【3行要約】・コーチングや1on1は注目されているが、指示待ち部下への対応に悩む管理職も多い――そんな課題が組織で広がっています。
・林英利氏は「問いかけを変えることで、指示待ち部下の主体性・自律性が明らかに向上した」という実体験を語ります。
・管理職は部下が答えやすい質問から始め、一人ひとりの意見を大切にする「適材適所」の考え方で組織を育てるべきだと提言します。
前回の記事はこちら 上司の「問いかけ」で、指示待ち部下がガラッと変わった
平岡洋平氏(以下、平岡):私も以前、会社員時代に、指示待ちとはこのようなことを指すみたいな、漫画みたいな部下の方がいたんですけど。
実際にコーチングを学んでから、本当に問いかけを変えていって、明らかに主体性、自律性が上がったという実体験があるものですから、ぜひ、みなさんも今日学んだことを活かしてほしいと思います。
最後にアンケートにお答えいただければ、特別に今日のスライドを英さんからプレゼントというかたちで用意しておりますので。ぜひ、今日から部下の方に使っていただければと思います。
ここからはパネルディスカッションということで、みなさん、感想でもいいですし、英さんに聞きたいことをじゃんじゃんチャットにご入力いただければと思います。
11時10分程度ということですので、時間にするとあと30分程度ですかね。今日38名に参加いただいていますので、みなさんすべて(の質問に答える)ということにもいきませんが、どしどしチャットにご入力いただければと思います。
橋本ゆり香氏(以下、橋本):洋平さん。先ほどの英さんのセミナーの中での問いかけの回答が「みなさん、すばらしいな」と思っていて。「どんな方が今日来てくださっているのかなぁ」と、ちょっと知りたくなったんですけど。ちょっと質問していいですか? ちょっとした、いくつかの質問をしたいなと思ったんですけど。
今日来てくださっているみなさんは、まさに今、管理職、またはマネージャー職として部下を育てていきたいという思いからここに来てくださっているんだという方、よかったら手を挙げていただいて。
画面オフの方は手を挙げるボタンがあると思うんですけど、リアクションボタンからぜひ挙げていただければと思います。ありがとうございます。こんな感じ。なるほど。
他のパターンでいうと、企業さんのサポートをしたいっていう仕事。例えばコーチだったり組織開発だったり、そういった管理職のサポートだったり、若手の育成のサポートというお仕事をされている方はいらっしゃいますか?
やっぱりご自身が育てる、または育てている方のサポートの方がたくさんいらっしゃるんですね。もうすでにたくさん学ばれていたり、お考えのある質問というか、コメントが多いなぁと思って聞かせていただきました。
短期的な成果を求められる組織で後回しになりがちな「1on1」
橋本:「すでにコーチングを学んだことがあるよ」という方、どのくらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
お、ありがとうございます。じゃあコーチングという背景もありながら聞いてくださっているんですね。
じゃあ、この後のディスカッションでも、今、洋平さんがおっしゃっていたように、いろんなことをみなさんからの問いで答えていきたいなと思っているので、ぜひ、もう遠慮なくコメントしていっていただけるとうれしいなと思います。
平岡:じゃあ、こちらのほうで最初に質問を用意していたんですけど、「1on1の立て直しの中で、組織風土で一番ネックになっていた、またはなりそうなことは何でしょうか?」というすばらしいご質問をさっそくいただきましたので、まずここからいきましょうか。英さん、いかがでしょう?
林英利氏(以下、林):ありがとうございます。キーワードがたくさんあるので、ちゃんと欲しい回答になるかどうかがわからないですけど。立て直しの組織風土で一番ネックになっていた、なりそうなこと。
組織風土の中で一番ネックになっていたかどうかは、ちょっといったん脇に置くと、1on1の立て直しの中で大切なポイントとしていくつか挙げられる中の1つは、そもそも1on1の目的を管理職や部下の人たちが正しく理解しているか。
正しく理解しているかの前に、会社としてちゃんと発信しているかってことですね。「1on1は何のためにやるのか」というところ。うまくいっていない会社に関しては、発信と理解ができていない会社が多いですね。
あと、組織風土上という言葉を重ねると、私の経験の中でいうと、例えば営業系や営業以外の部門、管理系だとかと比べると、やっぱり営業系は目の前の数字を追っていかなければならないですね。短期的な戦いですよね。狩りをしていかなくちゃいけない。
そういった中で、1on1は短期的に効果があるというよりは、中長期的に効果を上げていくものなので、短期的な成果を求められるような組織においては、1on1は後回し、もしくはやる価値を感じるまで至らないことが多いかと思うんですよね。
上司が質問力を身につけると、半年で部下に変化が
林:ですので、先ほどと同様、目的がちゃんと伝わるということと。あとは、短期的な成果を上げることも大事ですが、中長期的に成果が上がる事例を示していくことも重要かと思います。
組織の一部の中で、成功事例を作る。もしくは同じような業態、同じような業務を行っている会社での成功事例を示しながらやっていく。
あともう1つは、全体で浸透させようとするとかなり難しいので、部分的に開始するとか。さらにいいのは、挙手制ですね。そういったものに関心がある人から始めていくのが重要かなぁと思います。ちょっとね、答えになっているかわかりませんが、以上です。
平岡:ありがとうございます。みなさん、その流れでまさに期間に関してご質問いただいていますね。
「『上司の質問力が変わると、上司への信頼力が向上したり、モチベーションアップという効果があった』という話がありましたが、具体的にどのくらいの期間を要したのでしょうか?」。具体的な期間ってどうでしょうか?
