【3行要約】・勝利至上主義が問題視される理由は、プロセスより勝敗にこだわり過度なストレスを与え、人に対して誠実でない状態に陥ることにあります。
・筒井千晶氏は「名将と呼ばれる指導者の下で育った選手たちは、厳しさの中にも誠実さや愛情を感じていた」と現場の声を紹介しています。
・真のリーダーシップでは自分の望み通りに動かすことではなく、目的達成のために適切な手段を選び、人を鼓舞し導くことが求められています。
前回の記事はこちら 今求められるリーダーの条件
筒井千晶氏:ここまで「勝つ、勝つ」と連呼をさせていただいておりましたが(笑)。とはいえ「勝てばいい」というのでは限界が来るかなと思います。なのでそうではなくて、今求められるリーダーの条件というところをお伝えできればなと思っています。
この章立ての中では、ご自身じゃなくても周りになんとなくリーダーとしての姿勢が思い浮かぶような方がいたら、ぼんやりと思い浮かべながら聞いていただければ。
仕事でも、スポーツとかでも、勝利至上主義という言葉がけっこう問題視されるようになってきたように感じています。とはいえ、野球の世界ではまだまだこういったものが横行しているというようなお話も聞いたりはしますけど(笑)。
それでもだいぶ昔に比べたら改善しなければいけないという動きになってきているのかなと思っています。
なぜ勝利至上主義が問題視されるのか?
「じゃあ、なぜ勝利至上主義が問題視されるのか?」でいくと、結果至上主義であって、プロセスよりも勝敗にこだわるところ。プレッシャーを強くかけることで、メンバーやチームに過度なストレスを与えてしまう。短期的な成功を優先して、長期的な成長や持続可能な戦略を軽視してしまうというところです。
そのあまり、体罰や言葉の暴力につながって、人を人と思わずに傍若無人に振る舞う傾向が強く出てしまうということだと思います。成果を出すことが目的なんだとすると、そのために手段を選ばない状態に陥ってしまうんじゃないかなと思っています。

「つまりそれはどういうことか?」でいくと、根底のところで、人に対して誠実でない状態になってしまうんじゃないかと。ここが一番問題視されているポイントなんじゃないかなと思っています。
実は大切なのにNGと捉えられがちな行動
「よくNGと捉えられがちなんだけど、実は大切な行動」というところ。最近は避けたほうがいいよねと言われてしまうような行動がいくつかあると思いますが、それはもしかしたら観点が違うのかなと思うこともあったりします。
例えばでいくと、厳しい練習ですね。適切な負荷をかけているものですら過酷とされてしまったり。あと、成長のために必要な厳しい指導・フィードバックがパワハラと捉えられてしまうとか。
あとはミスの指摘ですね。ここに関しても、改善をするための指摘が責める行為として捉えられてしまう。競争の促進というところで、健全な競争にもかかわらず、プレッシャーを与えるとして避けられてしまう。あと、高い目標設定、挑戦的な目標が無理をさせると捉えられてしまう。
このあたりがけっこう問題行動と捉えられてしまいがちなんですけど(笑)。ここの根底は、先ほどの「人を人と思わない」とか、あと「誠実さの欠如」があるんじゃないかなとすごく感じています。

なので、やはりリーダーの根底に流れるものとしては、ありきたりな言葉かもしれないですけど、人に対して誠実であることっていうのが非常に大事だなと思います。誠実というのは、偽りなく真摯に向き合うところになっていきます。
私の野球チームのメンバーの中には、いわゆる名門校とか強豪校出身のメンバーも何人かいます。そういった学校には名将と呼ばれる監督さんがいたりして、いろいろなエピソード、逸話をお持ちの方々だったりはするんですが、実際に接してみて何を感じていたかを聞いたことがあります。
「本当に厳しいけど、でもあれに耐えられたのはやはり愛情を感じたからだ」っていうふうに言うメンバーもいましたし、あとは「監督さんと話していても、人間力の話しかしない」とかですね。「卒業しても何かしらのコンタクトをずっと取ってくれる」とか「今でも教え子の試合を見に来たりする」とか。
とはいっても厳しかった時代には「もう戻りたくない」と文句も言っていたりはするんですけども(笑)。話を聞いていても、「嫌だったから」「嫌いだったから」という印象は受けないので、それってやはり監督さんたちの誠実さみたいなのを、何かしらのかたちで感じていたからなのかなと思ったりします。
リーダーに対して問題視されていること
これに近しいお話でもありますが、「リーダーの役割とは?」というところで、アメリカの政治家の方の言葉を紹介できればと思います。
「あなたの役割は、すべてが完璧に、あるいはあなたの望みどおりに遂行されるようにすることではない。鼓舞し、導くことである」「愚かなリーダーが自分の限界を組織の限界にする一方で、卓越したリーダーは、組織が持つ可能性を無限に押し広げて勝者となる」と。
昭和型とか旧来型と最近では表現されますが、そういったリーダーで問題視されているのは、自分というものを軸として、望みどおりに動かしている点なのかなと思っています。
リーダーの根底に流れるもの
あらためて「リーダーの根底に流れるものとは?」でいくと、目的、成果を出すためには、やはりしっかり手段を選ぶのが大事なのかなと思います。
コンテクスト・リーダーシップのところでもお伝えした、状況の変化に応じてリーダーシップスタイルを変えることも、目的のためにしっかり手段を選んでいることの1つかな。手段の選び方がポイントになってくるんじゃないかと考えています。