませんが、時間の問題だと思うんですよね。

マーケティングって、基本的には人材需要の拡大に対して供給が追いついてこなかった分野なんです。だからこそ、「マーケはやったことない人だけど、研修してから人材紹介します」という人材育成+紹介のビジネスが伸びてきた。でも今後は、その“デマンド”、つまり人材需要そのものが変わっていくんじゃないかと見ています。

土屋:これは別にマーケターだけじゃなくて、デザイナーもエンジニアも、コンサルも含めて、みんなそうですよね。

山口:そうですね。より少人数で成り立つようになっていく。海外のニュースでよく言われるような、「スタートアップが少ない社員数のまま時価総額はユニコーン」とか、「ほんとにできちゃう会社あるよなぁ」という感覚は、実感としてあります。

2〜3週間かかった準備が“会議1本”で動き出す

山口:自分の中で「(生成AIの活用で)これは本当にすごいことが起きているな」と象徴的に思った出来事があります。

自分がプレイヤーではなくマネジメント側として経験したことですが、グロースXのマーケティング会議で、Who-Whatの話をしながら「最近の顧客ニーズはどう変わってきているか?」「本当はこういう仮説が試せていないんじゃないか?」「今まで投資していなかったプロダクトにも注力したほうがいいのでは?」みたいな議論を1時間ほどしたんです。

その会議中に、その流れを聞きながら、メンバーがリアルタイムで整理を始めていて、LPのひな型の叩き台やメルマガ、記事の下書きまで同時進行でつくっていたんですね。

その様子を見た時に、「これは本当にすごいな」と感じました。「じゃあ、これを進めよう」と判断したら、記事とLPの叩き台が出てくるわけです。LPまで含めると、外注パートナーを使えばふつうは2〜3週間は軽くかかるような仕事です。

でもその叩き台が、たとえ人の手よりは完成度が劣る60点だとしても、会議が終わらないうちに出てきて見せられると「これはもう革命だな」と思うんですよね。そこから人の手で仕上げれば、数日後には実装できたりする。1週間以内には新しいことが試せる状態が整う。がんばれば、数日でいけます。気合いを入れれば。

それって、かつては考えられなかったような速度とコスト感だと思うんですよ。時間もお金も、劇的に下がっている。ほんと、そういう変化が起きています。

▼主催
株式会社Digital Arrow Partners

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