【3行要約】
・退職者の多くが本音を伝えず“円満退社“を選ぶ一方、その隠された声には組織変革のヒントが眠っています。
・ハッカズーク執行役員の實重遊氏は「退職理由の本音と建前には大きなギャップがある」と指摘。
・企業は、退職を「裏切り」ではなく自然なキャリア選択と捉え、オフボーディングを整備することで、貴重な組織改善の機会を逃さないことが重要となっています。
退職したら「裏切り者」と扱われてしまう現状
實重遊氏:それでは本日のセミナー、離職率改善の鍵。「『退職者のホンネ』を活かす組織変革セミナー」というテーマでお話していければと思いますので、みなさんよろしくお願いいたします。

それでは今日の進め方として、まず簡単に自己紹介をさせていただいて、そこから、そもそも離職の実態が世の中的にどうなっているのか。離職の中では、退職の本音と建前ってどういったものなのか。そういったところを解説させていただいた上で、そこから退職者の本音を引き出していく方法とは、どう進めればいいのかをお話しさせていただく。
最後に、それを具体的にやる方法の1つとして、第三者によってそこ(本音)を引き出していくところまでお話をできればと思っております。
あらためまして、株式会社ハッカズークで執行役員とアルムナイ事業のCOOをしております、實重と申します。私は新卒でアクセンチュアに入社をしまして、人事のコンサルティングの部門に配属されました。

そこで一貫して大手企業の人事の常駐型で、さまざまなグローバル人事であったり、そこでの制度設計システムの導入をやったあとに、ハッカズークに入社をしておりまして。今は4年半ぐらい、このアルムナイというテーマに向き合って事業を行っております。
あらためまして我々ハッカズークという会社は2017年7月の設立以来ずっと、この「アルムナイ」というテーマに向き合って事業を行ってきました。その中でやりたいことは、すごくシンプルでして。今までの企業は採用にお金を使って候補者を大切にして、そこから社員として入社してもらってから社員に投資をする。

そういった関係性が、今までの新卒採用と終身雇用の世界では、退職したら「裏切り者」ということで、退職したら縁が切れてしまう。関係性が切れてしまう。そういったところが、今やもう転職が当たり前の時代になりつつあり、またキャリアも会社が中長期的に主導していくというよりは、個人が、自らオーナーシップを持って決めていく。そんな時代になってきている。
退職も当然1つの選択肢になってきて、退職者も増えてきている中で、退職してもつながり続ける。アルムナイと呼んでつながりを持ち続けて、お互いにとっての価値につなげていく。そういった関係性の実現を行っております。
現在、6~7人に1人は離職をしている
こういったアルムナイの専門の書籍『アルムナイ 雇用を超えたつながりが生み出す新たな価値』(日本能率協会マネジメントセンター)を2024年に発売するなど、この領域のリーディングカンパニーとして、現在さまざまな業界の大手企業さまを中心に、アルムナイの取り組みをご支援しております。

退職したあとの関係性のプロフェッショナルとして、アルムナイの事業を行っているんですけど。そんな我々が離職にどう向き合っているのか。このテーマでいろいろとお話ができればなと思います。
まず最初のテーマが、離職の実態です。そもそも今って、マーケットとしてどんな状況になっているんだろうというところで。ここは簡単にご説明させていただくと、そもそも今、みなさんもそうなのかなと思うんですが。多くの会社でやはり離職率が課題になっています。離職の傾向が全体で見て15.4パーセントと、6~7人に1人は離職をしている状況です。

我々のクライアントは大手企業さんがすごく多くて、離職率はそこまで本当に高くないケースが多くて。3パーセントとか5パーセントといった会社さんも多いんですけれども。ただ一方で、これまでと比べると増加傾向にあり、また(今後)減るとはあまり思っていないと。
今後も増えるだろうと多くの会社さんが認識されていて、そこを退職後につなげるアルムナイという関係性も当然すばらしいが、その前に離職自体を減らさないといけないと、多くの企業さまからお声がけをいただいているところです。
コロナ後の2020年、2021年は様子見でけっこう離職も減っていた時期もありましたが、そこが落ち着いて、今はまた離職が増えている企業さまが多いかなと思います。
じゃあ、なんで辞めるのか。そもそも退職面談で、「これが理由です」「体調です」「家庭の理由で」。多くの場合、1つの理由がけっこう挙げられているケースもあるかなと思うんですけども。そもそもまず、いろいろな要因がありますし、複合的だったりすることが少なくありません。

これはそもそも離職というものが、どういった欲求を満たせなかったのか。例えばこの4つの欲求はけっこう幅広く分布しています。またこれが1つの理由ではなくて複合的に組み合わさって、いくつかの欲求が満たされなかったところが、具体的な原因につながっているのが実態かなと思います。
離職者の70パーセントが本音を伝えていない
その一方で、じゃあその人(退職者が)思うことや(退職)理由をすべて、ちゃんと会社に伝えられていたかといいますと、実は70パーセント以外が「伝えていない部分がある」と。

複合的なうちの1つは伝えられたかもしれないけど、「実はこっちのほうがメインなんだろうけどな」「ここも離職の理由にあるんだけどな」というのはあっても、一部しか伝えられていなかったりとか。
場合によっては、本音とはまったく別の建前がそこにあったりする。実はもう70パーセントが、会社に対して退職理由の本音の部分を伝えていないことも、調査として出ていたりします。
やはり退職者の方も、辞めることに当然後ろめたさもあります。あまり引き留められても、そもそも退職が進められなくなってしまうのも困るので、円滑に辞めたいのが、本音の部分かなと思います。それを実際に実現するためには、引き止められないような理由、特に「家庭の事情」ってお伝えしておく。

介護や結婚を理由にするところもあるかもしれないですし、体調を壊したとか、会社としてなかなか説得しにくいところに建前を持つ。そういったケースも多いのかなと思います。なので、退職の本当の理由と会社に伝えた理由のギャップが、このグラフに出ているところです。
青色の部分が本当の理由、グレーの部分が会社に伝えた理由というところです。「人間関係が悪かった」とか、特に上司との人間関係が悪くて、上司と退職面談をやって「あなたとの関係性が原因で辞めます」とは絶対に言わないと思うので(笑)。やはりこういったところはすごくギャップが大きかったりしますし、給与とか人事制度といったところに対しても「まぁ、言っても仕方ない」と。
わざわざ言って、ちょっと「立つ鳥跡を濁す」的になるぐらいだったら「自分のせいなんです。会社はすごく良くしてくれたんですけど、自分自身の都合で辞めるんです。すごくお世話になりました」って、当たり障りなく言っておいたほうがいいんじゃないかと。
ということで、実際にはいろいろと会社の制度とかに思うところがあったとしても、それはなかなか言ってもらえない。そんな実態があるのかなと思います。

こういった「なぜ言わないのか」と。やはり話しても理解してもらえない、話しても仕方ない。あるいは円満退社したい。まぁ、建設的な話し合いにはならないだろうと。そこでやはり、まず退職という、後ろめたいというか。なかなか個人の理由で退職しますということの上に、会社をちょっと責めるというか。「あなたたちが原因です」というのは、なかなか……。まじめな方ほど言いづらいのかなと。