“忙しいだけのプレイングマネージャー”を脱却する新たなマネジメント
伊達:ご質問でいただいている点とも少し関係してくるのですが、「全員マネジメント」をどうイメージすればいいのかという時に、私が重要だと思っているのは、「マネジメント」と「プレイング」をあまり分けすぎないことです。
さっきご紹介した7つの行動も、どこがマネジメントでどこがプレイングなのか、明確に分けられるものではないと思うんですよね。

あくまで便宜的に、今まで「計画」と「実行」といったかたちで概念的に分けてきただけで、実務の中では本来そんなふうに分けられるものではない。むしろ分けてしまうことで、不確実な状況の中ではかえってうまく適応できなくなることもあります。だからこそ、マネージャーはプレイングマネージャーとして働きながら、その環境に適応しようとしているわけです。
ただし、ここで少し難しいのは、マネージャーだけがプレイングマネージャーになると、マネジメントとプレイングの両方を担って、単純に「忙しい人」になってしまうということです。そうならないためにも、プレイヤー側も、先ほどチャットで出てきた「マネージングプレイヤー」として動いていくことが大事なんじゃないかと考えています。
プレイングマネージャーとマネージングプレイヤーの両方が存在して、うまく調和が取れている状態。そういう状態こそが、「全員マネジメント」に近づいていく姿なのではないかと感じています。
小田木:「何がチームで実践できていると“全員マネジメント”なのか」という定義をしていく中で、伊達さんにおっしゃっていただいたように、「これはマネジメントである」「これはプレイングである」、あるいは「これは計画で、これは実行である」といった線引きが、極めて薄くなっていく感覚があるんですよね。
例えば、(スライドの)「チームの成果を最大化するために、そもそも自分たちの成果とは何かを定義して握っていく」。

これを“定義して下ろす”と考えるなら、決める人と実行する人が明確に分かれる構造になります。
でも、“定義して全員で握る”と捉えると、その営み全体に全員が参画することになります。
そうすることで、腹落ちしたり、物事が明確になったり、解像度が上がったりする。そういう観点こそが「全員マネジメント」なんだろうなと、私自身も思っています。
階層構造で成長してきた日本企業の現実
小田木:もう1つ、ご質問でいただいていた「全員マネジメントをやろうとすると、組織のフラット化やティール化はセットになりますか?」というコメントなんですが、これにはいろんな議論の余地があると思います。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、スライドの真ん中に図があります。これは決して、組織の全体像をフラット化させるとか、ティール型にするというような極端な考え方ではありません。
私たちの捉え方としては、今の日本の組織のほとんどが、この階層構造をうまく機能させて、事業や組織を前進させているという現実があります。
ですので、この階層そのものを崩してしまうという発想ではなく、「上から下へ下ろす」だけではない、階層がありながらも、横と縦がきちんとつながっている状態。そして、一つひとつの機能単位であるチームが、階層の中でその役割を果たすために、全員で連携し、成果の最大化に向かって動けている状態。それが私たちが定義している「全員マネジメント」です。
つまり、組織の階層構造をドンガラガッシャンと壊してしまうような発想ではない、という前提を置かせていただいています。
階層構造はそのまま維持するという前提
伊達:それはもう、大賛成です。私も「階層型組織はもう古い、やめたほうがいい」という議論を本当によく目にするんですが……。
小田木:(笑)うん。
伊達:でも、おそらく今のところ、それに代わる、たくさんの人が一緒に働ける組織形態というのは、ほとんど生み出されていないんじゃないかと思います。特に、人数が増えてくるとそうですよね。
これは学術的にも実証されていて、人数が増えると官僚化が進んでいく。それは効率的だからです。人数が増えれば増えるほど、コミュニケーションコストやさまざまなコストが一気に増えてしまって、そればかりが膨らむと、最終的に組織が持たなくなってしまう。
だからこそ、階層化というのはどうしても必要になる。そして、それを前提としたうえで、「全員マネジメント」をどう実現していくかを考える。この考え方には、私も賛成ですし、それが現実的な方向性だと思っています。
小田木:今日、私自身すごくおもしろいなと思っているのは、例えばさっき出てきた「プレイングマネージャー」とか「階層型組織」とか、そういった一つひとつのキーワードについて、意味や定義、自分自身の認識が何によって形成されているのかといった前提を捉え直すことで、逆に新たな可能性が見えてくるところがあるんだなと感じています。
先ほど、「全員マネジメントにおいても、チーム外との結節点としての役割や、チームを全体視点で俯瞰する役割として、リーダーが機能していくことがより重要になるのではないか」というコメントをいただきました。
まさに「全員マネジメント」という考え方があるならば、その中でマネージャーはどのような役割を担い、「マネージャーならでは」の価値をどう発揮するのかという観点にもつながるコメントです。ありがとうございます。そのあたり、また少し深掘りしていきたいと思います。