【3行要約】・従来の階層型組織とは異なる「自律分散型組織」が注目される中、その実践例と構築方法についての知見が求められています。
・TUMMYの創業者あべなるみ氏は、「個人のらしさの発揮こそが社会価値を増やす」という信念のもと、球体のような組織構造を実現しています。
・自律分散型組織を作るには、ビジョンの明確化、ブランド方針書の作成、行動指針の策定、世界観の規定という4つのポール作りが不可欠です。
前回の記事はこちら 個人戦からDAO型組織へ
あべなるみ氏:実際、個人戦からこのDAO型の組織に変わる変遷みたいなところを少し整理してみました。このステップを実際にTUMMYでも踏んでいます。
最初は私ですね。旗を振る明確な人がいて。(次に)ブランディングとなると「デザイナーが必要だ」となるので、デザイナーとか少数の人たちに指示をしながらチームを作って働くような感じです。
そこから専門分野型フェーズということで、旗振りがいつつ、広報寄りな人、バックオフィス寄りな人とか、なんとなくチーム形態になっていくみたいなところを経験した上で、今はトップがいるというかたちを全部解体して、組織が横断して目的に向かって動くような状態に変わってきています。
自律分散型組織にあるもの・ないもの
この変遷をどうやって起こしていくかを、今日は話します。今、TUMMYが実現している自律分散型組織、「aiyueyo」として一般社団法人化したんですが、一般社団法人aiyueyoにあるもの・ないものをまとめてみました。
ここまで話してきたとおり、ないものとしては一般的な組織では普通にあると思いますが、会社の決定で降ってくる給与・評価、配属先・役職、売上目標・営業ノルマ、出社義務・勤務時間、日報・就業規則、これらがないです。
その他、とにかく自分を管理するというエネルギーがない状態になっています。
逆にじゃあ何があるのということなんですが、共通の目的があります。明確に「ここにいきたい」みたいなことが決まっていたり、方針、指針的なものは示されているような状態で。
その上で、本人が自発的に「えい!」と挑戦する機会だったり、自己開示をする機会、情報の開示、そして挑戦するのと同時に辞めることもすごく気軽にできるような権利があって。
かつ、値づけを自分でしていく権利も持ちながら働いていて、かなり自主性・主体性が高く、でも指針は示されているというような運営がされています。

この軸でもう1度プロフィール的なところを並べているんですが、メンバーあらためて152人の人が動いています。
法人格としては、この4月からコミュニティ機能を一般社団法人化しました。
この組織に一応経営陣が存在しているんですが、このメンバーは毎年選挙で選出するようなかたちになっていて。この152人のメンバーが自分たちで決めていくスタイルになっています。
雇用の形態みたいなことでいくと、正社員という呼び名がつく人は誰もいない状態になっていて。基本的には、発生した業務ベースでの業務委託というような動きになっています。
その上で何かしら「aiyueyo」で報酬を得ている人を数え上げると、120人いるような状態になっていて。ただ楽しくて所属している人もいるんですが、何かしら「aiyueyo」の仕事をした、あるいは循環商店街の中で自分が生業を作ってお客さんをつけたみたいな人たちがいる。
個人の売り場で売った人が86名っていう数字もあるんですが、そんな感じ。あとは「aiyueyo」がこの世界に存在したらうれしいと思って自ら出資しているメンバーが83人いるかたちになっています。
自律分散型組織の特徴かなとも思うんですが、商品を作っている内側の人、社員と、商品を買っている消費者みたいなものがバキッと(分かれて)いるというよりは、応援するからこそ、共感するからこそ、「お金を出します」と「稼ぎます」をどちらもやってる個人だらけみたいなかたちの組織になっていて。そんな感じで動いているようなところです。
なぜ自律分散型組織を作ったのか
「なんでこんな組織を作ってるんですか?」みたいなところです。もともとは私自身がごきげんなお母さんでいたいという中で、「なんかやだなぁ」と思っていることがあったんですね。
それが、「経営者になるからには正社員を雇って、社員の人生を背負うべきだ」ってことで、最初自分も考えていましたし、周りからも言われたりもしていたんですね。
ただ「自分の人生をごきげんで満たして、子どもと向き合うだけで精一杯だわ」みたいなことをけっこう思っていまして。本当に誰かの人生を社長が背負うべきなのかということにすごく疑問を持っていたというところがあります。
ちなみに最初のアプローチとしては、仲間を正社員雇用することを1年目の時に実際にやっています。それこそお友だちの関係性から一緒に働くことを始めたんですが、「こっちは毎月給与を約束しているからこそ、もっと働いてほしい」みたいな感じで、けっこうきつくあたってしまうことを私自身がやってしまったりとか。
向こうとしても友だちだったところから上下みたいな感じになってしまって、私からの評価を恐れる関係性に変わっていったりとか。
「これって本当にやりたかったかたちだったのかなぁ」みたいなところもすごく疑問にあった中で、「でも彼女の人生を背負わなければ」みたいなところがちょっと気持ち悪かったというところが実体験的にあります。
一方で農業のお仕事もいろいろしていく中で、個のらしさの発揮こそ社会価値を増やすというところをめちゃくちゃ感じていたので、個のらしさの発揮で組織が本当に回るのかを検証してみたい、実験してみたい欲がすごくありまして。
それでそういう組織を作ってみた、できるはずだと思って信じ抜いてやってみたかたちだったんですね。実際に一定のかたちになったので、今日みなさんにご共有したいなというようなところです。
自律分散組織を支える3つの機能
ということで、「自律分散組織とは」というところから入らせていただきつつ、具体的な組織の作り方の話をしていきたいなと思います。
TUMMY流の自律分散型組織が成立している理由を分解した時に、3つの機能によってこの場はできているんじゃないかと整理しました。
それが「ポール」「マントル」「エアー」と私たちが呼んでいるものになります。一般的な組織って、基本的にピラミッドで描きますよね。三角で書くと思うんですが、それでいくとやはり球体の感覚のほうが近いなぁと思っています。
一番上に社長という人がいるという感じよりは、ポールと呼ばれる軸。地球にも軸が通ってるじゃないですか。地軸、N極とS極みたいなやつ。あの軸があるんだけれども、そこに人が紐づいてるというよりは、軸は軸としてポールとして立っているという感覚です。
もちろん地球には酸素があるので、そんな感じで空気みたいなのはしっかりと流れている中で、あとはみんなを支えるマントルみたいなのもがっちりあるみたいな。「なんかこういう感じだな」というところで整理をして、今からこの「ポール」「マントル」「レイヤー」をそれぞれもうちょっと分解してご紹介していきます。