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「報連相しろ」で止まってない?感覚任せの伝達をやめる“すり合わせ”の技術(全6記事)

「報連相がうまくいかない=伝える側のスキル不足」ではない 心理的壁も影響するからこそ上司ができること

【3行要約】
・報連相は組織の変化対応力を高める戦略的ツールですが、多くの職場では上司の不適切な対応により機能していません。
・三上真央氏は報連相を「変化に強い組織を作るための戦略」と位置づけ、俯瞰的視点での言語化能力の重要性を指摘しています。
・管理職は部下の報連相に感謝し、適切な問いかけで気づきを促すことで、組織全体の変化対応力を高める育成の機会として活用しましょう。

前回の記事はこちら

報連相は単なるマナーではない

三上真央氏:次、「新卒・若手が“伝えられない”のはスキルの問題ではない」。ここにそんなに課題感があると思っていなかったので、時間的な都合で情報量はないんですが、質問とかにもお答えしながら見ていこうかなと思っています。

報連相がうまくいかないのは、伝える側のスキルが不足しているからだと往々にして言われがちですが、今まで見てきたように、そもそも心理的壁とか聞く側の姿勢に問題があるっていうのは注意する必要があります。

言われたとおりに報連相をしているのに怒るとか、「忙しい」とか、「自分で解決しろ」とか。本末転倒じゃないですか。そうなると次第に口を閉じてしまう。聞いてもいい雰囲気、姿勢になっていないっていったところですよね。

あとは、わからないことがわからない。上司もサポートの仕方がわからない。それじゃあ意味がないわけで、未知の未知への状態に対応できないのも悩ましい問題だと思います。

あらためてお伝えしますが、報連相って単なるマナーじゃないですよ。変化に強い組織を作るための戦略です。戦略の方向性は上司が考えるだけじゃなくて、報連相を行うことが、部下の成長と自律を促していることも意識していただければと思っています。

報連相には俯瞰的な視点も求められる

どういうことかっていうと、報連相って簡単そうに見えるんですけれども、単に事実を伝えるだけじゃなくて、上司は何を知りたいか、その情報が組織全体にどう影響するかっていう俯瞰的な視点もけっこう求められると思うんですよ。そうじゃないとそもそも報連相ってできないですよね。

なので、モヤモヤを簡潔に正確に言葉にする取り組み、言語化する力を鍛えます。これは自身の思考を整理し、他者に明確に伝える上で不可欠なスキルであって、自律的な問題解決能力の土台となります。

とすると、部下の方が変化に強い人材になってくれるためには、全体的な俯瞰の視点で言語化できるふうに育て上げないといけない。上司は聞く態度だったり質問の広げ方だったりがむちゃくちゃ大事になってきます。

報連相は組織全体の変化対応力を高める育成ツール

「まず何が大事なの?」っていったところでいうと、報連相してくれた方に関して感謝してください。「わざわざ言語化して報連相してくれたんだよ」っていうところで、まずは感謝をしましょう。

あとは、未知の未知を既知に変える問いかけとか情報提供を考えてみましょう。例えばわからないことがわからないって言われた時に、「どこでそう思った?」とか「どうしたい?」とか、全体像に関わる情報とかを提示するのは1つ手としてはありますよね。

いつどのように報連相を行うかといった状況判断能力と、未知を既知に変える問題発見・解決能力。そして相手に的確に情報を伝えるコミュニケーションスキルが身につくっていうところで、報連相って、実は組織全体の変化対応力を高める育成ツールであるという意識を持ってほしいんですね。単に上司の機嫌で左右されるようなものじゃないよっていうところなんですよ。

管理職として向いている人間を任用できているか

ということを前提とした上で、みなさまのチャットとかQ&Aとかを見ていけたらと思っています。

「報連相が大切なのは誰もがほとんど理解していると思いますが、部下が細かく経過や問題点・改善点を上司に報連相したら『そんなこと自分で考えろ!大学出たんやろ!いちいち確認するな!』とか一蹴し、悪い結果になったら後付けで部下を叱責し、『俺は責任取らないからな!』と言いと、まったく心理的安全を理解していないと思います。

私は、そんな体質の企業は5年先はないものと思っていますが、この上司の意識改革が出来ていないと、はっきり言って結果、利益につながらがず、ステークホルダーから見捨てられます。このあたりの上司・役職へは、テスト必須の実地研修が求められると思います。アンコンシャスバイアス払拭も必須だと思いますが、どうでしょうか?」。

アンコンシャスバイアス、たぶん「大学を出ているんだったらそんなことできるだろう」っていう偏見みたいなかたちですかね。

というよりも、そもそも管理職として向いている人間を任用できているかは考えていただけたらなと思っています。もちろん人手が足りないから仕方なく管理職をやらせているところはあると思うんですけれども、そもそも管理職として素養がある人間を任用できているかがまず前提です。

その意味でいうと、「人手が足りなくて仕方なく任用しているんだ」とか「プレイングの素質があるから任用している」とかだと、意味がないんですよ。プレイングできるからマネジメントができるっていうわけじゃないので。

