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【メルカリ人事に聞く】マネージャーも社員も腹落ち! メルカリ流の"納得人事評価"のメソッド(全4記事)

「低い評価をつけられない」人事評価インフレが起きる“落とし穴” メルカリの担当者が明かす制度変革の裏側

【3行要約】
・人事評価制度の運用では評価インフレや文化的差異が課題となり、多くの企業が制度設計に苦戦しています。
・株式会社メルカリで組織開発と人材開発を担当する岸井隆一郎氏は、キャリブレーションやグレード定義の重要性を実感したと語ります。
・多様なグローバル人材を抱えるメルカリにおける評価観の違いや、AI時代の評価制度変革について言及しました。

前回の記事はこちら

「低い評価をつけられない」社内で起きた評価インフレ

五十嵐未来氏(以下、五十嵐):運用や納得度のポイントについては、今までにお話しした内容が多いかなとは思うので、逆に「こういう失敗もありましたよ」といったものがもしあれば、おうかがいしたいなと思います。

岸井隆一郎氏(以下、岸井):ありますね。私が入社した時ぐらいが、今の制度になって1サイクル目の評価が終わった直後ぐらいでした。弊社は半期ごとの評価がメインなんですが、しっかりとした評価やレーティングという意味で、8サイクルぐらいを回している感じです。まったく同じ運用をしている回は、たぶんないですね。

その都度でもちろん会社の状況が違ったり、制度変更前の慣性の法則でなかなか直らなかったりする部分があるので、あの手この手で工夫しながら、かなり運用を整えていました。

最初の時にすごく難しかったのは、それまでのメルカリはほぼ完全に絶対評価という感じで、キャリブレーションみたいなものがあんまりなかったんですね。外資のような全体で整えていくようなガイドラインは、本当に個々人でという感じのものでした。

それを横串で通していくとなった時に、入り口で最初に起こるのは、評価がものすごくインフレするということですね。「低い評価をつけられない」みたいなところがものすごく顕著にあって、そこに対する工夫はかなりやってきました。そこが最初の落とし穴というか、難しかったポイントだったかなと思っています。

五十嵐:そうですね。やっぱり日本人としては、例えば5段階であれば「1」はつけづらいという感情を多く持ちやすいのかなと思うんですが、それはどうやって是正していったんですか?

岸井:トップダウンですね。グループ全体のキャリブレーションをする時に、このレーティング分布ではダメなのでやり直しをすることもありました。

あとは意外と、日本人組織のほうが厳しい評価をつけづらいという側面もあるんですが、出されたものは基本的に守ろうとする。逆に外国籍の方が多いチームなんかは慣習がぜんぜん違うので、評価を勝ち取ってくる、交渉ベースになってきているところがあります。

五十嵐:なるほど。

岸井:基本的に(評価が)高いし、避けられない理由がいっぱいあったりする感じなんだけど、「目線を合わせるとそうでもないよね」というところをどうやって理解してもらうのかがけっこう大変ですね。

五十嵐:特にUSとかはそんな印象がありますね。

岸井:そうですね。

「完璧な制度じゃない」という前提で改善を続ける

五十嵐:ちょうど関連する質問も来ていたりするので、この場でも聞いてしまいます。仕組みの変更をいろいろやられている中で、更新すべき内容はどういうレイヤーから挙がってくることが多いのか。

例えば、経営陣からトップダウン的に変えてほしいなのか、人事から変えたいというのが来るのか、もしくは現場から来るのか。そういうのって何かあったりしますかね?

岸井:3つそれぞれありますね。

五十嵐:全部ありますか?

