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限られた時間で成果を出すマネジメント術(全2記事)

“がんばりすぎる上司”が職場を壊す 「有能な怠け者」に学ぶ、マネジメント再入門 [1/2]

【3行要約】
・経営学は一部のエリートだけのものと思われがちですが、本来すべての人が学ぶべき「正しい道理を営む」知恵です。
・YouTuberでもある経営学者・中川功一氏は、ドイツ軍人ゼークトの理論を引用し、組織運営の新たな視点を提示。
・有能な人ほど一人でがんばりすぎる傾向があるため、意識的に「上手に怠ける」ことで職場の恨みを避け、真のリーダーシップを発揮すべきと話しました。

「経営」とは「正しい道理を営む」こと

赤坂美保氏(以下、赤坂):中川先生は、経営学者でYouTuberということで、先生から、ここだけでしかお話しできない過去の出来事を簡単にお話しいただければと思います(笑)。

中川功一氏(以下、中川):私はもともとは大阪大学で経営戦略論とかを教えていました。みなさんぜひ今日持ち帰っていただきたいことがあって、それは「経営ってどういう意味か?」なんですね。

仏教の中には「お経」とか「写経」とかあるじゃないですか? 「経」という字は仏教の中でもすごく大切な意味が与えられている言葉なんです。

じゃあ、「経」は何なのか。「経」というのは、物事の正しい道理や筋道が通っていること、みたいな意味なんですね。それで、それを読むのが読経、書くのが写経、書物になっているのが経典で、それを営むのが「経営」なわけですね。

経営学はすべての人のためにある

中川:そのように考えると、「物事の正しい道理を営んでいく」というのが経営で、大阪大学で教えるというのは大変有意義な仕事でした。これ自体はもう本当に意味のある仕事だと信じて疑っていませんでした。

私の信ずるところ、この経営学というのは、例えば沖縄の離島で地元のインフラを支える会社さんの経営の存続のために使うべきものだし、襟裳岬の先端で地元の人たちのお仕事を支えるNPOさんが使うべきものだし、能登の人たちが使うべきものだし、岡山の人たち、愛媛の人たちが、みなさんが使ってこそだと思います。

まぁ、受験勉強を勝ち抜いてきた50人に経営を授けていくのではちょっと物足りなくなったというのが一番大きいところです。この経営という概念が、願わくは日本の隅々まで、日本のみならず世界の隅々まで行き渡ればいいなということで、こうしていろいろな場を借りて経営学の普及をしていきたい。

そんなことを思ったら、大学にいられなくなりました。ビジネスを勉強したいと言うと、「ほんなら、200万円か300万円用意してくれる?」「TOEICで800点ぐらい取ってくれたら」「倍率5倍をくぐり抜けてくれる?」と。

そういうもんじゃないでしょうと。学びたい意欲がある人すべてに開かれるべきだと思いまして、今、「やさしいビジネススクール」というオンラインの経営スクールをやっています。

経営の出発点は「自分の幸せ」

赤坂:いやぁ、お経から始まるのがすごくびっくりしたんですけれども。今日のタイトルもなんですけれども、マネジメントや経営って、なんかすごく高飛車な感じがして。

草の根の人が、すごくがんばって何百万円、何千万円をかけて海外へ行くとかしなくても、ちょっと話す言葉を変えるとか、ちょっと違う行動をすることで、きっと大きな変化が起こるんじゃないかというところがすごく私も共感しました。

中川:おっしゃるとおりだと思います。経営と言っても一番大切なのは、今日の話にも出てくるんですけども、自分が幸せになることですからね。

世の中にとって正しい道理を営んでいく時に、自己犠牲が正しいことじゃないんです。お客さまには最大限の価値を届けて、働き手には最大限の働く喜びを届けて、金融機関さんの約束を違えず、お取引先さんに「一緒に仕事をしていて楽しい」と言ってもらえる。そのステークホルダーの中に自分自身も入っているわけですから。

きちんと笑顔の輪を作っていくというのが経営である時に、まず自分が幸せにならなくちゃということかなと。しかつめらしくやってすべてに厳しくあることが大切なのではなくて、みんなが笑顔になれるように。その一番の起点が自分という意味で言うと、すべての人にやはり知ってもらいたいことだと思います。

