組織のビジョンを一人格として扱う
まず、ポールについてです。ポールはまさに組織の求心力を作る軸になります。自律分散型組織の1つの例としてティール組織というものがありまして、『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』はとてもおもしろいので、よかったら組織作りに興味がある方は一読を(してみてください)。
それか、ちょっと難しい本なので「10分でわかる『ティール組織』」みたいな記事とかYouTubeとかもあるので、それでもいいかなと思うんですが、1回インプットされるといいなと思うものだったりしています。
その『ティール組織』の中で書かれていることなんですけれども、例えば意思決定をする時に、必ず1個空きの席を作ろうみたいなことが書かれていて、そこにはビジョンさんを座らせろみたいなことを言っている。
組織のビジョンみたいなものを独立させて「いや、ビジョンさん的にどうかな?」というぐらい、ポール、指針となるものを一人格として扱っていくといいよみたいな話があるんですよね。

私もこの取り組みをやってみてすごくポイントだなと思っているし、多くのコミュニティとか経営体を見ていても、ここができるかできないかでけっこう変わるなと思っているところが、経営者と組織を切り離すというところです。
組織を何かしら作るっていうことにおいて、一番想いのある創業者とか経営者が「おらー!」みたいな感じで旗を振るのは、やはり絶対に必要なフェーズなんですね。絶対に必要なフェーズなんだが、それが上下関係を生み続けてしまうことがあります。
自律分散型組織はフラットにしたいというところがありますので、答えは経営者の脳内にしかないという状態を早く脱却することがすごく大事になってくるんですね。
なので、経営者じゃなくてみんなが「このコミュニティとは何なのか」「何を目指すのか」がわかる状態に言語化・可視化するということが、ポール作りにおいてまずとても大事になってきます。
言語化・可視化したいもの
それで、ぜひ言語化・可視化していただきたいもの、まずここを揃えましょう。ポールを作りましょうということでお勧めしたいことが4つあります。1つはビジョン。できればそれをビジュアル化するところまでいけるといいかなという中で、ビジョンと活動指針ですね。ブランド方針書というものを作るのをお勧めします。
行動指針。私たちはワーキングハンドブックというものを作っています。あとは世界観みたいなところですね。1個1個ご紹介していきます。
ビジョンを絵に描き起こす
ビジョンとして、冒頭に「aiyueyo」は愛本主義という社会を実現したくて進んでいるみたいな話をさせていただきました。
これも最初の頃は、「あべなるみさん、がんばってる」とか「べーちゃんの言ってることがおもしろいから一緒にやる」みたいな感じで。最初のメンバーはそんな感じで集まってくれていました。
「つまるところ、何を目指してるんだっけ」ということをいったん吐き出したんですね。完全に吐き出して、「それを愛本主義と呼ぼう」みたいな感じで言語化するプロセスがコミュニティ作りの前半の頃にありました。
「目指しているのはこんな社会」みたいな話で、言葉じゃどこまででも伝えきれないところがあったので、今は図解した“ぐるぐるビジュアル“というものを使うんですけれども。
やはり言語だけだと誤認というかずれが出てきたりするので。ビジョンって未来を指していて、まだ現実化してないことを言葉にしたりするので、何かしらそれを図解、構造化するとか、絵に起こすみたいなことをしていただくと、複数人のメンバーとの共有値は上がりやすいかなぁと思います。
「MVVのようにしっかり整えましょうね」みたいなことは、一般的にビジネスの領域で言われることなので、取り組んでいる方も多いと思いますし、志というかたちで一言にしてもいいかなと思います。
やはり複数のメンバーでやっていく、かつ自律的に動いてほしいっていう流れでいくと、どこを目指すのかがガチっと定まっていることはめちゃくちゃ重要になってきます。だからここがまだちょっと怪しいなという方は、ここを作るところはやはり外せないなという感じです。
活動の羅針盤となるブランド方針書
次に作っていただくといいかなと思っているのが、活動指針となるブランド方針書というものですね。「ビジョンが決まればけっこういけるんじゃね」と思われているかもしれないんですが、意外とそれだけだと足りないなというか、ずれていくのを感じていまして。
私たちはブランド方針書というものを作っています。要は「私たちは何者なのか」ということを自己規定していく、活動の羅針盤となるようなものですね。
10の要素は欲しいなと思って作っています。たぶん、実際の「aiyueyo」で使っているものとかも見ていただいたほうがイメージが湧くかなと思っているので、それを映してみたいなと思います。

実際に「aiyueyo」で規定されているブランド方針書を見せちゃうんですけれども。この方針書は、「aiyueyo」に関わるすべての人が今後活動する上で、羅針盤とする資料ですよみたいなことを言っていて。「ブランドに関わる人は定期的に立ち返って日々役立ててね」みたいなことが決められています。

そもそも「aiyueyo」って何? みたいなところを初心者の人でもわかるようにするという話と、ビジョンですね。「想いは何?」みたいなのと「私たちの存在のコンセプトって何?」「誰と特に仲良くなってやっていけばいいの?」「何を提供するの?」「その提供価値を守り続けるための約束事って何?」とか右脳的な部分で「どんな雰囲気をまとっていくの?」みたいなことが大枠で決まっているような感じです。

「aiyueyo」とはみたいなところで、「そもそもこういうもんだよ」みたいな要素が規定されていたり、想いの部分だと、先ほどのビジョンみたいなところが示されている。