そういう意味でも、そこの教育をどうしていくか。おそらく「そんなこと自分で考えろ。大学出たんやろ。いちいち確認するな」とかって言ってくる方って、たぶんちゃんと仕事をしていないんじゃないか(笑)。

「責任を取らない」とかって言っている時点で管理職の素養はないので、そういう意味だと、任用の基準と育成の仕方は見直す必要があるだろうと思っています。

上司が変化を受け入れる環境・状態を作る

こういう方って、おそらく過去の成功体験とかに縛られている方とかも多いのかなって思うので、部下の方が変化に適応できる状態を作るっていうよりかは、上司の方が変化を受け入れる環境・状態を作るための育成をしないといけないと思います。

そういう意味だと、こういう方ってけっこう仕事に対してのプライドが高かったり、思い上がっている方もいらっしゃる可能性があるんですよね。

そうすると、彼らが今までの地位に行くまでにどういう仕事をしてきて、どういうところに誇りを持ってきたのかをあえて言語化して思い出させるプロセスをやっていただくと、意外と「あっ、自分たちでこんなにがんばってきたんじゃねぇか」みたいに前向きになる可能性はあります。

どういう叱責がダメなのかを考える

次にいってみましょう。「管理職はしっかりと注意しなければいけないと思っています。部下を叱責するのはもはやパワハラ・モラハラにつながります。このあたりの管理職の理解不足は離職率が下がらない要因と思っていますが、どうでしょう?」。

おっしゃるとおりです。私、実はハラスメント研修を以前やらせていただきまして。ハラスメントだと見なす基準がバラバラだったりしますよね。なので「部下への叱責がハラスメントだよ」っていうところで、どういう叱責がダメなのかを考える必要があると思います。

例えば、わざわざ「馬鹿だ」「何もできてねぇじゃねぇか、この野郎」とか、業務においてそんな強い言い方をする必要ってありますか? 命に関わる状況だったら別だと思うんですけど。

「そんな人格をおとしめるようなことって言わないといけないんですかね」っていうところ。そこの基準が合っていないんじゃないかなと思っていて。

基本的にハラスメントって人権の問題なので、まず人権の最低限の基準を守ってくださいねっていうところは、研修でも意識づけすることが大事だと思っています。

それを実践でやらせると余計な問題が起こってしまうので、研修の場でケースワークとかをやるんですよ。「こういう状況だったらあなたはどういう声かけをしますか? どういう伝え方をしますか?」と問いかけます。そうするといろいろ出てくるわけです。

おそらく認知が偏っている方とかもいらっしゃると思うので、その調整を研修の中でやるのが大事だと思っています。

部下への指導で大事なのは公平性・平等性

「質問相談をしっかりと受け入れる管理職。これはDE&Iのうち、「I」にあたる「Inclusion」につながりますが、会社は外向けにはDE&IをPRしていて、会社内はNG。中と外の乖離は、もはやSNSとかで問題になる可能性があるというリスクを、どうして考えることができないのでしょうか?」。

「NG、中と外の乖離」って何だろう? 質問の意図が理解できていなかったら大変恐縮なんですけれども、たぶんDE&IをPRしているにもかかわらず、実態としてよろしくないことが起きているみたいな話ですよね。

私も大学のほうでDE&Iの研究をしているのでよくわかるんですけど、多くの会社さんって、方針しか掲げていないんですよ(笑)。なので方針を採った上で「どういう状態を実現すればDE&Iの状態なんですか?」とまで明確にできていますかっていう話なんです。

インクルージョンって「内包」「包含」とかいいますけど、それがどういう状態かを本当に言語化できていますかっていう話なんですよ。言語化したものを、みなさん共通認識として持っていますか。

重要なのはエクイティ(公平)なんです。上司から部下に指導するにあたって出てくる問題として、公平性あるいは平等性をどこまで担保するかが一番納得感に関わるところなんです。なので、そこに対して明確な基準だったり、あるいは会社としての方針をちゃんと共有できていますかっていったところです。

SNSとかで問題になるっていうことは、おそらくコンプライアンスとかもちょっと関わっているんじゃないのかなと思うんですよね。外向けにはいいことを言っているんだけど、内向けでSNSでやるとよろしくないことを言っちゃうとかもあると思うんですよ。

そういう意味で、組織としてはわかっているんだけれども、実際としてはできていないっていうことなんです。そうすると、それに刺激を与えるようなケースワークだったり、実践プロジェクトみたいなものだったりをやらせてみるのは必要かなって思っています。ありがとうございます。

日報に書く内容は倫理的な判断を

「私たちの日報では、考え、意見、出来事など何でも書いていいことになっています。それをリジェクトしたら、公益通報者保護法によって通報します」。

いいと思いますよ。いいと思いますが、注意してほしいのは、相手の人格をおとしめるような、差別的なこととかを書いていいんですかっていう話なんですよね。たぶんないと思うんですけど、そこは倫理的な判断をしてほしいなと思っています。

ただ、会社として思い思いのことが書ける環境は非常によろしいことだと思っています。ただ、人格をおとしめるようなことは書かないでくださいねっていうところですね。最低限の倫理的なところだと思うので。ありがとうございます。

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