まず“自分が幸せになること”が、マネジメントの出発点

赤坂:いや、もう間違いないですね。今日のタイトルにマネジメントって付けるのに少し悩んだんです。マネジメントって、すごく嫌々やるみたいなイメージがあるかなって思って。

でもマネジメントを(タイトルに)ちょっと付けてみようということで、今日のタイトルは「マネジメント」なんですけど、それは何かといったら、まず自分が幸せになることなんですね。もうこれは間違いないなと思っています。

「自分もみんなも幸せになるために、ちょっと知恵があるといい感じになるんじゃない?」というところで、今日、中川先生にお知恵をいただけるんじゃないかと思っているんですが、バッチリでしょうか?

中川:はい。みなさんぜひ、ここまでの内容でもここから先の内容でも、感想、コメント、ご質問など気軽にいただけましたら大変うれしく存じます。

赤坂:はい。ぜひぜひ。もう本当、「わっ、すごい!」とかそんな感想でもいいので(笑)、ぜひコメントなどください。

ではさっそく本題ですが、私たちのこのイベントに来られている人は、ほとんど子育てをしながら仕事をしています。「時間がない」という悩みが一番多いなと思っているんです。

そこで中川先生、自分も人も社会も幸せになるようなマネジメントについての知恵をぜひお願いします。

組織を任せるのに大切なのはどんな人?

中川:じゃあ、本日のテーマに入っていきたいと思います。(スライドに)子育て世代と書きましたが、それは象徴的な言い方で、忙しい現代人のために、限られた時間の中で結果を出すためにはどうすればいいのかという話をしていきたいと思います。

みなさんの問題関心も専らここだと思うんですよ。このめちゃくちゃ忙しい中で、まず第一にセルフマネジメントが大切な時代だと私も思うのですが、今日はそのセルフマネジメントの考え方、やり方の一番基本になってくる部分をお話しできたらなと思います。

ドイツの軍人さんにゼークトさんという人がいます。軍人が話に出てくると、ちょっといろいろ考えてしまったり匂ったりするものがあるんですけど。でも言っても、人の生き死にとか社会の責任を非常に重く担った組織体にあって、やはりそこが健全にマネジメントされているのはとても大切なことなんですね。

そのゼークトさんが、2軸あると言っています。「有能である。無能である」「働き者である。怠け者である」と言った時に、ぜひ赤坂さんにうかがいたいんですけれども。

赤坂:はい。

中川:この中で、組織を任せるのに大切なのはどの枠だと思いますか?



赤坂:もうMBA的に答えさせていただきますが(笑)、もちろん働き者で有能な人じゃないかなと思います。

中川:こっちの振りをわかっていたような対応、本当にどうもありがとうございますという話なんですけど(笑)。

赤坂:(笑)。

中川:そう。当然、有能な働き者が大切だと思われると思います。そして、一番良くないのは無能な怠け者かなと思うんですけど、これに対する新しい見解を提案しているのが、このゼークトさんという人なんですね。

赤坂:新しい見解?

“有能な怠け者”こそ、トップにふさわしい

中川:まぁ、有名な話なので、よく「有能な怠け者が大切なんだ」みたいな表現で知られている概念だったりしますが、これの元ネタがこのゼークトさんです。

会社のトップオブトップは、あるいは組織体のトップオブトップは有能な怠け者こそが大切なんだと。もちろん有能な働き者も大切なんだけども、この人たちは指揮官の下で働く人たちで、サポートする役割が有能な働き者。問題はこの下なんですよ。



赤坂:(笑)、「排除せよ」って書いています。

中川:そうなんです。例えば人の生き死にとか安全とか、組織の命運を担っているような状況で、無能な働き者の働き方が、組織の生産性を下げてしまったりパフォーマンスを下げてしまうことがある。

すごく善人であって一生懸命がんばってくださっているんですけど、これじゃあ、まずいなというのがポイントなんですね。能力がないと思っているなら、逆に考えたり何かするのではなくて、むしろ怠けてくれたほうがいいと。

赤坂:斬新な考え方ですね。

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