【3行要約】
・残業削減は進んでいるものの、業務量は減らず、管理職の負担が増大している現実があります。
・働き方改革が進む会社ほど管理職の負担が増え、健康面にも悪影響が出ています。
・管理職は仕事を減らすスキルを身につけ、部下に仕事を任せて「人を動かす」経験を積ませることが必要です。
働き方改革は進んでいるのに、以前よりも忙しいのはなぜ?
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。みなさん、働き方改革が進んでいるのに、なんで忙しいんでしょうね。特に管理職はバタバタしていませんか。テーマはこちらです。
「『忙しい』管理職の末路」。(管理職が忙しいと)思った以上に良くないことがあるので、今日はその話をします。「働き方改革の罠」。働き方改革が進んでいる会社ほど要注意という話をしていきます。
うちの会社は働き方改革が進んでいる。でも職場は忙しい。しかも管理職はバタバタしている。特に課長が忙しい。そんなことはないでしょうか。実はおもしろい調査(があります)。ドン。パーソル総研さんをはじめ、さまざまな調査会社さんがもうここについては解明していらっしゃいます。それを今日は共有します。
(まず)忙しい管理職の原因とその危険性について紹介をし、「(そう)だとすれば、こうすれば解決できますよ」という話を最後に紹介します。僕自身も管理職の時にそれをやってうまくいきましたし、あと今、研修先の企業さまでもうまくいっている管理職の方はそれをやっているんです。
さぁ、ではいきましょう。メニューはこちらです。「管理職になりたくない人の割合は?」「なぜ(管理職の)負担感は増している?」「忙しい上司の悪循環」「忙しい上司は命を削っている?」、そして最後に「誰もがうまくいく提案」を紹介していきます。
このチャンネルは、年200回登壇する研修講師の伊庭だからこそお伝えする、知っていると結果に表れる、そんな本物のTipsを紹介するチャンネルです。ぜひこちらからチャンネル登録をよろしくお願いいたします。
約8割が「管理職になりたくない」と回答
さぁ、ではいきましょう。ドン。今、管理職になりたくない人の割合は何パーセントだと思いますか? ①30パーセント、②50パーセント、③80パーセント。さぁ、どれでしょう。
答えは……ドン。77.3パーセントが正解です。約8割ですね。日本能率協会マネジメントセンターさんの2023年の調査です。しかも年々これが増えているというのですから、これって見逃せない事実ですよね。

ドン。「あの(上司の)ようにはできない、なりたくない」。上司は自分は活き活きとやっているつもりなんだけども、部下から見るとその活き活きがヘトヘトに見えてしまうということですね。活き活きがヘトヘトに見えるのは嫌ですよね。
さぁ、見ていきましょう。ドン。なぜこんなに我々はヘトヘトになっているんでしょうか? 働き方改革は進んでいるはずなのに、なんで負担が増えているのかという話ですよね。それはもうまさに働き方改革で業務量が増えているからです。
働き方改革で業務量が増えている
これはパーソル総研さんの2019年の「中間管理職の就業負担に関する定量調査」というものにもまざまざと示されています。見ていきましょう。
働き方改革が進む会社ほど、管理職の負担は増えている。もう1度言います。働き方改革が進んでいる会社ほど、業務の負担が多いんですよ。働き方改革が進んでいない会社ほど、業務負担はそこまでにはなっていない。おかしいですよね。なんででしょうね?
これは簡単なんですよ。今、残業削減が促進されていますよね。しかしながら業務量は減っていない。効率性は向上していない。そして部下の人数が増えている。そりゃ忙しいですよね。
しかもやることも増えていませんか? 「1on1面談をやりなさい」「フィードバックをきちんとやりなさい」「業務改善を示しなさい」「レポートを出しなさい」「ミーティングは多い」。(業務が)減っていないのであれば、そりゃ忙しいですよね。
しかもプレイングマネージャーであればなおさら自分の業務もあるわけですから、もう身動きが取れないのではないでしょうか。さぁ、そうなるとどうなっちゃうんでしょうね? 少しでも身に覚えのある方は要注意でございます。
忙しい上司の悪循環
ドン。(この調査報告書には)忙しい上司の悪循環がしっかりと示されておりました。見ていきましょう。まず「あんなふうにはなりたくない」と思われてしまう(悪)循環を今から紹介していきます。
ステップ1、業務量が忙しい。ステップ2、忙しいから学ぶ時間がなく、仕事でも付加価値を生み出せていない。ステップ3、さらには時間がないから部下育成も不十分になる。ステップ4、なのに業務負担が多い上司もそうでない上司も、人事考課や成果に遜色がない。ステップ5、その結果、後継者や後任者が不足する。

