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見えないチームをどう動かすか? リモート/ハイブリッド時代のマネジメント再設計術(全3記事)

会議中、話が見えない・噛み合わないと感じたら 参加者を置いていかない“見えるファシリテーション”のコツ

【3行要約】
・会議やチーム運営で情報が見えにくく、メンバーが迷いながら業務を進める。そんな「環境の不透明さ」が組織の生産性を下げています。
・リモート環境では物理的な空間共有がない分、スケジュールやゴールの可視化がチームの心理的安全性に直結します。
・堀田朝美氏は、スケジュール・目標・ドキュメントの3点を継続的に可視化し、メンバー全員が迷わず行動できる状態を作るべきだと提言します。

前回の記事はこちら

会議中は可視化と前提共有が重要

堀田朝美氏:続いて、会議実施ですね。会議当日のフェーズでやることです。会議の中心となる会議実施は、集まった人が1つのことを考えられるように、これまでの経緯や現在の状況、どの点を検討したいかなど、話し合いの前提を伝えてから話を始めることがポイントです。

2つめは、動画、画面共有しながら話すこと。今、私も画面共有していますが、真っ黒な画面のまま、ただつらつらと話していても何も伝わらないかと思います。まずなんでもいいので画面共有をして、可視化して、決定事項・ToDoは全員で確認しましょう。


前提を揃えるのは参加者を置いていかないため

ここももう少し具体を見ていきます。先ほど、前提を揃えるとお話ししましたが、前提を揃える目的は、集まった人たちを置いていかないためです。この時間がどう進むのかわからないまま、いきなり「ちょっと先週発生した××の件ですけど」で話がスタートすると、集まった人は話についていけず、会議に参加することができなくなってしまいます。具体的には、ミーティングの場にはいるけど会話に入れない状態ですね。

なので、参加者自身に、自分の役割は何か、何について話せばいいのかなど、この後の見通しを持って参加してもらえるように、冒頭では必ず前提となる情報を共有するのがポイントです。

共有する情報は、会議の参加者と役割。例えば「今日の全体のファシリテーションは堀田が担当します。議事メモは○○さん、お願いしますね」とか、ちょっとした声かけですね。前回会議の概要やこれまでの経緯をお話しして、今回の会議の後に何を予定しているのかという流れまでを説明できるといいかなと思います。

共有時のコツは、書き起こしたものを見せて説明することです。書き起こしたもの、アジェンダ、テーマに沿った資料などは画面共有を積極的にしていきましょう。


話を可視化して認識ずれを防ぐ

“聞く”行為は、案外負荷が高いと思います。一瞬でも注意が逸れたり聞き逃したりしたら「あれ。今、何の話をしていましたか」とわからなくなってしまいます。聞くだけではなく、視覚で情報を補足することが大事です。

あとは、前提を揃える上で、協力してほしいことは具体的にリクエストをしておきましょう。例えば「いったん○○について説明します。そのあと1人ずつ意見を出してほしいです」というようなリクエストですね。そういった期待値も具体的に伝えておくといいと思います。

集まった人を置いていかない情報共有の基本の型は、まず、進行役が会議準備フェーズで用意した資料を見せながら、前提の共有をします。本題に入ったら、資料を見せながら説明します。都度、認識違いや質問はないかなどを参加者に聞きながら、話している内容を可視化して進めていきます。

そうすることで参加者は、進め方と自分に期待されていることを理解した上で参加できますし、不明点や不足点があれば主体的にフィードバックができるようになります。

そして、全体を理解しながら一緒に進むことができるので、最後に決定事項やToDoが出た時に、全員でその認識合わせをしてアジェンダを管理するという流れができると思います。



基本の型とお伝えしましたが、決定事項やToDoの確認は、会議の最後でなくても、アジェンダ単位の確認でもいいですし、全部のアジェンダが終わった後にまとめて確認をするでもいいです。そのあたりは臨機応変に進めていただければと思います。