岸井:そうですね。メルカリは、評価が終わったタイミングでフィードバックサーベイみたいなものをやっていて。今回の評価に対する納得度だったり、「運用上こう変えてほしい」「ここをもっと改善してほしい」みたいなことを毎回ずっとやっています。

もともと制度を変えた時に、完璧な制度じゃないという前提だったので、それこそPoCみたいな感覚でスタートしているから、「やりながらどんどん改善しましょう」という観点を含めて、フィードバックサーベイを始めていて。それを8回回して、ずっとやっているっていう感じなんです。

そこで挙がってくる重要な課題感は吸い上げていくし、実際に毎回ちょっとずつアップデートが入っていくので、それによってどうなったかをHRの中で振り返りをする。

あとは、やっぱり会社の状況がその都度その都度変わってくるので、それに対して「今のものでいいんだっけ?」というフィードバックをもらいながら、半期の中でずーっと評価をアップデートし続けるみたいな運用をしてますね。

五十嵐:なるほど。じゃあ、各レイヤーでそれぞれ(評価制度に対する課題を)挙げて、挙がったものにどう対応するのかを人事でさばいていき、最終的に意思決定、マネジメント化して組み入れていくということを、毎半期、毎四半期繰り返しているという。

岸井:はい。やっています。

五十嵐:ありがとうございます。

目標設定における難易度調整の難しさ

五十嵐:じゃあ、我々からの質問はこちらでいったん置いておいて、みなさまからの質問を受けていきたいなと思います。目標設定はやっぱり難易度調整が難しい。これって、答えがないなと思うんです。特に今はAIでもけっこう苦戦する領域なのかなと思ったりするんですが、このあたりでメルカリさんの工夫って何かございますでしょうか?

岸井:いや、これはけっこう難しいですよね。

五十嵐:難しいですよね。

岸井:そうですよね。一応ピン留めしている仕組みとしては、グレードディフィニション(グレード定義)はクリアにあるので、それに基づいて評価をしてくださいっていう感じですね。弊社でも、目標設定の課題は今もまだ比較的大きい部類のものなので、逆にみなさんの中で「こうやってるよ」というものがあればうかがいたいぐらいです。

五十嵐:(笑)。

岸井:1つ言えるとしたら、OKRの運用を全社的にずっと回している中で、divisionクラス、いわゆる部署クラスのOKRは全社の経営会議の中でしっかり取りまとめたり、整合性の確認をやっている。そこからさらにそれぞれのチームに下ろしていくという運用を、もうちょっとブラッシュアップしていくことはやっています。

五十嵐:ありがとうございます。我々もいろいろとご支援をしている中で、理想としては「目標設定って、期初にちゃんと誰かが串を通したほうがいいよね」という話は上がってくるものの、「工数を割けないよね」というところがあるんです。

メルカリさんは先ほどのキャリブレーションといい、そこをしっかりやってるんだなというのが印象的というか、やっぱりそこが重要なんだなとは思いましたね。

岸井:全社的なOKRにはかなり力を入れてディスカッションしています。経営にもいくつかレイヤーがあるんですが、四半期ごとぐらいにそれぞれの経営レイヤーのオフサイトを2日間ぐらいでやっていて。

その中で中長期のこととか、OKRの振り返りや次に向けた設定をそれぞれディスカッションしています。なので、かなりプライオリティ高くディスカッションしているところはあります。

五十嵐:ありがとうございます。

多国籍な人材を抱えるメルカリ、どう目線合わせしている?

五十嵐:先ほどグレードという話も挙がってきていたので、ご質問に移らせていただきます。関連する質問が来ていたのでご共有できたらと思っているんですが、「グレード定義ってどういうものですか?」というのがいくつか来ています。今、(チャット欄の)一番トップに来ている質問もそういった内容です。

先ほどOKRの難易度も調整するという話もありましたが、「『成果評価がグレード定義に基づく期待値と照らして』とあったと思いますが、どのような表記になっているのでしょうか? どういう表記だと評価者との認識がずれないのか?」という質問があります。

あとは他の方も、「多国籍だと解釈が違いそうだけど、どうやってやっているんですか?」とか。等級の定義ってあいまいになりがちで、そこの目線合わせがけっこう難しいと思うので、そのあたりのご質問をみなさんからいただいております。このあたり、いかがでしょう?

