離職者の本音は資産価値のある情報
ただ、そういった方ほど会社としては残したいような方だったりするので。やはりここの本音については、すごく資産がある情報ですし、そこの理由をきちんと把握することによって同じような離職を防いでいく。同じ退職理由で辞める人をなくしていく。
本来であればそういった活動につながる可能性があるのにもかかわらず、そこが明るみに出ないで、その人の抱えたまま関係性が切れてしまうというのは、すごくもったいないことだなと。そんな実態が、この離職という領域にあるところを、ここまでお話させていただきました。
では次に、ほとんどの場合、70パーセントは退職の本音が出てきませんと。みんな建前を言ってしまいます。そんな中で、退職者の本音を組織改善に活かしていくためにどうすればいいのか。そんなところを少し見ていきたいと思います。
まず第一歩になるのが、この「オフボーディング」を意識すること。そもそも退職者の本音を引き出すためには、退職者が「いい辞め方」、会社からすると、「(いい)辞めさせ方」で退職できるようにサポートをしていかないといけない。

例えば、退職する人が上司に相談をして「退職を考えています」と言った時に「お前ふざけるなよ! いくらかけたと思っているんだ! いくら投資したと思っているんだ!」って、思わず言ってしまったと。
そうなれば、もうそれ以上は萎縮してしまって「いや、ここに不満があって……」というのも、おそらく出てくることはない。人事にそこを言って責められてもなということで、話し相手を変えても本音が出てきづらい場面になってしまう。
ということで、この退職時の体験を設計することは非常に重要なんだ。ただ、ここが今の人事のプロセスとして認識されていることは、すごく少ないのかなと思っていまして。
今は新しいメンバーが入社をして、そこが立ち上がるまでの支援をする「オンボーディング」はすごく大事にされて、人事も関わるし、上司もすごく意識をして、会社からのメッセージガイドラインがあって、そこに則ってやっていく。そんなプロセスになっているかなと思います。
過半数が退職までの期間に不快な思いをしている
一方でオンボーディングの逆のオフボーディング。退職が実現するところまでスムーズに、良好に進められるように支援をするという考え方です。実際に海外では『Harvard Business Review』にも載って、意識されている人事のプロセスの1つになっているんですが。今の日本企業においては、このオフボーディングと退職する時にどういうふうに対応すべきかは、すごく属人的になっているのが現実かなと思います。
上司の方も、退職相談をされた時に、どういうふうに対応すればいいのかは、おそらくあまりガイドラインとか、会社からのメッセージがないところかなと思います。人事が退職面談する時の目的も、人によってけっこう違ったりとか。
あとは一番最後のところで、例えば退職した人をお見送りするのかどうか。何か贈り物をすればいいのか、送る会とかをやるべきなのか。こんなところも部門任せ、人任せになっているのではないかなと思います。