でも、これが問題なんですよ。「あんなふうにはできないし、あんなふうにはなりたくない。バタバタ(して)、ヘトヘトになっている上司を管理職の姿として会社は置いているんですよね」と、周囲から見ると映るからですね。
さぁ、私がもし部下だったらどう思うかですね。私が部下だった時は、「あっ、(こんな管理職に)なりたいなぁ」と思うリーダーはいましたし、「あんな仕事をしたいなぁ」と思ったものですが、やはりそこにはバタバタしている上司像はなかったですね。
もしその(バタバタしている)人の下についているのであれば、「ちょっとどうかなぁ」と思います。そういった方もいらっしゃいましたね。「しんどそうな顔をしているね。ああいうふうにはなりたくない」というのが、まさにここに表れているのかなと思います。
多忙な上司に対する部下の本音
あなたにもそういった「あんなふうにはなりたくないな」という上司はいませんでした? そんなふうには見られたくないですよね。でも、もっと怖い話をしますね。
ドン。忙しい上司は、自分は活き活きと働いているように見えて、実は周囲から見ると「バタバタしてヘトヘトになって命を削っているなぁ」と見えないこともないんですよ。
これは実際にそうで、先ほどのパーソル総研さんの調査はこのように続いておりました。健康にも悪影響が出ているのだと。業務負担が多い上司と負担が低い上司で健康も変わってくるという話なんですね。
まず、高負担群は低負担群と比較して下記の状況に差があると出ています。1つは睡眠不足、さらには疲労、ストレス。なんと肥満、生活習慣病も有意差となって表れているそうです。
だとすれば、職場でバタバタしていてヘトヘトになっている上司を見て、「不健康な暮らしをしているなぁ」と。でもお給料は自分より20パーセントか30パーセント高いぐらいですよね。普通に考えると「それだったらもう転職したほうが早そうだわ」とか「それだったら自分でフリーランスになったほうがよさそうだわ」と(部下は)思いますよね。
ですから、「健康を害してバタバタヘトヘトしている上司に、給料が20パーセント、30パーセント増えるぐらいで誰がなりたいねん」という話ですよね。そう映っちゃうんですって。だから(部下は管理職になるのが嫌)なんですよね。
がんばらない達人を目指す
(では)どうすればいいのかをちょっと真剣に考えたくないですか? 今からいきましょう。ドン。「提案したい対策」です。私もうまくいき、私の研修先でもうまくいっていらっしゃる方がやっているものを1つ紹介します。
その前にお知らせを入れさせてください。2月18日に出しました『決定版 強いチームをつくる! リーダーの心得』という本がございます。今、概要欄にURLを貼っております。おかげさまで増刷も決まりました。こちらはリーダーが覚えておきたい51個のノウハウを紹介しています。
今日のテーマに紐づくこともたくさんお伝えしていますので、もしよかったら「Amazon」をのぞいてみてください。そして、「Udemy」や企業研修でも、リーダーシップをはじめとした営業力、タイムマネジメント、ストレスマネジメント、ロジカルシンキング、さまざまな研修、そして講義を用意しています。
企業研修は私自身が年200回登壇をし、リピート率も9割以上ですので、お役に立てると自負しております。「らしさラボ」という会社を作りましてもう14年目でございます。よろしくお願いいたします。
そしてUdemyはそれらを個人で好きな時に学習できるオンラインプラットフォームでございます。
こちらはベネッセさんと共同で作っていて、今18個の講座がアップロードされております。17万人を超える方にご受講いただき、すべての講座が5点満点で4点以上です。そういうことでUdemyさんから「偉い。いい講座を作っているじゃん」と褒めてもらっておりますので、もしよかったらのぞいてみてください。レビューもたくさん書いていただいております。
さぁ、では「提案したい対策」です。ドン。がんばらない達人を目指してみてはいかがでしょうか? もう私は声を大にしてこれを言いたいんです。管理職やリーダーにはこういう褒め言葉もあることを、ちょっとインストールしていただきたいんですよ。

「○○さんって本当に仕事をしませんね」と冗談のように言われる。この意味がわかりますか? これは(仕事を)なくすという意味ね。だからいいんですよ。
「○○さんって本当に仕事をどんどんなくしますね。むちゃくちゃですね。だからいいんです」って(一見まったく褒めていないので)言われたくありませんが、私はこれを言われておりました。サボっているわけじゃないですよ。仕事を減らすんですよ。
成果の出ない仕事をバッサリ切る
僕に特技が1つあるとすれば「仕事を減らす」特技です。「何の自慢やねん?」ですけど、仕事を減らすのがめちゃくちゃ得意です。
なんでかというと、こういうことなんですよ。これは私だけじゃなくて、成果を短時間で出している管理職の方は全員が共鳴して「私もやっています」とおっしゃることなので、今から言いますね。
成果に影響しない仕事が気になって仕方がありません。「何のために仕事してんねん。何やねんこれ。仕事のための仕事やん」と思うわけですよね。
現場リーダーだからバサッと(切って)いけます。これはやはり現場からちょっと離れていると現場のリアルがわからないのでバサッといきにくいんですよね。ちょっと時間がかかるんですよ。でも、現場(のリーダーは)はバサッと切っちゃえます。
すると部下から「それをなくさないでください」と反対が来ます。「仕事のための仕事」をがんばるミッションを持っている部下もいるんですよ。
上司から見たら「そんなもん、仕事のための仕事や」と思いながら、その「仕事のための仕事」が役割になっている部下もいるわけですよね。(その時は)もっと意味のある仕事をちゃんとあてがってください。
成果の出ない仕事にどんどんメスを入れると、部下からは当然反対が来ます。だって、それに命をかけているとは言いませんが、(部下に与えられた)ミッションですからね。(でも、成果の出ない仕事をがんばろうとするのは)違うんです。違うミッションに付け替えてください。そして部下の仕事にすらどんどんメスを入れます。
「それってもうやらなくていいんじゃない?」という言い方をすればさすがに嫌われます。なので「これってもっとうまくできる方法があったらいいよね。ちょっとミーティングで話し合わない?」みたいな感じで本人に気づかせるんですね。