コミュニティを土台とした自律分散組織
あべ:まずは具体的な事例があったほうがいいだろうという中で、私たちが実際に自分たちで作ってきている自律分散型組織を紹介してまいります。
(スライドを示して)こちらが「aiyueyo」になっています。ホームページを見ていただくと、この「aiyueyo」のビジュアルが1番前にどーんと出てきます。「いのちを、めでる・はぐくむ・わかちあう」という言葉を前に出しているコミュニティになっています。
本来命として私たちが持っているらしさを価値に変えて、どんどん循環させていこうということを考えています。一人ひとりの人が持っている強みで、働くとか自分のナリワイを伸ばすということにコミットさせていただいたり。
農家さんも周りにすごく近いので、食べ物も命という中で、食べ物のポテンシャルも最大に伸ばしていって、本当においしいものを分かち合っていくような世界を作るということを同時に行っているようなところになっています。

後ほど触れますが、この「aiyueyo」では愛本主義をビジョンとして掲げてやっています。
「いのち」を真ん中にする社会のあり方という中で、資本主義ではお金が中心の主義、社会のあり方だとするならば、今一度、本当に「いのち」のポテンシャルを最大発揮するということにおいて社会を作っていけないかということをビジョンにしています。

数字面で共有するとイメージが湧くかなという中で、いくつか数字を持ってきています。今回の紹介していく自律分散型組織「aiyueyo」は、メンバーとしては152名の人が実際に参加しているような組織になります。
この人たちがただオンラインコミュニティとして所属して楽しんでいるというよりは、そこから価値創出をして経済を回すことをやっています。
「aiyueyo」が主催したスクールみたいなものは1,000人以上の方が参加していたり、ブランディングを提供したりするということを、この自律分散型組織にいるメンバーがチーム戦で提供する。
あるいは、私たちの食のイベント、「愛食」と呼んでいて、けっこうやるんですが、そんなイベントもどんどんメンバー主催で作っていく。あるいはメディアで発信するみたいなことをしながら、自分たちのSNSも動かしていくみたいなことをやったりしています。
昨年(2024年)はマルシェイベントをしたんですが、それには1日で3,400人近い方にお越しいただくみたいなことがあったりとかしています。
それと、「aiyueyo」としての事業はもちろんチーム戦でするんですが、「aiyueyo」の中にそれ自体が自分のらしさを伸ばす、個人商店を開けていくという取り組みもしています。
個人が自分のナリワイを育てるというものも機能として持っているんですが、そのコミュニティのクローズドな商店街でめちゃくちゃお金の交換、価値の交換をやっていて。
コミュニティ内の独自通貨が「愛」って言うんですが、今まで1,000万「愛」以上の価値交換、循環がなされたというかたちにもなっていまして。チーム戦もしているし、個人戦としてもどんどん価値を分かち合うということが起こっているのが「aiyueyo」になっています。
組織・個人における「らしさ」の価値発揮
あべ:ここから、そんなところの例をとってお話をしていきたいなと思っています。今回、自律分散型組織というふうに名付けさせていただいているので……。名付けているというか、一般的にそういうジャンルがあるんですね。それがそもそも何かという話から始めていこうかなと思います。
まず組織と個人というところから整理してみたいなと思っています。一般的な組織と個人というものを(スライドに)置いてみています。
まず一般的な組織でいくと、社長がいて、役員たちがいて、専務とか常務とかがいて、各部長・課長とかがいて会社はできていますよね。
飲料の会社さんだったら「みんなでこのビール売るぜ」みたいな感じとか、基本的な働き方としては団体戦をしているようなところです。
団体戦をするにあたって、「あなたは今回広報です」とか「あなたは人事です」とか部署が決まって振り分けられていくので、「何をすべきか」という仕事は基本的に会社から降ってくるものだと思います。そういう意味で、自由度を上げるとするならば低いと言えるかなと思います。
今回、「らしく働きたい」とか「らしさを発揮したい」ということがかなりモチベーションにあって、自分は自律分散組織に行き着いているという意味で「らしく働く」という軸も置いているんですが。
基本的に与えられた部署・役割で、人事もなるべくその人のらしさが発揮されるような采配をしてくださっているんだと思うんですが、とはいえ置かれた場所で与えられた役割をやるということが前提にあるので、そういう意味では価値発揮は△かなと思っています。
個人戦で「らしく働く」
あべ:『ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』という本があります。その中で、一般的なピラミッド型の管理組織だと、個人の才能の3割ぐらいしか引き出せないというような数字感とかが出てきています。らしさを発揮するという面ではやはりちょっとマイナスという感じなのかなと思っています。
らしく働くことを考えた時に、「フリーランスで自由にいこうぜ」みたいな感じで、個人(での働き方)を選ばれる方もけっこういると思います。私も1人起業をしていますので、個人戦もやっていました。
働き方としては個人戦ですよね。自分で決める裁量がとても大きいので、自由度としては高い。どれぐらい働くか、誰と働くか、どこで働くか、全部自分で決められます。
ただ、「らしく働く」ということにおいては、実は△をつけています。私もやってみてわかったんですが、1人で開業すると、もちろん強みで価値を交換する、稼ぐということにはなるんですが、税務のこととかがいっぱいあるんですよ。
1人でやると、必要なこととかも全部1人でやらないといけない。営業もSNSも、何もかも自分でやっていくみたいな要素が多くて、強みで稼ぎを作るってことはやりつつも、雑務が多いみたいな状態になりがちで。
らしく働くという意味では△みたいな要素もあるんじゃないかなと思っています。
もちろん、今いろいろなITスタートアップさんだったり、ツールだったりとかも出てきて補えるようにはなってきていてマシにはなっているんですが、△かなと思っています。

その中で今回紹介する自律分散型組織は、この「らしく働く」という視点において◎だなと思っている組織形態になります。
基本的に強みを補い合って働くことができていて、個人戦にあったような強み・自由度は高いままにそれが実現できていくというのが、自律分散型組織のすごくいいところだと思っています。
VUCAの時代に強さを発揮できる自律分散型組織
あべ:(スライドを示して)あらためて、一般的な定義としての自律分散型組織について書いています。DAOという言葉は最近Web3.0の文脈からもよく聞くと思いますが、DAO型組織と言ったりするものと同じです。従業員自ら意思決定することによって、自律的な活動で運営されていくような組織形態です。
上に社長がいてみたいな感じの上下関係というものがない中で、フラットにやっていくようなかたちの組織になっています。
この組織形態が今注目されているという意味でいきますと、物を作っちゃ売れるみたいなところから、不確実性の高いVUCAの時代になっているというのはみなさん体感もされているし、聞いたことあるかなと思うんですけれども。
その組織の中で意思決定権が早かったり、組織の変化速度を速くできたりという意味で強さを発揮できると言われているのが、この形態になっています。