【3行要約】・職場で「わからないことがわからない」状態に陥ると、判断を仰ぐべきか自分で解決すべきかの選択さえ難しくなります。
・三上真央氏は、違和感の言語化や思考の書き出し、時間制限付きの相談など、未知を既知に変える具体的な方法を提案しています。
・自分の業界特性を理解し、「早期発見・早期報告」や「情報の秘匿性と共有範囲の判断」など適切な報連相のポイントを押さえることで、業務の質と効率が向上します。
前回の記事はこちら 「既知の既知」「既知の未知」「未知の既知」
三上真央氏:とはいえ、いつまでも上司がサポートするわけにもいかない。部下は「何がわからないかわからないから、ここは上司から判断をうかがうために聞かないといけないよね」と、わからないことを言語化する練習はやらないといけないです。
考えていきたいのが、「わからないことがわからないってどういう状態なんだ?」「逆にわかっていることはわかっているってどういう状態なんだ?」というところを、ラムズフェルドの四象限をもとに見ていきましょう。
横軸が自分が「知っている」「知らない」、縦軸が「理解している。使いこなす」あるいは「理解していない。使いこなせない」っていう軸です。自分も知っていて、かつ理解して使いこなせるってなると、もう「既知の既知」です。
確実に理解して使いこなすことができるスキルなので、例えばマニュアルを読んで「理解できたわ。よし、できるわ」っていうふうになっている状態ですよね。
一方、「既知の未知」と言われるもの。自分は理解しているんだけれども、まだノウハウとして言語化されていないとか、体系化にまで至っていないとか、「仮説としては持っているんだけど、どうかな?」みたいな状況のことを指します。既知の未知とも言ったりします。
次が「未知の既知」です。未知の既知でいうと、意図せずに活用している知識です。暗黙知とも言われたりしますね。「わからないことがわからない」っていうのが、「未知の未知」です。存在すら知覚できていないっていうところですね。
とすると、やっていかないといけないのは、どのように未知を既知に変えていくのかです。いくつか方法をご提示できたらなと思いますので、ぜひご参考までに見ていただければなと思います。
習慣化したい「センスメイキング」
1つはセンスメイキングです。これは習慣化してみることもお勧めします。まず1つ、「わからない」の手がかりを見つけましょう。大事にしてほしいのは、違和感とかおかしいと感じたのはどこかなんですよ。どのタイミングで、どんな違和感があったのか。
これは具体的な言葉にしなくても、「ここで感じたな」ってメモするだけでもいいんですよ。もちろん情報収集は拡大しましょうとか、違う視点でやっていきましょうっていったところはあると思っています。
例えば会議で「Aさんの発言にいつもと違うトーンを感じたぞ」「Aさんの最近の業務状況や、チームの雰囲気に関する情報を探してみよう」みたいなイメージですね。純粋に違和感とか、おかしいと感じたことをメモするだけでも十分です。
あと「実行と観察」です。仮説に基づいた観察と記録。仮説を検証するために行動を起こし、何が起こったか、状況に変化はあったのかを記録してみる必要があります。Aさんに直接聞いてみるのも手ですよね。
「対話と共有」、壁打ちの活用ということで、上司の方に対して「ちょっと懸念としてあるんですけど」みたいなかたちで聞いてみるかたちです。
で、意味付けをする。「Aさんの様子がおかしかったのはこういうことかもしれない」みたいな。こういう習慣をつけるのが大事なことです。
とりあえず思考を書き出す
ただ、「いきなりこんなのできるわけないだろ」っていうふうに思われる方もいらっしゃるかなと思います。なので、「まずはこれだけでもやってみましょう」っていうことをピックアップしてみました。
まずは1つ、わからないを整理する方法として、思考をとりあえず書き出してください。意外と頭の中でモヤモヤ思っていることって、すぐ消えるんですよ。人間の短期記憶なんて当てにならないものが多いので、あえて書いてみることは重要です。