コンセプトみたいなところでいくと、そもそもじゃあ結局何? みたいなところを自己規定しています。

例えば作っているものとかに依存しちゃっているケース。「トマト農家です」「ビールの会社です」とか、作ったもの起点で定義する人が多かったりします。しかしそれをしてしまうと、みんながビールしか作らなくなっちゃうんですよ。
じゃなくて、「どういう価値を提供するものなのか」みたいな、コンセプトを置くことがとっても大事な中で、作るものに規定されないコンセプト作りをしておくと、独自の世界観を切り開いていく、唯一無二の取り組みができるというようなところです。
コンセプトをビジュアライズする
「それって概念的に言うとどんな様子かなぁ」みたいなことを絵にしたりもしています。「aiyueyo」でいくと、「いのち」のらしさを愛でて分かち合っていこうぜみたいな話なので、そのらしさを発揮した人が価値を交換している様子があったり、その分かち合うらしさ自体を後ろで耕している様子が描かれていたりする。
それが、人が自分のらしさを耕している様子と実際の農家さんが食べ物を耕して作っている様子と両方あって。すべてが運ばれて、らしさが発揮された食と、らしさを発揮してナリワイをする人とが混じり合っている世界みたいなところを1枚の絵に表現しています。
こういうものはどこまで言葉で言っても伝わりにくかったりするので、コンセプトをビジュアライズするのも、共有力を上げるのでお勧めです。

それと、どこ・誰と一緒に手を取り合っていくのかみたいなところで、大事にしているペルソナ像が言語化されているということだったりとか。提供価値というところで、「何を価値提供として私たちはやっていくんだっけ」みたいな要素とかが規定されていたりします。

(スライドを示して)こんな感じで活動の指針ですね。私たちは誰に向けて何を提供すればいいのかというところを作って握るみたいなことができると、共有力がめちゃくちゃ上がるので、「こういうブランド方針書みたいなものもないなぁ」と思う方はまずポールとしてこれを作るのはぜひお勧めしたいかなというところです。
その方針書を作った上で、できれば外に見える「私たちは何者だ」ということを規定するタグラインっていう言葉と、ビジュアルにまで落とし込む。ここまでいけるとかなり共有力が上がって、自律分散組織を運営できるかなというところです。
具体的な行動ベースで期待する動きを示した行動指針
次に行動指針ですね。行動指針は、日々具体的な行動ベースで期待する動きを示したものというかたちになります。
「大きな事業として何すんの?」みたいな話とか、「どこ向かっていってるの?」はブランド方針書とかビジョンの話になるんですが、「じゃあそれが一人ひとりの行動レベルでいうと何すればいいんだっけ?」みたいな感じで、もうちょっと手前に落としてあげるのが行動指針というようなところになってきます。
「aiyueyo」の行動指針、ワーキングハンドブックと呼んでいるんですが、そちらのスクショを撮ってきました。それこそ「aiyueyo」は一般的な会社と異なった運営をしているので、今まで身につけてきた会社の常識が通用しないことがあります。
なので、みんなが「aiyueyo」らしい価値を内外に発揮できるように、混乱なくのびのびできるよう、ハンドブックを作りましたみたいな感じで共有をしています。

これも内容をチラ見せさせてもらえたらなと思っていて。世に言うマニュアル的なところで、「これは最低限守ってね」みたいなところで、「Slack使ってね」とか、Notionとかツール系の紹介とかがあります。

あと、プロジェクトの始め方みたいなことが書かれていたり。

行動指針という意味では、こっちが大事かな。「aiyueyo」で働く上で大事にしたいことを一つひとつ言語化しています。

例えば「aiyueyo」における同僚、お客さんとは、互いに自律し対等である前提で関係を築き合う相手みたいなところで、「とにかく上下関係を作らないことを心がけましょう」とか「会議でも雑談から始めてお互いを自己開示していきましょう」みたいなことが言語化されていたりします。

あとは、一般的な組織と違うことをやろうとしているので、「『aiyueyo』における仕事とは」みたいなこととか、一つひとつをけっこう定義してやっています。
例えば「心を宿った言葉選びをしましょう」みたいなことで、例えば「業務」じゃなく「お役立ち」って呼びましょうとか、「発送」じゃなくて「贈り出し」って呼びましょうとか。そういう言語統一とかも図ったりしています。

こんなかたちで実際の行動レベルでもう少しブレイクダウンしたものもあると、迷いにくいかなぁとか、共有力上がるかなぁっていうところで、そんなものもあったりします。
世界観規定もあったほうがいい
それとあとポールでもう1つ。これは自律分散型組織によりますが、あったほうがいいなと思うのが世界観規定というものですね。
自律分散型のみなさんと経済を回そうと思うと、いろいろな人がいろいろな制作物を作るみたいなこととかが起こったり、あらゆるタッチポイント、接点をそれぞれのメンバーが主体的に開発していくということが起こります。
なので、見た目上揃っていないとぐちゃぐちゃしちゃうなぁみたいなことが起こってしまいがちなので、ビジュアル面でトーンアンドマナーを揃えるために、ルールみたいなことも決めておくとやりやすいかなというところです。
ビジュアルアイデンティティは細かくは(説明しなくて)いいかな。例えばこういうデザインモチーフ使おうね、イラスト使おうねとか、色味はこんな感じ、推奨フォントはこれだよとか、そんなところです。それも全部メンバーに開示されているような感じです。

ここまでがポールです。これができると経営者のワンマンみたいなところから、みんなで「『aiyueyo』らしさって何かな」みたいなことを考えながら動くという土台ができます。なので、まずはポール作りが何よりかなというところです。