資料がない場合も文字で見える化を

可視化しながら進めるという部分ですが、たまに「共有する資料はないのですが……」と言いながら話し始める方もいらっしゃいますね。そのような場合は、編集中の議事メモや発言メモを画面共有してしまってもいいと思います。

聞くだけではやはり情報処理の負荷が高いので、文字で視覚的に補足されるものがあるといいですね。

最近は「議事録は生成AIで取っていますよ」というケースも増えていると思うので、会議中に誰かが議事録を取るという行為が減っているかもしれません。それでも、例えば用意しておいたアジェンダにメモを追記している様子を画面共有するなどして見える化をしたほうが効果的だとは思います。

議事録の共有と承認は推奨事項

では続いて、会議後ですね。会議後は、会議中に取得した議事録を全員に共有して承認を取りましょう。決定事項、ToDo、担当者について認識のずれがないかの最終確認の場となるので、これは必ずやっておくといいです。

もう1点のポイントとして、会議に参加できなかった人が、議事録を見れば会議でどのように意思決定がされたかがわかる状態にしておくことも大事ですね。

「議事録を取っても見ないじゃん」ということも往々にしてあるとも思うのですが、ただ、何か問題が起こって「あの時どうだったっけ」となった時に立ち返られるドキュメントがあるということは、非常に安心材料になると思うので、議事録の共有と承認は推奨事項です。

実際発生したタスクは、タスク管理ツールで可視化しながら進捗管理をしていき、その次の会議に向けての準備を進めていくという流れになります。

いったんババッと話しましたが、会議の可視化についてのおさらいですね。あらためてにはなりますが、会議の可視化は、準備と実施、会議後のフェーズすべてで行っていきましょう。


環境の可視化は情報を揃えることが目的

では続いて、2つめの環境の可視化についてお話しします。環境の見えなさを解消する可視化アプローチの目的は、場の空気を読むことではなく、情報を揃えるということです。

そのために①スケジュール、②ゴール・目標マイルストーン、③ドキュメント整備。この3点を可視化して、メンバー一人ひとりが迷わず進める状態を目指していきます。



では、こちらも具体的に見ていきましょう。まず、スケジュールの可視化ですね。スケジュールの可視化はみなさんもイメージしやすいかと思います。社内では、個人のカレンダー共有をきっとされているのかなと思います。ここではその記載粒度についてお話しします。

まず可視化が不十分だというところで、空白ばかりのスケジュールだと、マネージャーは「この人、何をやっているのかな」と不安になってしまいがちだったり。あとは空いているところにミーティングを入れたのに、本人から「ごめん、実はそこ、別の予定があって」とリスケを求められてしまうケースがあったりということが考えられます。

細かいスケジュール記載で調整しやすくなる

そこで、作業スケジュールですね。ミーティングのない時間、例えば昼休みや休憩時間といった予定も積極的にカレンダーに記載しておくことをおすすめします。他のメンバーが見た時にスケジュール調整がしやすかったり、声かけのタイミングもこのスケジュールからつかみやすくなります。そういった細かいスケジュールもできるだけ入れておきましょう。

弊社では、業務時間のスケジュールが空いているところは自由に予定を入れてOKというルールがあります。例えばこのミーティングの後は、関連タスクの作業をしたり、次のミーティングの準備をしたいから予定を入れられたくないなぁと思ったら、「集中作業」みたいなかたちであらかじめブロックしておく必要があります。

あとは社内文化にもよるかもしれませんが、特にリモートワークをしている時はご家庭の事情もあるかと思うので、(スライドを示して)こんなかたちで「家庭対応」と入れておけば、チームメンバーが見た時に「この時間は連絡するのは控えようかな」と思ってもらえたり、チャットなどで返信がなくても「今は対応できない時間帯なんだな」ということがわかりやすくなるかなと思います。


予定の調整可能性を視覚的に示す工夫

ほかに工夫の1つとして、カレンダーを見ると、タイトルに丸がついているものとついてないものがあるのにお気づきでしょうか。これも弊社内ではやっている人が多いのですが、丸がついているところは「この予定は調整可能ですよ」ということを表してます。