情報を言語化して見てみると、「そっか、こういうことか」っていうつながりに気づけたりするんですね。なので、あえて書いて引っかかる部分に印をつけて、その理由を考えてみるのをまずはお勧めします。
あともう1つは、K-W-Lシートを使ってみる。「自分が確信を持って理解していることは何だっけ?」「知りたいこと、わからないことって何だっけ?」「わかったこと、解決したことって何だっけ?」と情報を精査するシートです。本来の用途としては違う用途で使われることが多いんですけど、こういうのも使えるでしょう。
あとは、わからなくなるタイミングを整理してください。知識を入れることでわからなくなるのか、資料を作る段階でわからなくなるのか。そこがわかるだけでもサポートのしようっていくらでもあると思っていて。なのでまずは5W1Hのどこでわからなくなったのかを書いてみてください。
相談の仕方・方法を決める
あと、相談の仕方・方法です。「5分経ってもわからないなら一生作業は進まないので、質問してください」と、時間で区切っちゃうのもお勧めです。
とはいえ、中には「何も考えていないのに質問されても困るんだけど」って思う上司もいらっしゃると思うんですよ。であるならば、部下の方も伝え方の工夫が必要になってくるかなと思います。
「丸投げはしていない」ことの伝え方
「丸投げしていないよ」っていう姿勢をどう示すかですが、「正直にモヤモヤを伝えて一緒に考えてほしいですよ」っていう姿勢を示しましょう。
例えば「○○の件で思考が止まってしまいます。どこで詰まっているのか自分でもうまく説明できないのですが、少し状況を共有させてください」とか、「自分でここまで整理したのですが、ここから先がどうもつながらずに困っているんです」とか。あるいは「Aの点が理解できていないのか、それともBの概念が抜けているのか判断がつきません」とか。
ここまで具体的に言わなくとも大丈夫かなって思うんですけれども、上司からすると「あなたは思考を整理したいのね」って判断がつくので、そのサポートの材料として非常に重要なものです。
なので部下の側も「ここまではがんばって考えたんだけど、ここがモヤモヤしちゃうんだよ」って言ってみるだけでもいいかなと思っています。
レビューの仕方・判断の仰ぎ方をルール化する
弊社の場合はどうやっているかっていう話ですが、弊社も新卒に資料とかを作っていただくんですね。ただやはり若手とか新卒とかだと、わからないことがわからないじゃないですか。
なので、最初に一応アウトプットイメージを明確化する会議をやります。何のためにこの資料を作ってもらって、どういうアウトプットで、どういうことを伝えたいのかを、私と下の子たちですり合わせをします。
例えば納期があるとするじゃないですか。納期の2日前を必ずレッドラインとします。そして納期とレッドラインの間に必ずレビューを2回やってもらうんですよ。「1回目のレビューは途中でもいい。その代わり何がわからないのかを整理してね」っていう話になります。
わからないことはわからないので、弊社の場合は「5分経ってもわからなかったら聞いてね」と時間で区切っています。知識がついてくると、ある程度「ここでつまずいているな」ってわかるので、整理してお話をいただけます。
その時に部下の方に業務を促すのであれば、そういうレビューの仕方だったり、あるいは判断の仰ぎ方もある程度ルールを決められてもよろしいかなって思っています。
役割によってのレベル差をつける
ただ管理職の方もお忙しいですよね。部下の人数がいっぱいいる中で、みんなに対して同じようなことをすることはできないと思うんですよ。なので、役割によってのレベル差をつけるのは必要かなって思っています。
例えば「もう1人でPMとかできます」「1人で行動できます」っていう人に対しては、逐次議事録、議事メモでもいいんですけれども、それを渡してもらって、それを見て状況判断するとか。代わりに、「下の子たちは必ず私のレビューを入れてね」とレベル差をつけるのがよろしいかなって思っています。
そうじゃないと管理職の方がパンクしちゃいますからね。そういうふうにレベル差をつけて仕事の進め方を整理するっていうところでございます。