【3行要約】・ハラスメント対策と報連相は別々の問題に見えて、実は「言語化」という共通の課題を抱えている場合があります。
・現代のビジネス環境では価値観の多様化により、自分の「当たり前」を押し付けることがハラスメントにつながるリスクが高まっています。
・管理職は自分の考えを言語化する能力を磨き、報連相の「型」を明示的に共有することで、心理的安全性と組織のパフォーマンス向上を実現できます。
前回の記事はこちら その人ならではの「当たり前」を言語化する
三上真央氏:次です。「『うちの会社はハラスメントとかの相談がまったくないです』と、ある中小企業の社長がテレビのインタビューで勝ち誇ったように言っていました。これはただ従業員がセカンドハラスメント報復を恐れているだけであり、『おかげさまで弊社では通報が多く、大変ありがたいです。みなが1つになれる実感があります』と言える企業こそ真のエクセレントカンパニーだと思いますが、どうでしょうか?」。
おぉ、おもしろいことを言いますね。社内通報できる環境にあることが一番だと思っています。
多くの社員ハラスメントとわかってるんだったら、ハラスメントしないわけじゃないですか。ハラスメントとわからずにやっちゃう方っていらっしゃると思うんですよ。
やはり時代によっての価値観の違いもあれば、その方ご自身の当たり前を押し付けている可能性もあるんですね。なので、その当たり前とかを言語化しないといけない。
ハラスメントをやらない・やるにあたって、前提として「あなたの『部下はこうあるべきだ』の当たり前って何なんですか?」を言語化しないといけない。それを持った上で、「それが今の価値観に合っているのか? コンプライアンス的にどうなのか?」を調整していくプロセスが必要だと思っています。
果たしてそこの言語化ができているかっていうところですね。ただおっしゃるとおり、そういう通報がちゃんとできるガバナンスが整っている、仕組みがあるのは非常に大前提として重要なところでございます。ありがとうございます。
管理職を“演じる”
「上司たちの温かい笑顔とまろやかな言葉が必須だと思っています。『生まれながらにこんな表情でぶっきらぼうな言葉なんだよ』はまったく理由になりません。『俺は生まれながら人をだますのが当たり前なんだ』と言っていたら、平気で人をだますこととかにつながると思っています」。
まぁ、そうですね。管理職って、けっこう難しいですよね。いろいろなマインドだったり素養だったりあると思うんですよね。意識してほしいのは、管理職はちょっと演じてみるのもいいんじゃないかなと思っていて。
ちょっと口角を上げて話してみるとか、あるいは表情がぶっきらぼうで堅いっていう印象があるのであれば、仕事をしている途中に表情筋を使うと疲れちゃうと思うので、「今この時間だったら何でも質問してもいいよタイム」みたいなのを作ってみてもいいと思うんですよ。
あえて自分から「もう、ウェルカムだよ」っていう状態を、表情だけじゃなくて、環境とか仕組みで作るのもいいかなと思っています。
私も表情筋が硬いので、あまり笑顔を作れないんですけど、あえて言葉尻とか使い方とかを柔らかめにするように工夫したりしています。ありがとうございます。
上司の言語化能力は意外と大事
「なぜ最初に『〇〇のことを書いておいてくれる?』というふうに具体的に指示できないのでしょうか? 管理職は部下のマインドを上げるために何が大切か明確に伝える必要があると思います。上司は心理学を少し学ぶべきだと思いますが、どうでしょうか?」。
ありがとうございます。学んでおいて損はないと思います。ただ心理学ももちろん重要なんですけれども、上司の方の言語能力、言語化をどこまでできるかっていうスキルが意外と大事だったりするんじゃないかって思っていて。
アウトプットの仕方として心理学を学ぶのは重要なんですよ。ただ、そのアウトプットの前提として「どこまで自分の意見を言語化できていますか? 指示を言語化できていますか?」っていう話なんですね。
そこの観点もしっかりやった上で心理学を学べば、むちゃくちゃいい管理職だと思っています。心理学もいろいろありますよね(笑)。ありがとうございます。
「考える」と「悩む」は違う
「『5分経ってもわからない』の5分ってかなり早い時間ですよね。1つのプロジェクトの目安でしょうか?」。
その意味でいうと、資料を作ってもらうとかの業務をしてもらうわけじゃないですか。もちろん納期がありますよね。納期までに作ってもらう、レビューまでに作ってもらうと区切る中で、レビューをした後にも資料を作ってもらうと思うんですけれども、その中で「5分経ってわからなかったら」っていうイメージです。
ここは会社さんによってさまざまかなとは思うので、やりやすいようにやっていただければなと思っています。弊社は1つの作業とか業務をやってもらうのに、「5分経っても手が進まなかったら聞け」っていう感じです。
「悩むと考えるって違うんだぜ」っていうところですよね。「考える」だったらすぐ出てくるはずなんですよ。「悩む」って、ずっと悩んでいてもずっと進まないんですよね。
それってたぶん情報のインプットの仕方ができないとか、あるいは発想がそもそも浮かばないとかもあると思うので、それなら一緒に付き合って発想を広げる訓練をするのがいいかなと思っています。
上司と部下で一緒に「報連相の型」を考える
「ミーティングで若手の社員に対して『報連相ができていない』と叱責している上司がいます。その叱責している上司もさらに上司には……。いつも見ていてかわいそうなのですが、その場面でかけてあげられる言葉ってありますか?」。
あらら、報連相ができていないんですね。私があまり人間に対して気を遣わない人間というか、けっこう躊躇なく言っちゃうとこがあるので……。
その上司の方だったら、「○○さんが思う報連相のイメージってどういうイメージですか?」と。若手だとまだその型が身についていないので、「できればちょっと手本とか目安みたいなのを示してくれませんか? 基準があるのなら教えてください」って聞いちゃってもいいかなと思っています。
もしそれで叱責するとかだったら、ご質問者の方とかが部下の方と一緒に型を考えるという調整もありかなって思っています。
上司がとやかく言うんだったら「じゃあお前は基準を持っているんだよな?」って突き詰めてもいいと思っています。それで出てこないんだったら、「なぜそれなのに叱責するんですか?」っていう話なので。不平等じゃないですか。なのでそこはぜひ聞いてあげてください。
「報連相が適切にできる環境づくり」を行動軸に加えても良い
最後のまとめも言っておきますね。
「そもそも報連相はなぜ重要なのか?」っていった時に、変化が前提となり、多様な人材が働いているからこそ、こまめな状況共有だったり方向性のすり合わせだったりが、柔軟にかじを切るための鍵となります。
齟齬が生じる理由としては、情報伝達の質に起因する齟齬と、心理的要因に起因する齟齬がございます。認識齟齬を防ぐためには、個人の感覚ではなく、組織の目標や価値観に基づいて基準や範囲、粒度を考えてください。そうすると組織の文化が作られるのでね。
「若手が伝えられないのは?」っていったところでいうと、報連相は聞く側の対応も重要です。報連相はあくまで戦略であって、組織全体の変化対応力を高める育成ツールでございます。なので、感情とか機嫌とかで左右されるような、そんなくだらないものじゃないです。
マネジメントとしても、報連相が適切にできている環境を作れるかを、行動軸に加えてもいいぐらいだと思っています。なのでそこをぜひ気をつけていただけたらなといったところで、私の話は以上とさせていただければと思います。