林:先ほど示したグラフに関して言うと、あのビフォーアフターは半年なんですね。半年前の調査と、半年後の比較でした。そういう意味では、半年でもあのような結果を得ることができるということですね。
やっぱり3ヶ月だとちょっと厳しいかなと思いますが、半年しっかりやればそういった結果でも見えてくるのではないかというふうに私は経験上、実感しています。
部下が答えやすいように「質問の領域」を区切る
平岡:ありがとうございます。じゃあ、GCS(銀座コーチングスクール)側で用意した質問にいってみましょうか。ゆり香さん、これ、いってみましょうか。
橋本:はい。部下に質問することは大切だと思うのですが、中には答えられない部下もいると思うんですよね。ということで、「答えられない部下にも質問をしていくべきなんでしょうか?」という問いです。英さん、いかがですか?
林:ありがとうございます。うーん、質問に答えられるか答えられないかって、二元性ではないなと思うんですよね。質問においても、部下にとって答えやすい質問もあれば答えにくい質問もあると思います。
なので、質問だけがすばらしいって言っているわけではないけれども、質問は自発性を引き出す上では有効だと。じゃあ、他の人のように答えられない部下に対してはどう接するべきかというと、質問を使うとしたら、答えやすい質問を使うということですね。
私の本の中にも書きましたけれども、相手が「何でも話していいんだ」と。例えば「最近どうだい?」という質問。その質問を受けた部下は、最初に「『最近どう?』って何のことを聞いてきているんだろうか」と戸惑って答えられないこともあるかもしれない。
そういった部下には「最近、例の仕事はどうだい?」と、領域を作ってあげる。「あぁ、例の仕事ですね。それなら順調ですよ」とかね。最初に質問に答えにくい部下に対しては、そういうふうに質問の領域を作ってあげると、相手は答えやすいかなぁと。
あとは、その部下とこれまでに何度も会話をしてきているわけですから、過去の会話の中で、「(そういえばこの間、映画を見に行くって言っていたなぁ。)あの映画、どうだった?」とか、そんな質問でもいいと思います。
関係性を構築するという点では、過去の会話の中にヒントがあったりするかなと思います。
部下が勝手に育っていく土壌を作るには
橋本:ありがとうございます。先ほどのセミナーで、「結局、質問することは信じることなんだ」というあり方についてもお話しされていたかなと思っていて。
私はなんとなく、「答える・答えないとか、問いの答えがあるかないかではないのかな」というふうに想像しながらお話を聞いていたんですけど。
でも、私は実は、林代表が日本橋校の代表だった時に講師だったという時期があるので、まさに林さんが上司で、私が部下っていう立場であったことを経験しているんですね。その時を思い返すと……。何だろう、人たらしというか。
なんか勝手に周りが育っていく。「○○をしなさい」と言っていないのに、みんながチャレンジする土壌をどんどん作っておられたようには見えていて。「何をしていたんですか?」と、ちょっと今聞きたくなりました(笑)。
信じるとか、答える、答えない。問いかけはたくさんいただいていたように思いますけど。結局何をしておられたのかっていう、答えにくいことをちょっと投げ込んでみます。
林:うん、ありがとうございます。一般の会社の中の組織とはちょっと違うかたちの関係性かもしれないけれども。とはいえ、責任者がいて、担当する講師たちがいるっていうことでは近いかもしれない。
うーん、私が思っていたのは「一人ひとりの意見を大切にしたいな」ということです。私が「こうしたい」と言っても、「いや、そんなのはやりたくないな」と思うような人がいると雰囲気も悪くなっていくし、その人もモチベーションが上がらないからね。
「みんなでこういうことをやっていこう」ということはあるとしても、その中で一人ひとりが楽しめたり、工夫できたり、その人の力が発揮できるようなことに結びつけていきたいと思っていました。
組織は「適材適所」である
林:ちょっと脱線しちゃうかもしれないけど、私の心の中に「適材適所」という言葉がどーんとあって。適材適所って、もともと木造建築の用語だったんですよね。
材木には匂いがいいとか、構造に強い、水に強いとか、いろんな種類がある。そういった材木を適切に使うべきところに使うことによって、木造建築は長く建っていられる。そして住む人に愛される。それが適材適所の語源だと。
組織も同じだと言われているわけですよね。一人ひとりにいろんな個性、特性がある、資質がある。そういったものをお互いに補完しあうことによって組織が盛り上がるし、長く続く。
それが自分の中にはすごくあるので、どんな組織においても、一人ひとりの発揮できる力が発揮できる。それが組織の全体の最適につながるんじゃないかなっていう思いは、心の深いところにあるのかなぁと思います。
橋本:まさによく見てくださっていて。ゆり香さんって呼ばれていたけど、「ゆり香さんは文章を書くのがうまいね」とか、いろんなやったことに対して見ていてくださって。
「だから、こんなことをやってみるのはどう?」とか、そういうふうに提案いただくと「あ、見てくれているんだな」と思うので。すごく自分が認められたような、自信がつくような経験をしたなぁと、今思い出しました。
林:ありがとうございます。
橋本:英さん、ありがとうございます。