人ではなく目的に着目する
若干わかりづらいところではありますが、コンテクスト・リーダーシップではどういったところが前提になってくるかというと、人に着目するのではなくて、目的に着目することかなと考えています。

(スライドを示して)リーダーシップの形として、「人を率いる」と「目的へ導く」というところ。「『目的へ導く』を前提にしましょうね」みたいなお話ではあるんですが、何が違うのかです。
この絵が非常にわかりやすいんですが、「人を率いる」というと、人を引き連れていく。「自分についてこい」みたいなところで、人々を自分についてこさせるようなところが無意識的にどうしても起こり得てくるかなと思います。
でもそうではなくて、「目的へ導く」というところ。この絵のとおりで、旗が立っているところが目指すところだとは思うんですけど、「ここに行くことが目的である。だからそこに行こうよ」っていうところで、自分ではなくて目的に向かわせる。ここがまず大きな違いというか、区別になってくるかなというところです。なので、人というよりもまず目的ありきが大切かなと思っています。
コンテクスト・リーダーシップの3つの柱
「じゃあ、コンテクスト・リーダーシップとは何だ?」というところでいくと、「全体の状況を俯瞰して、目的に応じて最適なリーダーシップを選び、成果の着地点を柔軟に導くこと」がコンテクスト・リーダーシップになっていきます。これが、成果を出すリーダーシップのあり方ですかね。

抽象的なお話が続きますが、このままお話をさせていただければと思います。コンテクスト・リーダーシップの3つの柱で大切になってくるのが、意味ある成果を見極めるところがまず1つ目。「今のこの状況の中で何が最も意味ある成果なのか?」を見極め続けるというところです。
当然、目的・目標みたいなところはあると思いますが、「そこが今のこの状況の中で本当に最も意味するものなんだっけ?」とかを問い続けるようなスタンスだと思っていただければと思います。
あと、現実直視と最善選択の覚悟を持つこと。現場にいると見たくない現実、受け止めたくない現実もたくさんあるかとは思います。
そういったものをしっかり捉えるとか、したくない選択もたくさんあるとは思うんですが、今この状況の中で何が最善なのかをしっかり成果を見据えて選択する。けっこう覚悟が伴ってくるものかなとは思うんですけど、本気でゴールに向き合っているからこそ、そういったことができるようになるんじゃないかなと。
あと3つ目が、柔軟な適応こそ真の強さであるというところで、目標を変えることが弱さではなくて、状況に対応する力が強さであるというような意識で取り組む意味合いです。
「目標を変える」とか「ゴールを調整する」って、そこだけ取ってしまうと、甘えとか諦めと捉えられてしまうこともあるんですが、下方修正というわけではなく、今この状況の中では何が最も適切なのか、最善なのかを見極めるという意味合いに捉えていただければいいんじゃないかなと思います。
理想に固執をしてしまって現実が見えなくなってしまうよりも、現実をしっかり見て、「今この状況に適応するにはどうしたらいいか?」と考えるほうが、チームや最終的な成果に対して良い影響を与える可能性が高いんじゃないかなと思っています。
理想に固執することで起こり得る事象
理想に固執することで起こり得る事象で、このあたりはみなさんも現場で感じられる部分があるんじゃないかなというところですが、リソースの過剰消耗と疲弊です。
無理難題な目標とかを目指していく。「今のままでは到底それは達成できないから」と言って、どんどんリソースをつぎ込んだり、過剰労働になってしまったり。そういったところでどんどん疲弊していってしまう。
または、「このままいくとヤバいかもしれないな」という何かの兆しは見えているのに、「でも今さら変えられないし」とやっていって、最終的に着地に失敗してしまう。
振り返ってみると、「あの時に軌道修正が実はできたんじゃないか?」と思うこともあるんじゃないかなと思います。そういった軌道修正の遅れも出てしまうんじゃないかなというところです。
そういったことが続いていくと、メンバーのモチベーション低下にもつながっていきます。メンバーも「これ、絶対無理だよね」とわかっている局面とかが、プロジェクトとかだと本当にけっこうあったりします。
そうすると「この目標のためにやろう」というふうにはまったく働かなくて、やらされ感みたいな感じで取り組んでしまうところにつながってきます。そうなると、当然チーム全体のパフォーマンスも下がり、マイナスのループに入っていくかなと。
マイナスのループに陥って起きること
マイナスのループの1つですが、そういった感じでメンバーからの信頼をどんどん失っていくと、リーダー自身が孤立をしていってしまう。孤立していくからこそ、また現実離れした戦略を自分で判断してしまうような負のスパイラルに入ってしまう可能性も高いんじゃないかなと考えています。
あまりにも理想に固執して現実を見失うと、リーダーとかチームにとってさまざまなゆがみが生まれてしまうところは、非常にリスクが高いんじゃないかなと思います。
なので、理想がいいものというだけではなく、それを今の現実にどう適応するかをしっかり見極めるっていう力、それがよりリーダーとかに求められてくるんじゃないかなと考えています。