もちろん、丸じゃなくて、大括弧で[調整可能]とか書いてあってもわかりやすいと思います。ちょっとした工夫をすることで、他の人が見た時にわかりやすさがぐんと上がります。

「メンバー的に、ここの日時の開催しか無理だな」というミーティングもあれば「他に優先順位の高い予定があれば日程調整は可能ですよ」という、1on1や参加者が少ないミーティングもあると思います。

新しい予定を入れようとしても、もうみなさんの予定が詰まっていて「ちょっと日程調整が無理なんです」みたいなことは状況としてあるかと思います。すでに入っている予定だったとしても、この枠なら調整可能なんだということがパッと見てわかれば日時調整の負荷が少しは減るかと思いませんか。

見えるスケジュールが安心感と土台を作る

「ここまで細かく予定を入れるの?」と逆に驚かれる方もいるかもしれませんね。ただ、お互いにスケジュールをわかりやすく可視化することで、チーム全体で予定が見えるという安心感が醸成されます。この安心感はやはりチームが動く時の土台になるので意識していければなと思います。

スケジュール管理は自分のためではなく相手のため、相手に自分の状況を知ってもらいやすくするための管理なので、ぜひやっていきましょう。

ゴールと目標、マイルストーンが迷いのない行動を生む

続いて、ゴール・目標・マイルストーンの可視化です。ここで大事になるのは、チーム全員がゴールと目標、マイルストーンを常に明確に理解している状態を作ることです。

これがしっかり共有されていないと、特にリモート環境ではどこに向かっているのか、今どこにいるのかがわからないという見えにくさを感じたり、優先順位がつけられないという状況に陥ります。

また、マイルストーンは単なるスケジュールではなく、これを超えたら一区切りという節目を示す大切な仕組みとなるので、マイルストーンがないとやはり評価の進捗の評価ができなかったり、途中で立ち止まって軌道修正をする機会がなくなったりします。

結果としてゴール直前で「やっぱり違うね」となってしまうと、修正に膨大なコスト、時間がかかってしまうケースがあります。こうした状況を避けるためにも、まずは明確なゴール・目標・マイルストーンを設定することが大事で、それをチームの認識として統一していくこと、共有していくことが大事になります。そうすることで迷いのない行動が生まれます。

ちょっと余談ですが、弊社がクライアントのプロジェクトを伴走支援させていただく際は、まずこのゴール・目標・マイルストーンから明確にしていくことが多いです。でも、今日詳細を語り出すと、本当にここだけでも1時間〜2時間話してしまう内容になるので(笑)。

本日はこの流れですね。明確なゴール・目標・マイルストーンがチームに共有されていれば、メンバーは迷いなく行動ができます。特にリモート環境では、物理的な空間の共有がない分、目標やゴールの共有が心理的な羅針盤、迷った時に立ち返られる地図のような役割を果たすのだということを覚えておいていただけるといいなと思います。


認識合わせは既存メンバーにも効果的

このゴール・目標・マイルストーン、常に理解している状態を作るためには、一度共有して終わりではなく、継続的に再確認、アップデートする仕組みが必要になります。例えば、共有ドキュメントや進捗ボードを常に見える場所に置いておくこと。ほかには会議の冒頭で定期的に確認することもおすすめです。メンバーの入れ替わりがある際は、都度認識合わせをすることも大事です。

メンバーの入れ替わりの時は、その人の紹介だけで終わって、プロジェクトやチームの業務の本題にすぐ入ってしまうこともありますが、全員にとっての認識合わせをするチャンスでもあるので、既存メンバーに自分の言葉でゴールを説明してもらったりすると、その既存メンバーも再言語化できて、より理解が深まる機会になるかなと思います。



本日ご参加いただいている中にマネージャーやリーダーの方がいらっしゃったら、ぜひメンバーの口から話してもらう機会も意識して取っていただけるといいと思います。理解している状態は1度伝えるだけでは作れませんし、繰り返し見えるかたちにして言語化させていくことで、共通認識を深めていっていただきたいと思います。

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