岸井:基本のところで言うと、弊社には今はバリューが4つあって、グレードは8段階ぐらいまであるんです。期待成果には8段階の定義があって、バリューもそれぞれ8段階の定義があるというのが基本になっています。

なのでこれも、すごくユニークさを持った何かをしているってことではないですが、階層も自立性や難易度で階層設計を分けて、大きく目安感を分けた上で表記を整理しているかたちになっているということですね。なので最初の質問で言うと、成果とバリューのそれぞれがグレードごとに定義が書かれています。

五十嵐:ありがとうございます。一般的には等級定義は段階別に書くけど、成果評価とか軸ごとには書かないものを評価軸ごとに書いていくことで、しっかりと目線合わせをしているっていうのがポイントなんですかね。

岸井:そうですね。

人事チームには翻訳のスペシャリストが在籍

岸井:あとは言語の問題や文化の違いで言うと、弊社の人事のチームの中には「GOT(グローバルオペレーションチーム)」といって、翻訳や通訳を専門にされているスペシャリストの方がいらっしゃいます。

単純な英訳というよりは、「日本語の解釈として伝えたいことを、英語で適切にネイティブで表現するのは何か?」みたいなところに力を入れて、グレードディフィニションを英語で作っていますね。

五十嵐:なるほど。そこで、英語圏の方の目線もぶれないようにしていくと。

岸井:そうですね。なので、単純な英訳とはぜんぜん違う表現だったりしますね。

五十嵐:ちなみに、文章量で言うとそれぞれどれぐらいなんですか? けっこうシンプルなものなんですかね?

岸井:みなさんも、いろんなところでディフィニションの事例を目にされることがあると思うんですが、感覚は似ているかもしれない(笑)。

五十嵐:一般的な文章で「○○である」「こういう発揮をしていることである」みたいなイメージですね。

岸井:そうですね。状態やイメージみたいなものがわーって書いてある感じですね。それが正解で、良いと思ってずっとやってるかというと、もっとブラッシュアップしたいねというのは考えています。あと、今日の話全般に言えることでもありますが、AIによってこれから全部の前提が変わっちゃうところがあるので。

五十嵐:そうですね。

岸井:今みたいなグレード定義のあり方とかも、「そもそもどんな感じになるんだっけ?」って、かなりゼロベースで考えていかなきゃいけないタイミングだなというのは、弊社の中でも話していますね。

五十嵐:ありがとうございます。

従業員間で“目線のズレ”は起きないのか

五十嵐:Zoom側にも質問をいただいているので、順番に可能な範囲でお答えさせていただきますが、これはたぶん最初の説明のところですかね。

「ロードマップと中期計画企画が必達で、OKRはストレッチにしている中で、それぞれは3つがつながってるものだけど目線がぶれたりしないのか?」というご質問かと思いますが、こちらはいかがでしょう?

岸井:中計に関しては、そんなに細かく現場全体でずっと見ていくものではなくて、社員のみなさんが日々見ているのはOKRの運用ですね。「OKRがこのレベル感でいいのか?」というのは、経営陣が中計達成する上での目線感を見て、数字を判断するというかたちになっています。

目線がぶれちゃうことはそんなにないかな、という感じですかね。みんなが両方をずっと見ていると、「どっちがどっちだっけ?」ってわからなくなっちゃう。

中計って、あくまでプランニングをしていく前提を数字で整理して、お財布をどういうふうに分けるかとかをいったん置いて、一部の人で数字をモニタリングしていくようなものなので。会社の営みとしては、みんなOKRをずっと見ているという感じですかね。

五十嵐:経営・事業企画とかの人以外は、基本的にはOKRをずっと見てるってことですね。

岸井:そうですね。コーポレートブランディングとか経営メンバーは、中計を見ているって感じです。

五十嵐:ありがとうございます。

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